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2. 秘密
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夜の学校は今日も平和だ。
教室に入ってくるなりお弁当を広げる二口女や、暑いと言いつつ自分に向けて扇風機を回す雪女はいるけれど、他人に迷惑をかけているわけではないからいつものことだとスルーされている。
技能ごとにクラスが分かれているけれど、私がいるのは一般クラスで比較的おとなしいものたちが多い。他のところは問題児が多く、毎日喧嘩が絶えなかったりと苦労しているらしい。
今日も隣のクラスで破壊音が聞こえる。派手にやってるなーと思いつつ、そろそろやってくる可愛い友達のことを思う。自分の教室が騒がしくなってくると、こちらの教室に逃げてくるのだ。
案の定、背後から私の首筋に縋りつき、泣き真似をする友達にため息をつく。
「重い」
「乙女に向かってそれはひどいでしょ!」
口調は乙女だが、姿形は乙女とは程遠い。顔は整っていて美しいが、筋肉質な体はしなやかでたくましい。そのまま男性として魅力的だと思うけれど、むさ苦しいのはダメだと身だしなみに気をつかい、人間たちには幻術で美少女と認識させている。でも、私も幻術を使うので元の姿が見えてしまうんだよねー。
そのため、とてもちぐはぐなことになるのだけれど、私はこの黒髪美人の狐のことが気に入っている。狐はずる賢いなんてよく言われるけれど、この子は面倒見が良くて、人間にも妖怪としては格下の私にも親切だ。
「ごめんごめん。綾のところは今日も賑やかだね」
妖狐の綾は、強いくせに争い事が得意ではないらしい。私のところに逃げてきては、静かになるまでここで過ごしている。クラスの皆もいつものことなので、綾が騒がしく飛び込んできても特に気にしていない。
「賑やかすぎて困る。静かなのが好きなのに」
「そうだね。よしよし」
背後から肩に顔を埋めたままの綾の頭を撫でてやる。そうすると落ち着くらしい。初めの頃はそのままにしていたのだけれど、優しく撫でろと催促されて今に至る。まあ、私も頭を撫でられるの好きだしな。刺々しい気持ちの時は、撫でられると落ち着く気持ちは分かる。
「やほー、おやおや今日も仲良しだね」
同じクラスの花澄がやってきて隣の席に座る。
花澄には美少女が私に抱きついているように見えているのだろう。本当は良いがたいの美人が抱きついているんだけどね。
綾は人間に親切だけれど、花澄にはほんの少し意地悪だ。花澄がやってくると、拗ねたように余計に私に甘える。私が綾に付きっきりじゃなくなるのが嫌なんだと、前にそんなことを言っていた。
ぐりぐりと頭を肩口に擦り付ける綾に私は苦笑する。
「髪の毛ぐちゃぐちゃになるよ」
「良いもん」
面倒臭いけれど、そんな綾を可愛いと思ってしまうのだから仕方がない。私を自分の特別だって全身で示されるのってゾクゾクする。
本当は綾がわざと私に本当の姿が見えるようにしていることに気がついているんだ。いくら同じ幻術が使えるからって、私の力量で妖狐の幻術を見破れるはずがない。わざとその姿を見せているのには理由があるのだ。周りと私を明確に分けているのは綾の意思。私は綾の中で特別なんだろう。
けれど、それに気が付いているのも、私が綾のことをとても気に入っていることもまだ秘密。
綾が我慢できなくなるまで、私は今のままでいるつもり。
妖怪は貪欲で自分に忠実な生き物だ。それは私も変わらない。
仲の良い友達で満足している綾が、いつ変わるのかを私は楽しみにしている。
どんな風に変わるのか、私をどうしたいと思うのか。
この秘密を抱えながら、私は綾をどろどろに甘やかして自分への執着を煽るのだ。
教室に入ってくるなりお弁当を広げる二口女や、暑いと言いつつ自分に向けて扇風機を回す雪女はいるけれど、他人に迷惑をかけているわけではないからいつものことだとスルーされている。
技能ごとにクラスが分かれているけれど、私がいるのは一般クラスで比較的おとなしいものたちが多い。他のところは問題児が多く、毎日喧嘩が絶えなかったりと苦労しているらしい。
今日も隣のクラスで破壊音が聞こえる。派手にやってるなーと思いつつ、そろそろやってくる可愛い友達のことを思う。自分の教室が騒がしくなってくると、こちらの教室に逃げてくるのだ。
案の定、背後から私の首筋に縋りつき、泣き真似をする友達にため息をつく。
「重い」
「乙女に向かってそれはひどいでしょ!」
口調は乙女だが、姿形は乙女とは程遠い。顔は整っていて美しいが、筋肉質な体はしなやかでたくましい。そのまま男性として魅力的だと思うけれど、むさ苦しいのはダメだと身だしなみに気をつかい、人間たちには幻術で美少女と認識させている。でも、私も幻術を使うので元の姿が見えてしまうんだよねー。
そのため、とてもちぐはぐなことになるのだけれど、私はこの黒髪美人の狐のことが気に入っている。狐はずる賢いなんてよく言われるけれど、この子は面倒見が良くて、人間にも妖怪としては格下の私にも親切だ。
「ごめんごめん。綾のところは今日も賑やかだね」
妖狐の綾は、強いくせに争い事が得意ではないらしい。私のところに逃げてきては、静かになるまでここで過ごしている。クラスの皆もいつものことなので、綾が騒がしく飛び込んできても特に気にしていない。
「賑やかすぎて困る。静かなのが好きなのに」
「そうだね。よしよし」
背後から肩に顔を埋めたままの綾の頭を撫でてやる。そうすると落ち着くらしい。初めの頃はそのままにしていたのだけれど、優しく撫でろと催促されて今に至る。まあ、私も頭を撫でられるの好きだしな。刺々しい気持ちの時は、撫でられると落ち着く気持ちは分かる。
「やほー、おやおや今日も仲良しだね」
同じクラスの花澄がやってきて隣の席に座る。
花澄には美少女が私に抱きついているように見えているのだろう。本当は良いがたいの美人が抱きついているんだけどね。
綾は人間に親切だけれど、花澄にはほんの少し意地悪だ。花澄がやってくると、拗ねたように余計に私に甘える。私が綾に付きっきりじゃなくなるのが嫌なんだと、前にそんなことを言っていた。
ぐりぐりと頭を肩口に擦り付ける綾に私は苦笑する。
「髪の毛ぐちゃぐちゃになるよ」
「良いもん」
面倒臭いけれど、そんな綾を可愛いと思ってしまうのだから仕方がない。私を自分の特別だって全身で示されるのってゾクゾクする。
本当は綾がわざと私に本当の姿が見えるようにしていることに気がついているんだ。いくら同じ幻術が使えるからって、私の力量で妖狐の幻術を見破れるはずがない。わざとその姿を見せているのには理由があるのだ。周りと私を明確に分けているのは綾の意思。私は綾の中で特別なんだろう。
けれど、それに気が付いているのも、私が綾のことをとても気に入っていることもまだ秘密。
綾が我慢できなくなるまで、私は今のままでいるつもり。
妖怪は貪欲で自分に忠実な生き物だ。それは私も変わらない。
仲の良い友達で満足している綾が、いつ変わるのかを私は楽しみにしている。
どんな風に変わるのか、私をどうしたいと思うのか。
この秘密を抱えながら、私は綾をどろどろに甘やかして自分への執着を煽るのだ。
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