4 / 7
4.神様、運命の出会いとは何ですか?
しおりを挟む
うっかりウトウト眠ってしまっていたことに気付き、ガバッと起き上がるも、ここは自分の部屋で服も着ていることにエスミはホッとする。
そうだ、仕事に行く時間だ。と取れかけた化粧を落とし、いつも通りの地味な色のドレスに着替えると職場である貸本屋へと急いだ。
店に着くと裏口から入り、客用の出入口の鍵を開ける。閉店になっていた看板をひっくり返して開店にするとガラス窓から見えるように配置する。
店内はところ狭しと並ぶ書棚が天井にまで届き見渡す限りの書物、書物、書物だらけだ。
今日はどこに叩きをかけようか?高いところには脚立も必要だと店の奥にしつらえているカウンターから叩きと脚立を取り出すと気になるところに叩きをかける。
カランコロンと入り口のドアに設えたベルが鳴った。お客様の来店だ。
「いらっしゃいませ!」
エスミのいつも通りの平和で退屈な日々が戻ってきた。
………
「お嬢さま、馬車が到着いたしました。」
ゴールデンドラゴンで一夜の火遊びをしてから数週間後、クァディル公爵家の紋章付きの立派な馬車が弱小貴族ディシュパンダ男爵家の家の前に到着した。
これからしばらく郊外のクァディル公爵領に滞在予定だ。生まれて間もない赤ん坊に会うことも楽しみだが、招待主であるニコラや二人の共通の友人であるブリアンナに会えるのも楽しみである。
ちなみにブリアンナもすでに結婚していて伯爵夫人である。ブリアンナの運命の相手はニコラの結婚式で運命的に出会うという体験をしている。行き遅れはエスミのみ。なぜ自分には運命の出会いがやってこないのかと何度も頭を捻ってみた。捻ってもなにも答えは出てこなかったので考えるのを諦めた。
外に出るとまさにディシュパンダ家には不釣り合いな見事な馬車がエスミを待っていた。侍女のマリーがクァディル公爵家の
御者と一緒に荷物運びをしている。ちなみにマリーはサリーの娘である。息子もいるが新聞記者になる!といって家を飛び出して数年、今では立派な記者さまに成長している。
エスミが馬車に乗り込みしばらくすると馬車が動き出した。いつもならマリーも一緒に乗り込んでしなくてもよい世話をしてくれていたのでおや?っと外を伺うと、マリーはちゃっかり御者席に乗り込んでクァディル家の御者と楽しそうにおしゃべりをしていた。いや、エスミから見るとイチャイチャしていた。
侍女ですら運命の出会いを果たしているのに、だからなぜ自分には出会いがないのか。エスミは頭をかきむしりたくなったがクァディル家に着く前に自分の髪の毛をハゲ散らかしては大変と、寝て落ち着こうと決めた。
「お嬢さま、到着いたしましたよ。」
おっと。本当に寝ている間に着いてしまったようで、馬車の窓からクァディル公爵夫人である友人のニコラがニコニコと笑顔で立っているのが見えた。
まだぼんやりとしている頭をふるふると振るとだいぶ目が覚めたので馬車から降り立つ。ニコラの隣にはすでに到着していたらしいブリアンナも立っていてエスミに手を振っていた。
子どもの頃からの仲良し三人娘。今夜は夜通しおしゃべりの花が咲く予感がした。
………
案内された部屋は離れにありながらとても広く洗練された部屋だった。ニコラに聞くところによると、もともとはニコラの夫である現公爵の弟が使っていたとか。成人したのち都会で自らの事業を起こすために引っ越したため今では客用の部屋として使っているそうだ。
「弟って、ゴールデンドラゴンを経営している人?」
「ええ。グレッグは二人兄弟だから。あの弟よ。」
来て早々だけど、すぐランチになるから準備よろしくね。とニコラに急かされ、荷物はマリーに任せ食堂の間へ急いだ。
ランチの時間は滞りなく過ぎ、元三人娘はテラスに移動してティータイムと言う名のおしゃべりタイムが始まった。
夫持ちの二人は相も変わらず閨での甘い経験をエスミに語って聞かせる。ニコラは三人目を産んだ後の姫始めまで時間がかからなかったとか、ブリアンナはニコラに触発されて三人目を作るべく、生命の種が着床しやすい(らしい)アクロバティックなポーズで云々かんぬん以下省略。まったく東洋の舞術団の見すぎじゃないだろうかと思われることを夫としているらしい。
「そう言えば、弟さんは今回は来ないの?」
「アレックス?うーん。アレックスにも一応招待状は送ったんだけど、あの人は気まぐれだから。もし来るとしても連絡も無しにフラッと来るのよね。」
なるほど。ゴールデンドラゴンのオーナーさまは今回は不参加と。会っても会えなくてもどちらでも良いとは思ったエスミだが、どんな人がカジノクラブを運営しているのか見てみたかった。
「アレックスって相当美男子よね?」
「そうなの?」
ほら、ニコラの結婚式で会ってるじゃない?流れるような長い金髪と美しいお顔。身長は高く、きっと脱いだら筋肉たくましい身体だと思うわ。とブリアンナに話を振られたけどなにぶん記憶が無かった。なぜだろう?
過去の記憶をたどり寄せてみると、ニコラの結婚式当日、エスミはすこぶる体調を崩していた。式の間中は辛うじて踏ん張っていたが、その後、披露宴前に緊張の糸が切れてとうとう倒れてしまったんだった。
「もしかして、そのアレックスさんは披露宴の頃にやってきてたりする?」
ブリアンナが、うーんとうなりながら思い出すと、確か馬車の故障か何かで結婚式が終わる頃に到着していたという。
「ねぇ、エスミ。あなたは覚えてないかもだけど、あの時倒れたエスミをベッドまで運んでくれたのがアレックスよ。」
「へっ?!」
初耳な話をたった今聞いてエスミは動揺した。しかも運び方は憧れのお姫様抱っこだったなんて。
「二人とも、なんでそれを早く言ってくれなかったの?」
なんて責めてもしょうがない。ニコラはその後、ハネームーンに出掛けてしまったし。ブリアンナに至ってはエスミが倒れた時にオロオロしながら涙を流していたら、そこに王子さまの如く今の夫である伯爵さまが現れてその後はデートに明け暮れる日々で忙しかったからだ。
一方、エスミには何もない。だからなんで?と天に向かって泣きたくなる。いや泣くもんか。なぜなら、アレックスさんがカジノクラブを作ってくれたお陰であの日一生の思い出に残る体験ができたのだから。
あら、ニヤニヤしちゃって、エスミったらどうしたのかしら?とニコラに話を振られたので、実は・・・とゴールデンドラゴンで過ごした思い出を二人に話してあげることになった。
そうだ、仕事に行く時間だ。と取れかけた化粧を落とし、いつも通りの地味な色のドレスに着替えると職場である貸本屋へと急いだ。
店に着くと裏口から入り、客用の出入口の鍵を開ける。閉店になっていた看板をひっくり返して開店にするとガラス窓から見えるように配置する。
店内はところ狭しと並ぶ書棚が天井にまで届き見渡す限りの書物、書物、書物だらけだ。
今日はどこに叩きをかけようか?高いところには脚立も必要だと店の奥にしつらえているカウンターから叩きと脚立を取り出すと気になるところに叩きをかける。
カランコロンと入り口のドアに設えたベルが鳴った。お客様の来店だ。
「いらっしゃいませ!」
エスミのいつも通りの平和で退屈な日々が戻ってきた。
………
「お嬢さま、馬車が到着いたしました。」
ゴールデンドラゴンで一夜の火遊びをしてから数週間後、クァディル公爵家の紋章付きの立派な馬車が弱小貴族ディシュパンダ男爵家の家の前に到着した。
これからしばらく郊外のクァディル公爵領に滞在予定だ。生まれて間もない赤ん坊に会うことも楽しみだが、招待主であるニコラや二人の共通の友人であるブリアンナに会えるのも楽しみである。
ちなみにブリアンナもすでに結婚していて伯爵夫人である。ブリアンナの運命の相手はニコラの結婚式で運命的に出会うという体験をしている。行き遅れはエスミのみ。なぜ自分には運命の出会いがやってこないのかと何度も頭を捻ってみた。捻ってもなにも答えは出てこなかったので考えるのを諦めた。
外に出るとまさにディシュパンダ家には不釣り合いな見事な馬車がエスミを待っていた。侍女のマリーがクァディル公爵家の
御者と一緒に荷物運びをしている。ちなみにマリーはサリーの娘である。息子もいるが新聞記者になる!といって家を飛び出して数年、今では立派な記者さまに成長している。
エスミが馬車に乗り込みしばらくすると馬車が動き出した。いつもならマリーも一緒に乗り込んでしなくてもよい世話をしてくれていたのでおや?っと外を伺うと、マリーはちゃっかり御者席に乗り込んでクァディル家の御者と楽しそうにおしゃべりをしていた。いや、エスミから見るとイチャイチャしていた。
侍女ですら運命の出会いを果たしているのに、だからなぜ自分には出会いがないのか。エスミは頭をかきむしりたくなったがクァディル家に着く前に自分の髪の毛をハゲ散らかしては大変と、寝て落ち着こうと決めた。
「お嬢さま、到着いたしましたよ。」
おっと。本当に寝ている間に着いてしまったようで、馬車の窓からクァディル公爵夫人である友人のニコラがニコニコと笑顔で立っているのが見えた。
まだぼんやりとしている頭をふるふると振るとだいぶ目が覚めたので馬車から降り立つ。ニコラの隣にはすでに到着していたらしいブリアンナも立っていてエスミに手を振っていた。
子どもの頃からの仲良し三人娘。今夜は夜通しおしゃべりの花が咲く予感がした。
………
案内された部屋は離れにありながらとても広く洗練された部屋だった。ニコラに聞くところによると、もともとはニコラの夫である現公爵の弟が使っていたとか。成人したのち都会で自らの事業を起こすために引っ越したため今では客用の部屋として使っているそうだ。
「弟って、ゴールデンドラゴンを経営している人?」
「ええ。グレッグは二人兄弟だから。あの弟よ。」
来て早々だけど、すぐランチになるから準備よろしくね。とニコラに急かされ、荷物はマリーに任せ食堂の間へ急いだ。
ランチの時間は滞りなく過ぎ、元三人娘はテラスに移動してティータイムと言う名のおしゃべりタイムが始まった。
夫持ちの二人は相も変わらず閨での甘い経験をエスミに語って聞かせる。ニコラは三人目を産んだ後の姫始めまで時間がかからなかったとか、ブリアンナはニコラに触発されて三人目を作るべく、生命の種が着床しやすい(らしい)アクロバティックなポーズで云々かんぬん以下省略。まったく東洋の舞術団の見すぎじゃないだろうかと思われることを夫としているらしい。
「そう言えば、弟さんは今回は来ないの?」
「アレックス?うーん。アレックスにも一応招待状は送ったんだけど、あの人は気まぐれだから。もし来るとしても連絡も無しにフラッと来るのよね。」
なるほど。ゴールデンドラゴンのオーナーさまは今回は不参加と。会っても会えなくてもどちらでも良いとは思ったエスミだが、どんな人がカジノクラブを運営しているのか見てみたかった。
「アレックスって相当美男子よね?」
「そうなの?」
ほら、ニコラの結婚式で会ってるじゃない?流れるような長い金髪と美しいお顔。身長は高く、きっと脱いだら筋肉たくましい身体だと思うわ。とブリアンナに話を振られたけどなにぶん記憶が無かった。なぜだろう?
過去の記憶をたどり寄せてみると、ニコラの結婚式当日、エスミはすこぶる体調を崩していた。式の間中は辛うじて踏ん張っていたが、その後、披露宴前に緊張の糸が切れてとうとう倒れてしまったんだった。
「もしかして、そのアレックスさんは披露宴の頃にやってきてたりする?」
ブリアンナが、うーんとうなりながら思い出すと、確か馬車の故障か何かで結婚式が終わる頃に到着していたという。
「ねぇ、エスミ。あなたは覚えてないかもだけど、あの時倒れたエスミをベッドまで運んでくれたのがアレックスよ。」
「へっ?!」
初耳な話をたった今聞いてエスミは動揺した。しかも運び方は憧れのお姫様抱っこだったなんて。
「二人とも、なんでそれを早く言ってくれなかったの?」
なんて責めてもしょうがない。ニコラはその後、ハネームーンに出掛けてしまったし。ブリアンナに至ってはエスミが倒れた時にオロオロしながら涙を流していたら、そこに王子さまの如く今の夫である伯爵さまが現れてその後はデートに明け暮れる日々で忙しかったからだ。
一方、エスミには何もない。だからなんで?と天に向かって泣きたくなる。いや泣くもんか。なぜなら、アレックスさんがカジノクラブを作ってくれたお陰であの日一生の思い出に残る体験ができたのだから。
あら、ニヤニヤしちゃって、エスミったらどうしたのかしら?とニコラに話を振られたので、実は・・・とゴールデンドラゴンで過ごした思い出を二人に話してあげることになった。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
五月病の処方箋
松丹子
恋愛
狩野玲子29歳は五月が大嫌い。その理由を知った会社の後輩、石田椿希27歳に迫られて…
「玲子さん。五月病の特効薬、知ってます?」
キリッと系ツンデレOLとイケメン後輩のお話です。
少しでも、お楽しみいただけたら幸いです。
*Rシーンは予告なく入りますのでご注意ください。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
密会~合コン相手はドS社長~
日下奈緒
恋愛
デザイナーとして働く冬佳は、社長である綾斗にこっぴどくしばかれる毎日。そんな中、合コンに行った冬佳の前の席に座ったのは、誰でもない綾斗。誰かどうにかして。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる