2代目剣バカ世界を歩く

赤井水

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2代目剣バカと辺境伯領

6話

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 そんな悲鳴? それとも何かしらの懇願を聞いて
 皆、慌てて外に出るとゴブリンに袋叩きにされている少女が居た。
 そもそも魔物に懇願するなんてアホの所業である。

 しかし、彼女の武具の質が高い様でゴブリンの攻撃は通らず凌げている。

 「えっと……助けます?」

 ダメージを負ってないのに助けてイチャモンを付けられるのが面倒なんだよね。

 あっ……こっちみたな?

『ふぇぇぇぇたしゅけてぇぇ』

「スレッド助けてやってくれ」

 マクベスさんが頭が痛そうに頼むのでいつも通りそこら辺で拾ったお気に入りの木の枝を使いゴブリンの首を跳ねた。

「ふぇぇぇぇ!? 木の枝で!?」

 俺は少女の顔を見るとケガもなさそうなので

「じゃっ!」

 そう言って立ち去ろうとしたら足にしがみつかれたがそのまま気にせず歩く。
 マクベスさんも計り知れない程の面倒ごとを感じたのだろう皆さっさと馬車に乗り込む。

 馬車が走り出したのを見た折に少女を引き剥がし

「俺は冒険者になりに行くんだ。だから離れてくれ」

 キョトンとする少女。

「ならニィで一緒に冒険者になろうよ!」

 俺は首を横に振り

「サンで冒険者登録を断られたからチャレ帝国に向かってるんだ」

「ふぇぇぇぇ!? あんなに強いのに馬鹿なの? ダルゾン王国は滅亡間近なの?」

 この子なんか……ねぇ。俺の横で馬車はゆっくりフェードアウトを始める。

「ってことでじゃあね!『縮地』」

 俺は少女をその場に残し脱力から体重移動で爆発的なスピードを生む気力の技で馬車に乗り込んだ。

 遠くからまた『ふぇぇぇぇ』と聞こえたけど無視無視。

「そこはかとなく厄介事の臭いがしましたね!」

 そういうとマクベスさんはため息。
 ガイさんは未だに信じられないという表情でグルさんベトさんは何故か少女が居た方向を見ていた。

「3人は少女のことを知っていたんですか? 何か立派な武具でお金持ちそうでしたし」

 防具も武器もあの年齢が使うにしては高価過ぎたから1人で居るのが逆に不自然な少女だった。

「いや、まぁ知ってるな……この辺に居ちゃダメな身分の人だな。
 まぁ、チャレ帝国から流れて来て修行中なんだろう」

 マクベスさんの言葉はかなり濁していた。
 まぁあの少女は近いうちに戦闘自体を諦めるだろうな。

 本人が目の前に居ないので言えるがそこはかとなく戦闘に向いてない。
 世界の理上どんな人でも才能は関係なく強くなれるし生きる為の糧が得られる。

 しかし戦闘に向かう上でゴブリンにすら恐怖を覚えて亀になる様な人には無理だ。
 不思議な武具で身を守れていた以上死にはしないが倒せないだろうねって感じだった。

「それにしても間違った過保護な親も居るんですねぇ。
 戦闘を諦めて欲しいのかと思いましたよ」

 俺なんてじいちゃんみたいになる宣言をした次の日には素手のゴブリン相手に鬼ごっこしろと防具無し木剣1本で放り投げられた。

 噛みつきや致命的な攻撃以外は一切本当に助けないマジでヤバい奴だった。
 ケガをして泣きながら逃げてる時のじいちゃんの一言で死ぬ気になったからね。

『致命傷以外は全てかすり傷じゃ、ポーションで治るぞい』

 今なら分かるけど5歳の子供にハイポーションやエクストラポーション使う人がどこに居るんだよ……

 じいちゃんは収納指輪があるせいで下級ポーションやミドルポーションは売って
 ダンジョンで手に入れた効果の高いポーションは全て指輪に仕舞っていた。

 それにじいちゃん自体が怪我をしないでダンジョンをクリアしていくから貯まる一方だったらしい。


 俺の方にも沢山のポーションを持たせられてるけどそれは人命救助以外では使ってはいけないと言われているし
 自分自身に使う本数も戦闘1回につき何本までと決められてる。

 権力者に見つかるとうるさいらしいよ?
 じいちゃんはそれを態と見せびらかし餌にして悪漢組織壊滅とかしてたけど俺には無理だなぁ。

 その後、何度もゴブリンやウルフに襲われたけどガイさん、グルさんの戦い方を見せてもらい楽しませてもらった。

 そんな時物凄い豪華な馬車とすれ違った。
 御者も護衛も何か焦って向かっていて何かあったのか? と警戒したがマクベスさんに止められた。

「スレッド、あれがさっきの嬢ちゃんの本来の護衛って奴だ。
 多分、護衛を撒いてあそこに行ったんだろ」

 俺は納得したのでほっとする。

「あぁ、なるほど。怪我の心配は無くても人の悪意には立ち向かえませんからね」

 そう、魔物の攻撃から不思議な武具で身を守れても
 武具を外す様に促されたりその様に仕向けられたら意味が無いからね。

 それから3日後、俺達4人はニィに着いた。
 流石は料理人と一緒だけあって道中のご飯は物凄く美味しかった。

 ガイさんの魔法は料理にも使っていて俺にはちんぷんかんぷんだった。
 鍋の中の空気が無くなる? 減る? とお肉が柔らかくなって味が染みるなんて全く理解出来ない。

 そう言った秘伝を見せてくれたけど真似出来ないもんね。
 お肉はトロトロで最高だった、こんな短時間で出来る柔らかいお肉有るんだね!


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