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チヒロハ、コンランシタ①
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「......な......に......?」
戸惑いながらも、震える声で途切れ途切れに聞いた。
だけど彼はまたクスリと笑い、その手を離す事無く答えた。
「んー......何となく?
俺さぁ......なんか千尋さんに、俄然興味が湧いてきたみたい」
そのままグッと手首を引かれ、ふらついた拍子に彼の腕の中へ。
その状況にびっくりし過ぎたせいで、何の反応も返す事が出来ぬまま、彼に抱き締められてしまった。
久し振りに感じる、男性らしい肌の感触とぬくもり。
我に返るとそれに激しく動揺し、慌てて彼から身を離した。
「......何もしないんじゃ、無かったんですか?」
自分の体を庇うみたいに両手で抱き締め、じとりと睨み付けた。
すると男はニヤリと笑い、しれっと言いやがったのだ。
「そのつもり......だったんだけどね。
千尋さんがあまりにも無防備に、俺に接するから」
男性だとは思えないくらい、艶かしい色香。
それに危うく見惚れそうになったけれど、そこでふとある事に気付いた。
「なんで、私の名前......?」
そうだ。変な意味ではなく一夜限りの関係だと思ったから、私は彼に対して名前を名乗ったりしていない。
それに私だって、この人の名前すら知らないのだ。
「契約書に、書いてあったんだよね。
この部屋の所有者の、名義。
あなた、藤堂《とうどう》 千尋《ちひろ》さんでしょ?」
にっこりと邪気のない笑みを浮かべ、彼が言った。
なるほど、そういう事ね。
その理由は、分かった。分かったけれど。
......いくら私が金無し、宿無し、色気無しの三無い女だとしても、今夜ここにこのまま泊まるのはまずくないか?
戸惑いながらも、震える声で途切れ途切れに聞いた。
だけど彼はまたクスリと笑い、その手を離す事無く答えた。
「んー......何となく?
俺さぁ......なんか千尋さんに、俄然興味が湧いてきたみたい」
そのままグッと手首を引かれ、ふらついた拍子に彼の腕の中へ。
その状況にびっくりし過ぎたせいで、何の反応も返す事が出来ぬまま、彼に抱き締められてしまった。
久し振りに感じる、男性らしい肌の感触とぬくもり。
我に返るとそれに激しく動揺し、慌てて彼から身を離した。
「......何もしないんじゃ、無かったんですか?」
自分の体を庇うみたいに両手で抱き締め、じとりと睨み付けた。
すると男はニヤリと笑い、しれっと言いやがったのだ。
「そのつもり......だったんだけどね。
千尋さんがあまりにも無防備に、俺に接するから」
男性だとは思えないくらい、艶かしい色香。
それに危うく見惚れそうになったけれど、そこでふとある事に気付いた。
「なんで、私の名前......?」
そうだ。変な意味ではなく一夜限りの関係だと思ったから、私は彼に対して名前を名乗ったりしていない。
それに私だって、この人の名前すら知らないのだ。
「契約書に、書いてあったんだよね。
この部屋の所有者の、名義。
あなた、藤堂《とうどう》 千尋《ちひろ》さんでしょ?」
にっこりと邪気のない笑みを浮かべ、彼が言った。
なるほど、そういう事ね。
その理由は、分かった。分かったけれど。
......いくら私が金無し、宿無し、色気無しの三無い女だとしても、今夜ここにこのまま泊まるのはまずくないか?
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