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番外編:ジェニーの密会。12
しおりを挟むジャンの熱いスキンシップを受け、失神寸前のジェニーを救ったのは、心配になり様子を見に来たアレクサンドラだった。暴走していたジャンに、アレクサンドラは鉄拳制裁を加えようとする。しかし。
「……っ、お、奥さま、私も、嫌では無かったのです。」
恥ずかしさから顔を赤らめ、目に涙を浮かべるジェニーの言葉に、ジャンだけでなくアレクサンドラまで心を射抜かれ、ジャンはお咎め無しとなった。
それからのジャンの行動は早かった。流石、辺境伯の執事と言うべきか、有能さをここぞとばかりに発揮していた。あっという間に、ジェニーの生家へ婚約の申し込みをし、自身の家の了承も得ると、さっさと婚約手続きをしてしまった。ジェニーが「ちょっと待って。」と口を挟めないほど、凄まじいスピードだった。
ジェニーは困り果て、どうにか苦言を呈するが、其の度に「ジェニーが誰かに取られたら耐えられない。」と甘く耳元で囁かれると何も言えなくなってしまう。
だが、ある日、ジャンの距離の詰め方の速さに、ジェニーが「もっと、ゆっくり、仲良くなりたかったのに。」と泣き出してしまった。その姿を見たジャンは猛省し、謝罪して、漸く暴走は止まった。
◇◇◇◇
「ジャンの気持ちも分かる気がするんだ。」
午後のお茶の時間、アルバートがぽつりと呟いた。今日はジャンとジェニーが半休を取っている。カフェにデートに行くのだと、ジェニーが頬を染め、話していた。穏やかなデートを重ね、ジェニーの心も少しずつジャンの色に染まっていた。
「そうなのですか?私は、少々やり過ぎかと思いますが。」
「愛する人が、他の男に取られそうになったんだ。強引にもなる。」
「ですが……。」
アルバートは、隣に座るアレクサンドラを引き寄せると胸の中に閉じ込めた。
「……私も、サンドラが他の男に取られそうになったらと、想像するだけで気が狂いそうになる。」
「アル……。」
アレクサンドラがクスクスと笑い、「私はどこにも行きませんわ。」とアルバートを見上げる。アルバートの満足そうな笑顔を確かめるために。
〈ジェニーの密会 完〉
◇◇◇◇
新作『婚約解消ですか?!分かりました!!』
ショートショートなので完結しております。ぜひお楽しみください!
応援ありがとうございます!
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