【完結】王太子妃候補の悪役令嬢は、どうしても野獣辺境伯を手に入れたい

たまこ

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番外編:奥さまの日常。8

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 ジャクソン伯爵家は、アレクサンドラがエリザベスに話したように、国への借金が年々増えている家である。通常、このように領地経営が赤字になっている場合は、国から会計士や税理士が複数派遣され、他の家より多い頻度での監査が行われ、必要な場合は経営への助言も行う。




「よっぽどのことがない限り、赤字がここまで続くことは無いのです。」


 アレクサンドラは、取り寄せた監査資料をアルバートへ提示した。見ると十年以上赤字は続き、状況は悪くなっている。



「災害や、流行り病など、要因があれば納得できますが、そのような事実はありませんでしたわ。」



「では、なぜ……。」


 問いかけるアルバートに、アレクサンドラは「簡単なことですわ」とにっこり笑った。




「私腹を肥やしている、それだけですわ。」



「な……っ!」


 アレクサンドラは、アルバートへジャクソン伯爵家の不正に関する資料を取り出した。そこには、納められた税金を低く申告し、差額で贅沢をしているーーーだけではなかった。




「これは……。」


 ジャクソン伯爵は巧妙に隠しているが、無類の女好きで娼館通いをしている。そして娼館では他の貴族の名前を騙り、時には娼婦へ乱暴を働く不届き者であるーーー最後の資料には、そう記されていた。




「アルが探していたものですわ。」




◇◇◇◇




 アルバートが調査していた、ある娼館でのトラブルは、貴族の男が娼婦へ酷い暴力を振るったという内容だった。ただ、その貴族を突き止めるが、名前は別の貴族の名を使っていたことが分かり、調査は難航していた。




「サンドラ……なぜこんな資料を集められたんだ?」



「私の影にお願いしましたわ。」



「影……そうか。」



 辺境では、隣国の情報を集める諜報部は存在するので、アルバート個人に影は必要ない。だが王宮に長年仕えていたアレクサンドラには、必要な存在だっただろう。



「では、なぜ昨夜は会ってくれなかったんだ?」



「それは……。」


 言い淀むアレクサンドラの顔はみるみる赤くなった。




「調査に思った以上に時間がかかってしまって。本当はアルが帰ってくるまでに全て終わっている予定でした。だから、昨夜は、その、酷い顔をしていて、会えなかったのですわ。」


 調査に明け暮れたアレクサンドラは、身だしなみが疎かになっており愛するアルバートの前に立てなかったという。……結局、今朝までかかって酷い顔を見られてしまったのですけどね、とアレクサンドラは、恥ずかしそうに視線を逸らした。理由を知ったアルバートは大きな溜息をついた。




「サンドラ、次からはどんな顔をしていても、どんな格好をしていても、顔を見せてくれ。でないと……不安になる。」



「アル……ごめんなさい。」


 しょんぼりしたアレクサンドラの頬を撫でると、アルバートはまたアレクサンドラを胸の中に閉じ込めた。この破天荒な奥さまは、目が離せない、そう思いながら。






<奥さまの日常:完>





 もう少し、番外編が続きます。読んでいただけると嬉しいです!
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