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しおりを挟む「そんなことがあったのね。」
キャロラインが一週間も臥せっていることを聞き付け、親友のパトリシアがお見舞いに来た。ヴェントリー侯爵家の令嬢であり、キャロラインとは同じ爵位ということもあり、気の置けない仲である。
パトリシアに全てを打ち明けると、キャロラインは少しだけ落ち込んだ気持ちが晴れたような気がした。
「だけど、ロビンと話してみなくて良いの?」
「もういいの。私が近付くだけでロビンに迷惑が掛かるから。」
パトリシアは、何か言いたそうにしていたが、頑ななキャロラインを見て、言葉を飲み込んだようだった。
「それならキャロライン。少し気分転換しない?」
パトリシアは美しい微笑みを浮かべた。パトリシアの提案は、決して嬉しいものでは無かったが、パトリシアの巧みな話術により、キャロラインは頷くしか無かった。
◇◇◇
「本当に行かなくてはいけないかしら?」
朝から何度も繰り返された質問に、メイド達は大きく頷いた。
「お嬢様。この招待状は王家から来たものです。欠席はできませんよ。」
「そうよね。」
キャロラインだって分かってはいるのだ。だが、どうしても後ろ向きな気持ちになってしまう。
今日のお茶会は、パトリシアと、彼女の婚約者であるアーノルド王太子、王太子の弟のエリック第二王子、そしてキャロラインの四名が出席する。
パトリシアからこれを提案された時、初めは断ったのだ。というのも、キャロラインはアーノルド王太子に好かれていない自信があるからだ。
通常、王族の婚約者は、侯爵家以上の者から選ばれる。そして、アーノルド王太子の婚約者が選ばれる際、年齢の合う侯爵家以上の令嬢は、パトリシアとキャロラインだけだった。この場合、パトリシアとキャロライン、二人とも王太子とお茶会を重ねた後で婚約者が選定される。だが、キャロラインは王太子と一度も会ったことはなく、いつの間にかパトリシアと王太子の婚約は決まっていた。
(よっぽどタイプじゃなかったんだわ。アーノルド王太子殿下だって、こんな悪役令嬢ごめんよね。)
キャロラインは、自分はとても王太子妃になる器では無いと思っていたが、それでも一度も会わずに決められたというのは自分に余程欠けた物があるのだろうと心に引っ掛かりを残した。
その為、王家には極力近づきたく無いのだが、パトリシアは「エリック殿下が会いたがっている。」と譲らなかった。そして「私達はもう学園も卒業したのだから、社交に勤しまないと」と真面目なキャロラインが断りづらい言葉を重ねた。キャロラインは気が進まなかったが、パトリシアがここまでお願いするのも珍しく、断り切れなかった。
(パトリシアに迷惑を掛けないように、筒がなく終わりますように。)
キャロラインは、今日何度目か分からない溜め息をついた。
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