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しおりを挟む葉名が読む絵本を颯は食い入るように見ていた。静かにじっと耳を澄ませていた。
「……おうちゃん」
「うん」
「ママもてんごくにいっちゃったの?」
「……そうだ」
「ママもそうのことみてるの?ムギちゃんのママみたいに?」
「……っ、ああ。見てる、ずっと見てて応援してるよ」
「ママ、まだそうのことすき?」
「ずっとそうのこと大好きだよ」
「おうちゃん」
「うん」
「……おうちゃんは、ずっといっしょ?」
「ああ、ずっとだ。ずっと一緒にいる。約束だ」
前日の作戦会議で葉名は「いなくならない?って本当に聞きたい相手は旺也さんなんだと思います」と話していた。半信半疑の旺也に葉名は苦笑いを浮かべていたが、結局彼女の言う通りだった。
こっそりと退室した彼女の背中を見送って静かに涙を流す甥をずっと抱き締めていた。
「澪に、颯のママに会いたいなぁ」
「おうちゃんも?」
「ああ。会いたいよ」
寂しくて、悲しくて、妹を思い出すと苦しくて堪らない。
「あのね、ママのことおもいだすとね、ここんとこがギュってするの」
自分の胸元を指しながら、颯は続けた。
「だけどね、はなちゃんがギュってしてもいいんだよ、って」
「葉名さんが?」
「うん。ママのことおもいだして、さびしくなってもいいって。かなしくなっても、おこってもいいって」
「……うん、そうだな」
「そのときは、はなちゃんがだっこしてくれるって」
急にくすくす笑い出した颯は旺也を揶揄うように見上げた。
「おうちゃんは、さびしくなってもはなちゃんにだっこしてもらえないね」
優越感をたっぷり含ませそう言うが、旺也はあの夜のことを一瞬で思い出し顔を熱くする。本当は抱っこしてもらったんだ、なんて甥に言うことなどできず、誤魔化すように彼をきつく抱き締めた。
「俺が寂しくなった時は颯に抱っこしてもらう」
「えぇ、おもいよ~」
言葉では不満そうに言うが可笑しそうにケラケラ笑い出した甥を見て、旺也は漸く胸を撫で下ろした。
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