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しおりを挟むある日のこと。
いつものようにロビンの家へ訪問すると、使用人から「今、ロビン様は、旦那様とグラナード侯爵様とお話中です。少しお待ち頂けますか?」と、ロビンの部屋ではなく応接室へ通された。
(お父様、ロビンとロビンのお父様にどんな御用だったのかしら。)
キャロラインは、ロビンの家に入り浸っているが、父が訪問しているのは珍しい。
待ちくたびれ、お手洗いに向かうと途中の執務室から、声が聞こえてきた。
「これは良い縁談だと思うよ。」
(ロビンのお父様の声だわ。だけど、縁談って•••。)
「娘は、きつい所もあるけれど、しっかり者で優しい子だと思うよ。身内贔屓だけどね。」
(お父様!きつい所もある、ってことは•••。)
妹のマリアは、やはり病弱ではあるが、穏やかでおっとりしたタイプだ。グラナード侯爵家には、キャロラインとマリアしか子どもはいない。
「キャロライン嬢は、ロビンとも親しいし、問題ないだろう。美しい子だしね。ロビン、どうかな。」
(やっぱり私のことだわ!)
キャロラインは浮き足立った。ロビンとずっと一緒にいられたら、どんなに幸せだろう。キャロラインは色恋には疎かったので、ロビンへの想いが恋心かは分からなかった。だが、婚約するならキャロラインの居場所である、ロビンが良いと願っていた。
「時期としても良いと思うよ。」
ロビンの父が、後押しするように言った。ロビンは十六歳、キャロラインは十八歳、婚約を結ぶ適齢期だ。
(ロビン、お願い。)
どうか、婚約を受けてほしい、と神に祈る。しかし、キャロラインの願いは、すぐ打ち砕かれてしまった。
「キャロラインは美しくはないだろう。」
「この婚約の話は無かったことに。」
聞き慣れた声で冷たく、撥ね付けるように語られた言葉に、全身が引き裂かれたような強い痛みを感じた。身体の奥底から冷え、手足の感覚が無い。その後の声は聞こえなくなってしまった。
キャロラインは、心の片隅に残っていた気力を引っ張り出し、クリスフォード家の使用人へ「体調が悪くなったので帰る」と伝えた。そこからどう帰ってきたかはよく覚えていない。気が付いたら、自分のベッドの中で泣いていた。先程まで分からなかった恋心をしっかりと自覚した時には、もう失恋してしまっていたのだから。
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