45 / 149
愛だの、恋だの③
しおりを挟む
愛だの恋だのといった感情は、今は正直なところ面倒臭いとしか思えない。
だって僕は史織に対する気持ちに、まだ決着をつける事すら出来ていないのだから。
というか、そもそもの話。
……僕は本当に彼女に、恋をしていたのだろうか?
史織といると、落ち着くし楽しい。
だけど早乙女くんとふたりでいる時ほどドキドキしたり、胸が苦しくなったりはしていなかったのではないだろうか?
そこまで考えた、タイミングで。
始業を告げる音楽が流れ始めたから、僕は考える事を放棄した。
***
昼休みに社員食堂でスマホを確認すると、早乙女くんからのメッセージが。
『仕事、間に合った?
腰は、痛くない?』
間に合ったよ、本当にギリギリだったけど。
……そして痛いよ、めちゃくちゃ。
その原因は、誰だよと問いたい。
しかし責めたところであの男が、素直に反省するとも思えない。
だから文章ではなく、大丈夫と答えるウサギのスタンプだけ送っておいた。
何となくだけれど分かり始めた、彼のワガママで傲慢な本性。
なのに高校時代憧れていた彼より、今の早乙女くんの方がずっと身近に感じられる気がした。
そんな事を考えていたら、いつの間にか口元が少し緩んでしまっていたらしい。
「おーい、佐瀬。俺の話、聞いてるか?
絶対、聞いてないだろ!
なんかお前、スッゲェにやけてたし。
それに今日は仕事中もずっと、上の空みたいな感じだったしな」
同期入社の桂木くんが、呆れ口調で言った。
基本的に表情がなく、何を考えているのかよくわからないと評される事も多い僕。
なのにこんな風に周りから見ても分かるほど、顔に出てしまっていたのか。
慌てて真顔を作り、それから微笑んで言った。
「あー……ごめん。ちょっと、考え事してた。
で、何の話だっけ?」
だって僕は史織に対する気持ちに、まだ決着をつける事すら出来ていないのだから。
というか、そもそもの話。
……僕は本当に彼女に、恋をしていたのだろうか?
史織といると、落ち着くし楽しい。
だけど早乙女くんとふたりでいる時ほどドキドキしたり、胸が苦しくなったりはしていなかったのではないだろうか?
そこまで考えた、タイミングで。
始業を告げる音楽が流れ始めたから、僕は考える事を放棄した。
***
昼休みに社員食堂でスマホを確認すると、早乙女くんからのメッセージが。
『仕事、間に合った?
腰は、痛くない?』
間に合ったよ、本当にギリギリだったけど。
……そして痛いよ、めちゃくちゃ。
その原因は、誰だよと問いたい。
しかし責めたところであの男が、素直に反省するとも思えない。
だから文章ではなく、大丈夫と答えるウサギのスタンプだけ送っておいた。
何となくだけれど分かり始めた、彼のワガママで傲慢な本性。
なのに高校時代憧れていた彼より、今の早乙女くんの方がずっと身近に感じられる気がした。
そんな事を考えていたら、いつの間にか口元が少し緩んでしまっていたらしい。
「おーい、佐瀬。俺の話、聞いてるか?
絶対、聞いてないだろ!
なんかお前、スッゲェにやけてたし。
それに今日は仕事中もずっと、上の空みたいな感じだったしな」
同期入社の桂木くんが、呆れ口調で言った。
基本的に表情がなく、何を考えているのかよくわからないと評される事も多い僕。
なのにこんな風に周りから見ても分かるほど、顔に出てしまっていたのか。
慌てて真顔を作り、それから微笑んで言った。
「あー……ごめん。ちょっと、考え事してた。
で、何の話だっけ?」
13
あなたにおすすめの小説
「じゃあ、別れるか」
万年青二三歳
BL
三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。
期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。
ケンカップル好きへ捧げます。
ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
気づいたらスパダリの部屋で繭になってた話
米山のら
BL
鎌倉で静かにリモート生活を送る俺は、極度のあがり症。
子どものころ高い声をからかわれたトラウマが原因で、人と話すのが苦手だ。
そんな俺が、月に一度の出社日に出会ったのは、仕事も見た目も完璧なのに、なぜか異常に距離が近い謎のスパダリ。
気づけば荷物ごとドナドナされて、たどり着いたのは最上階の部屋。
「おいで」
……その優しさ、むしろ怖いんですけど!?
これは、殻に閉じこもっていた俺が、“繭”という名の執着にじわじわと絡め取られていく話。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる