落ちこぼれと森の魔女。

番外編３：ヴァンとルーシーとピーターと。

「ねぇ、ヴァン？」


「ん？」


　ルーシーの膝の上でスリスリとルーシーの手に顔を寄せるヴァンはうっとりとしたまま、顔を上げた。


「今更なんだけど、ヴァンはピーターなんでしょう？ピーターって呼ばなくていいの？」

　ヴァンはふるふると首を振った。


「ねこのときはヴァンなんだ。ヴァンってよんでほしい。」


「そういうものなの？」


「というか、ピーターってよばれたらこんなふうにあまえにくくなる。」


「ふふっ、そうかもね。ピーターは天邪鬼だし、ヴァンみたいに“大好き”なんて言わないからね。」


「そういうこと。」

　ピーターがそんなふうに言ったら落ち着かなくなるから、その方がいいかもしれない。ルーシーは心の中で密かにそう考えた。


「ルーシー、だいすきだ。もっとぎゅってしてほしい。」


「うんっ！」


「ずっとずっとだいすきだぞ。」

　ルーシーはヴァンをぎゅっと抱き締めたまま、今日も眠りについた。


◇◇◇◇


「ん？」


　右手に温かさを感じて、ルーシーは目を覚ますぼんやりと人影が見え徐々に焦点が合う。

「……ピーター？何かあった？」


　ピーターはいつもルーシーより先に目覚めて、ルーシーが起きるまで部屋のソファに座って待っている。それなのに今日はベッドの淵に腰かけてルーシーの手を強く握っている。




「……っ」


「ピーター？」


「大好き、だから……っ。」

　怒ったように眉を寄せたまま、そう宣言した後ピーターはプイッと顔を背け「さっさと飯行くぞ」と先に廊下へ向かった。赤くなった彼の耳を見て、ルーシーは溢れるほどの幸せを感じて満面の笑みを浮かべた。





＜番外編：完＞

　最後に番外編……というか小噺的な形で追加させていただきました。『落ちこぼれと森の魔女』は以上となります。最後までお読みいただきありがとうございました！また投票していただいた皆様、ありがとうございました！心より感謝申し上げます。