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しおりを挟む「爺ちゃんも俺と同じように言ったんだ。それで咄嗟に颯にも言ってしまったのかもしれない」
「そうでしたか」
「……本当は何で両親がいなくなったか詳しく聞きたかった。だけど爺ちゃんの困った顔を見たら聞けなくて」
葉名の頷く顔は視界がぼやけて見えなかった。
「……っ、寂しかった。怖かった。自分が捨てられたのかもしれないって。だけど爺ちゃんが必死で澪をあやしてる姿見てたら困らせたくなくて」
ふわりと温かなものに包まれる。彼女の体温だと気付いた時にはぐちゃぐちゃに捻じれていた心が解けていくのが分かった。
「……葉名さんまで泣かなくても」
「私にも偶には泣かせてくださいよ」
涙を流しながらもへにゃりと笑う彼女を至近距離で見つめると自分の頬まで緩んだ。
「タイムマシンがあったら、五歳の旺也さんのところまでいって嫌になるまで抱っこしてあげたい。……でも、それはできないから今の旺也さんを代わりに抱っこします」
「抱っことは違うような……」
「細かいことは気にしないでください」
彼女のハンカチで涙を拭われる。本当に五歳児扱いされているようでむず痒くなる。冷静を装って口を開いた。
「洗って返すよ」
「いや、いいですよ」
「でも」
「私、しょっちゅう颯ちゃんの涎と鼻水まみれの服で帰ってるんですよ。旺也さんの涙も大して変わりませんよ」
「それは俺の方が綺麗だと言わせてくれ」
密着したままくすくすと笑う彼女のせいで解けた心の、更に奥底が溶けだしていく。肩に顔を埋めるとふわりと甘い香りに包まれる。
「……颯にも“捨てられた”って思わせてたのか」
「これから説明したら大丈夫ですよ」
「だけど」
「旺也さんはお爺ちゃんがちゃんと説明してくれなかったこと、今でも怒っていますか?」
「いや……寡黙な人だったから説明するのは辛かっただろうなと思う」
「颯ちゃんも少し大きくなったら“おうちゃんは口下手なところもあったからな”と思ってくれますよ」
「そうか……」
「きっと大丈夫ですよ。さぁ、どう説明するか一緒に考えましょう」
にっこりと笑顔を浮かべた葉名は「作戦会議ですよ!」とお茶を淹れ始めた。彼女の体温が無くなるとつい心細さを感じる。彼女に抱っこしてもらっていた甥が降ろされた瞬間、地団駄を踏む気持ちが悔しいことに少しだけ分かってしまう。そんな自分に呆れながら彼女の淹れたお茶に口を付けた。
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