【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*

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愛だの、恋だの③

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 愛だの恋だのといった感情は、今は正直なところ面倒臭いとしか思えない。
 だって僕は史織に対する気持ちに、まだ決着をつける事すら出来ていないのだから。
 
 というか、そもそもの話。
 ……僕は本当に彼女に、恋をしていたのだろうか?

 史織といると、落ち着くし楽しい。
 だけど早乙女くんとふたりでいる時ほどドキドキしたり、胸が苦しくなったりはしていなかったのではないだろうか?

 そこまで考えた、タイミングで。
 始業を告げる音楽が流れ始めたから、僕は考える事を放棄した。

***

 昼休みに社員食堂でスマホを確認すると、早乙女くんからのメッセージが。

『仕事、間に合った?
 腰は、痛くない?』

 間に合ったよ、本当にギリギリだったけど。
 ……そして痛いよ、めちゃくちゃ。

 その原因は、誰だよと問いたい。
 しかし責めたところであの男が、素直に反省するとも思えない。
 だから文章ではなく、大丈夫と答えるウサギのスタンプだけ送っておいた。
 
 何となくだけれど分かり始めた、彼のワガママで傲慢な本性。
 なのに高校時代憧れていた彼より、今の早乙女くんの方がずっと身近に感じられる気がした。

 そんな事を考えていたら、いつの間にか口元が少し緩んでしまっていたらしい。

「おーい、佐瀬。俺の話、聞いてるか?
 絶対、聞いてないだろ!
 なんかお前、スッゲェにやけてたし。
 それに今日は仕事中もずっと、上の空みたいな感じだったしな」

 同期入社の桂木かつらぎくんが、呆れ口調で言った。

 基本的に表情がなく、何を考えているのかよくわからないと評される事も多い僕。
 なのにこんな風に周りから見ても分かるほど、顔に出てしまっていたのか。
 慌てて真顔を作り、それから微笑んで言った。

「あー……ごめん。ちょっと、考え事してた。
 で、何の話だっけ?」
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