ダブル・スタンダード〜亀を助けたら、若返りの魔法を手に入れました〜

ryon*

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真相

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「最初の頃は全然飲み込めなかったのに、すっかり俺の形に馴染んだみたいだな?」

 そんな風に僕を恥ずかしめるような言葉を口にしながらも、その瞳は優しい。
 それがもう十分過ぎるくらい僕にはよく分かっていたから、クスリと笑って彼の唇に触れた。

「そうだね。すっかり君の形に変えられたんだ。だからちゃんと、責任取ってよね?」

「うん、喜んで。俺のじゃないと、もう満足出来ない体にしてやるから覚悟して」
 
 体を前にかがめるようにしてキスをすると、彼はそれに応えてくれた。

 ぬるりと口内に挿し込まれた、彼の舌先。それに僕も舌を絡めて、夢中で応じた。

 そのまま緩やかに腰を使い、本能のまま快楽を貪る。
 そんな僕の痴態を、彼は下から満足そうに見つめていた。

「聖、大好き。これからもきっと、ずっと好き」
 
 改めて言葉にすると、やっぱりちょっと恥ずかしい。でも彼は茶化したりすることなく、真剣な表情で言った。

「俺も太郎のことが、大好きだよ。まだ知り合ってからそんなに時間も経ってないのに、絶対に手放したくないくらい」

 次第に快楽の波が大きくなり、僕は自力で動くことが出来なくなってしまった。
 そのため柳瀬君は僕の腰を掴むようにして、下から激しく打ち付けた。

 この体位だと自然と一番深いところをえぐられるようになるため、声を止めることが出来ない。
 でも、やめて欲しくない。……もっとめちゃくちゃに、突いて欲しい。

「聖、もっとぉ……」

 これまで口にしたことのない、おねだりの言葉。それを聞いた彼の喉が、ゴクリと上下に動いた。

「あんま、煽んなよ。まじで壊したくなるだろうが」

 パンパンと激しい音を立てながら何度も貫かれ、イかされる。
 それがこんなにも心と体を満たしてくれるものだなんて、僕はこれまで知らなかった。

「いいよ、聖になら。僕を、壊して」

「ったく、本当に君ってやつは。後で怒っても、知らねぇからな」

 そのまま体位を変えて正常位になり、彼は何度も何度も腰を打ち付けた。
 だから僕は彼の背中に腕を回して、与えられる快感を懸命に追いかけた。

***

 結局その夜は何度も交わり、僕はまたしてもそのまま深い眠りについてしまったらしい。

 時計を確認すると、時刻は朝の6時過ぎ。
 ……そろそろ、魔法が解ける時間だった。

 これまでであればこのままベッドを抜け出して、こっそり薬を飲んでいた。
 でも僕は、もう決めたのだ。……柳瀬君に、すべて伝えるって。

 彼が好きになってくれた『上司の田中』も『セフレの太郎』も、どちらも同じ僕だったんだよって。

 もしかしたら彼は、騙されたと言って怒るかもしれない。それこそもう二度と顔も見たくないと、責められるかもしれない。

 それでもちゃんとすべてを話してくれた彼には、真実を伝えたかった。

「……ねぇ、聖。起きて」

「ん……。何、太郎? もう朝?」

 僕の体を強く抱き締めながら、彼は眠たそうに目をこすった。

「うん。実は僕からも、大事な話があるんだ。だから、目を覚まして」

 彼の首筋にキスをすると、彼はくすぐったそうにクスクスと笑った。

 愛しそうに僕に触れる、彼の手のひら。それにスリスリと、頬を寄せた。

「大事な話って、何?」

 体を起こし、柳瀬君が聞いた。だから僕は覚悟を決めて、真っすぐに彼の瞳を見据えた。

「昨日僕は君に、見て欲しいものがあるって言ってたよね?」

「……うん、そうだな」

 怪訝そうな顔で、彼が僕のことをじっと見つめている。

「聖は他に好きな人がいるって、言ってたけど。……ごめん、それもたぶん僕のことだと思う」

「は……?」

 本気で意味が分からないとでもいうように、彼は瞳を大きく見開いた。

「そろそろ、薬が切れる頃だから。でも、これだけは信じて欲しいんだ。僕はいつも、君のことだけを想ってきた。……柳瀬君、君のことだけを」

「え……。ちょっと待って、太郎。お前に俺、フルネーム教えてたっけ?」

「教えてもらっては、ないよ。でも最初から僕は、知ってた・・・・んだ」

「知ってたって、どういうことだよ? って、えっ!? えっ、なんで……!? なんで俺んちに、田中さんがいんの!?」

 いつも冷静な彼の、激しく動揺した声。信じられないものを見るような視線。
 だから僕は、薬が切れて魔法が解けたのを悟った。

「こういうこと。……僕が、太郎だったんだよ」

 呆然とする柳瀬君に、僕はあの亀との出会いと薬の効用などを語って聞かせた。
 目の前で魔法が解ける瞬間を目にしていなければ、きっと彼は信じてくれなかったに違いない。

 それでもまだ実感はないようだったから、僕はリュックから瓶を取り出し、ひと粒口に含んだ。

 そして僕が若返り、太郎になるのを見て、彼はようやくそのいかれた事実を受け入れてくれたらしい。

「まじか……。太郎が、田中さんって」

「うん、そうだよ。……ごめんね、柳瀬君。ずっと君のことを、騙してて」

 泣くのを必死にこらえながら、謝罪の言葉を絞り出した。

「あまりよく、分からないんですが。……薬の影響で、何か体に害が出ることはないんですか?」

 こんな時でもまず僕のことを案じてくれる彼の優しさに、胸が痛んだ。

「それに関しては、全然平気。あの亀が言うには、副作用もまったくないらしいよ」

 それを聞いた彼は、心からホッとしたように笑った。

「そうですか、なら良かったです」

 これまで太郎に接していた時とは異なる、丁寧な言葉遣い。これが本来の僕らの関係だというのに、それをさみしいと思ってしまうのはきっと僕のわがままだろう。

「ねぇ、柳瀬君。昨日も言ったとおり、僕は君のことが好きなんだ。……だけど今後の僕らの関係については、君に決めて欲しい」

 その言葉を聞いた彼はガシガシと頭を掻き、それからにっこりとほほ笑んで答えた。

「嫌です」
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