短編集〜ふぁんたじー〜

赤井水

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短編集

捨てられ勇者の人類滅亡計画

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 俺は夢を見ていた。

 空に飛行機より大きいドラゴンに向けて雷魔法を放ったり
 ドラゴンブレスを剣で跳ね返したり斬ったりとど迫力満点の戦いだった。

『うぉぉぉぉぉ!これで終わりだぁぁ!!』

 1時間の激闘の末、ドラゴンの首を断ち切った。

 周りに居る人々と歓声を上げ抱き合い喜び合うと不意に電子音が聴こえてきた。

 ん?電子音?

 俺は飛び上がった。

 枕の横に置いてあるスマホを見ると既に8時半。
 自分が今どの様な状態なのか全てを悟って悲鳴の様な叫び声を上げた。

「ち、遅刻だっ!」

 慌てて飛び上がり俺は着替えて財布、スマホ、カバンを持ち飛び出し階段を降りた瞬間


「あ、」

 世界がひっくり返って真っ暗になった。


◆◇◇◇◇◇◇


「は!寝坊だっ!」

 俺は意識が戻ると飛び上がろうとしたが動けなかった。

「ここどこ?」

「ごべんな"ざい」

 声がした方を見ると土下座をするお姉さんが……ん? あれ? 焼き土下座じゃね?

「ばい、めっちゃあづい"ぃぃ」

 ジュゥゥゥゥという香ばしい音だけが聴こえる。

 うん、スルーしよう、素晴らしい景色(谷間)
も見れるし

「それで?何で謝ってるの?」

「ぐすん、立原さんを間違えてぶっ殺しました」

ん? んん?

「間違えて?」

「はい!間違えて!」

 ピキっ、何その。はい!喜んでみたいに言っても顔は可愛いけど可愛くねーからな?

「いや~可愛いだなんて」

「人の心を読むなっ!」

 それで?この人焼き土下座は余裕みたいだ。

「はい!ほぼ幻術なんで!てへぺろ」

「誠意が無い!?そして古いっ!死語だよ?」

お姉さんは首を傾げて

「やだなぁ立原さんは既に死後ですよ!」

「文字違い(高音)わわわわーって何でボケなきゃいけんのよ!」

 お姉さんは立ち上がるとおもむろに手を振ると鉄板が消えて丸机と椅子にティーセットが現れた。

「まぁ、立ち話も何ですから。あのまま居ると視姦されますしぃ」

「な、何の事ですかねぇ」

ジト目で見られて少し冷や汗をかいた。

 2人で席に着くとお姉さんは1枚の紙を渡してきた。

「それで本題です。非常に残念なボタンの掛け違いによるミスで立原さんは死にました」

「お姉さんが殺したんじゃなかったっけ?」

「んんぅ。悲しいミスでした。まさか本来であればお隣さんの麻美さんが5分後に
 あの階段で滑って臨死体験をしながら異世界転移します」

 話聞かねぇ。

「聞いてますよ? その前に立原さんが寝坊というありえない予想もつかないミスにより先に滑って死にました!」

あれ? 責任転嫁? ミスって俺のミスなの?

「毎日精密機械の様な生活をする立原さんが今日に限って寝坊何て神ですら予想外DEATH」

 ちょいちょい心読んでしかも会話成立してるから俺は紅茶と菓子バンバン食べよう。

 ピシッと手をはたかれた。

「それは私の好物DEATH」

 何時までそのネタ引きずるのだろうか?
 んで俺は異世界転移に巻き込まれること無く宙ぶらりんって事?

「ねぇそろそろ声を出して欲しいんだけど?そして正解です。
 女の子を設定してたから男はそのまま死んだのよねぇ」

 あらヤダ困ったわみたいな顔されてもな、そんな時俺の顔目掛けてお姉さんは光を放った。
 咄嗟の行動に目を瞑るとお姉さんは10m離れた辺りで女の子に対応してた。
 あれが麻美さん? あれ? 隣の漫画家の人じゃね? 結構人気あった様な……何かめっちゃ叫んでる。

 大丈夫なのだろうか?

 あ、足元に魔法陣が浮かび消えた。

 お姉さんは俺の目の前に戻ってくると

「ふぅぅ、後は貴方がどうするか決まれば私の仕事は終りね」

 お姉さん、麻美さんって人気マンガ家だけど大丈夫?

 あ、固まった。
 涙目で俺を見られてもなぁ。と視線を外す。

 何かタブレットみたいなやつを操作し始めた。

 彼女は勇者? それとも賢者? 変態だったけど聖女? いや性女?

「ぶふぉ、やめてくふふふ。笑わせないで。そして聖女よ」

 何で呼ばれたの?

「人間の欲望の為?」

 奴隷直行パターンか……可哀想に。

「まぁ、最初から力を使える様にしたから大丈夫じゃない? それよりも立原さんは転生しません?」

復活は? よくあるじゃん復活の呪文を唱えたって。

「地球には無理です。麻美さんと同じ世界に転生してくれるとありがたいのですけど」

 何か力を下さい。

「いい加減喋りません? 心読むの面倒なんですけどぉー」

 え? 今更?

「まぁいいや。じゃあ剣術と魔法と治癒使える様によろしく!
 後は前世の記憶は5歳辺りに戻ると嬉しいなぁ」

「ふむふむ、では適当に盛り込んでいくのでありがとう!そしてお礼よ!」

 お姉さんは俺を抱き締め最後にキスをしてくれた。
 童貞の俺に立原の人生最後に素晴らしいプレゼントを貰った。


◇◆◇◇◇◇◇

 目が覚めるとそこは……知らない天井ですら無く知らない森だった。

「人生ハード過ぎてワロタ」

 転生記憶復活直後初めての言葉が諦めの言葉だったが。
 そこで初めて気付いた体がボロボロだった事をそこでズキンと頭が痛みうずくまる。

「痛っ!あれ? 何だっけ? 治癒!治癒してー」

 すると体が緑色の光に包まれて体の痛みと頭痛が治った。
 そして何故ここに居るのかも判明した。

「ふむふむ、私の名前は忌み子ですかってちゃうやろっ!クソな親だったらしいな」

 怒りに身を任せると周りの木々がギシギシと揺れ鳥が飛び立ち周りに気配が消えた。

 すると、目の前に1枚の手紙と袋が置いてある事に気付いた。

 手紙を開くと

『どもっす!お姉さんだよー。まさか5歳までこんなに不幸かつ捨てられると思わなかったので色々お詫びを用意したよ!頑張っ!』

 袋に手を入れると頭の中に入ってる物が浮かんだ。

・金貨10枚
・銀貨100枚
・大銅貨10枚
・銅貨50枚
・調理セット
・魔法・魅惑の調味料セット
・短剣
・保存食(固定値)
 パン・干し肉・カロリーバー
・魔法の水袋
 ・異世界の知識・常識
・地図(使用者固定)

「チートじゃね? 安全な場所さえ手に入ればな」

 俺は地図を取り出しカロリーバーを取り出した。
 本当に固定値なのか確認する為3本取りだしたけど袋の中身は変わってなかった。

 カロリーバーを食べながら地図を見ると

「ふむふむ、神狼の森? 危険度SSS? オワター詰んでるじゃん……」

 何か背中に当たったので後ろを見ると小さい子犬だった。

「ん?犬? どうした? 腹減ってるのか」

「きゅーんくぅーんきゅーん」

 あまり目が見えて無いみたいだな。
 やっぱり1人は寂しいよなぁ。

 俺は短剣と干し肉を取り出し細かく切って子犬に食べさせる。
 ガツガツと干し肉を食べると俺が胡座をかいている上に乗ると寝てしまった。

「随分と傷だらけだな。治癒!」

 はっきりいってちょー適当だが治ってるからいっか。
 俺は子犬を抱えて木の根まで歩き座った。

 地図は見たが情報が無い上に1番近い人里が
まさかの捨てられた親の居る領地の村と来たら行けないよなぁ。

 俺は異世界の知識を読み始めるのであった。



 1時間位して本を読み終えると子犬が起きてきた。
 子犬を撫でて袋から先程使わなかった干し肉を切り分け食べさせる。
 俺も少し小腹が空いたので一緒に食べていると

『小僧?何奴?』

 後ろから話しかけられて振り返ると3mはあろうかという白銀の狼がそこには居た。

「オワター」

「キャン!キャン!キャン!」

 俺が諦めの言葉を呟いていると俺の目の前に子犬が立ちはだかり白銀の狼へと吠えている。
 緊迫の状況で俺は逃げたいが逃げられない。
 白銀の狼の威圧的存在感で体が動かなかった。

『ふむ、小僧。娘が世話になった様だな』

「え?娘?この子か。何かすげぇ傷だらけだったぞ?」

『ふむ、オークのくそ豚共にやられたそうだ』

 豚に豚って罵ってもなぁ。

­­『小僧は何奴? 我らと似た様な雰囲気を持つ……ふむ、加護持ちだな。それて何故この森に居る?』

 白銀の狼……いやもう分かってるフェンリルやろ?こいつ。
 そして何故って言われてもなぁ。
 さっきフェンリルの目が光ったのは鑑定かな?

「んー名前無いんだよね。忌み子って事で捨てられたからさ」

 フェンリルはものすごく悲しそうにしていた。

『人族は愚かだな。黒目が忌み子だと?余程滅びたいらしいな』

 んぅう?どゆこと? この世界で魔力適正の問題で目の色は重要だ。

赤眼→火属性
緑眼→風属性
青眼→水属性
茶眼→土属性
黄眼→雷属性
紫眼→聖属性

黒眼→忌み子

 ってなってるんだよね。

「え?どういう事だ?」

『黒眼は真価を発揮すると神眼や竜眼、魔眼に進化する。
 その中から更に選ばれた者を英雄や勇者と神が認定するのだ』

 どっひゃー、やべぇ絶対なりたくない。

「めんどくせぇ、絶対なりたくないしそもそも忌み子を率先して消してるから無理じゃね?」

 するとフェンリルはくすくす笑いだした。

『やる気が無く尚且つ加護持ち、更には既に認定されているのに逃げようとするとはクックック面白いぞ』

 俺は血の気が引き始めた。

「も、も、もしかして、認定って……」

『ふむ、現勇者殿。神狼の森へ何し来た?と質問を変えようかな?』

 俺は膝から崩れ落ちた。

「あんのぉ、くそ神!くそババア!年増っ!ふざけんじ『バリバリバリバリ』」

 俺はそこで意識が落ちた。

◇◇◆◇◇◇◇

 俺はすごくポカポカでもふもふに包まれていた。

「くぅーんキャンキャン!」

 顔をめっちゃ舐められる。
 目を開けるとそこにはフェンリル親子が居た。

『小僧。無事だった様だな。伝言だ。
 次あの様な暴言を吐いたら象徴を切り取るだそうだ』

 俺はガタガタ震えた。ついでに叫びたい何処を? いや分かってるナニを切り取るやろ?

『まさか、女神レティと知り合いだったとはな』

「うん、あの人のせいで前世死んだからこっちに来たからね」

 キョトンとフェンリルは俺を見る。
 少し考え込むと

『ふむ、転生者か。なら尚更秘匿性が高まったな。
 召喚者や転生者は何時でも狙われる。
 しかしお主はレティの加護によりその辺は我の鑑定でも見破れなかった。感謝した方が良いと思うぞ』

「それは感謝しとくか。どもどもレティお姉さん」

「あ!フェンリルさん名前ある?」

『む?まだ名乗って無かったな。我はフェンサキーヌ、サキとでも呼べば良い。娘はフェンレーラ。レーラと呼べ。お主はどうする?』

「う~ん。サキさん名前決めてくれない?何も思い付かないしそれで決めた事によって転生者ってバレるのも怖いんだよね」

『ふむ、一理あるな。フェンロストでどうだ?忘れられし者。
 人族に忘れられフェンリル一族に認められし者としてな。普段はロストで良いだろう』

 フェンは名字なのかな?
 すると俺の体が光始めた。

『名付けが終わった合図だ』

 何も変わらないだろうと思っていたが……

『ママー!ロストー!お腹減ったー!』

「へ?レーラ?」

『ん?ロスト?レーラだよ?どうしたの?』

 クツクツ俺の後ろで笑う狼が居た。

『すまぬ、我が名付けをした事により称号か何かが着いて一族として認められて言葉がわかる様になったのだろう』

「そういう事もあるんだなぁ。あ!女神レティって言ったっけ?あの人に貰った袋の中に最低限の食料はいくら出しても減らないからそれ食べようか」

 俺はサキさんに干し肉20個とカロリーバー30本レーラに干し肉1個とカロリーバー2本を出して俺は干し肉を食べた。

「この袋に入ってる食材は美味いなぁ」

『多分転生者用に色々と合わせているのだろう。
 この世界の干し肉をたまに見つけて食べるが塩っぱくて食べれた物ではないぞ。
 それにカロリーバー? と言ったか? これは物凄く美味いぞ』

 ガツガツと食べるサキさんに俺は水瓶を出して乾燥した木の実の殻を洗い器にして水を飲む。
 レーラにも渡してやると飲み始めた。

『ふむ、ロスト、その水瓶を私の口の目の前に傾けてくれ』

 サキさんに言われるまま俺は水を飲ませた。
 すげぇ量飲んでた。

 俺達3人はそこでその日は爆睡するのであった。

◇◇◇◆◇◇◇

「ねぇ!ねぇ!ロスト!起きて!」

 体を揺らされ俺は意識だけが目を覚ます。

「うーん後5分」

「え?5分?5分って何?ママー!」

 トテトテと走り去る音が聞こえた。

「はぁ、しょうがない小僧だな。ロスト?起きなさい!」

 ひょいっと持ち上げられる感覚が俺を襲い、次に伝わった感覚はムニュだった。

 俺は目をクワッと見開くとそこには銀髪のナイスボディのお姉さんが裸で俺を抱き抱えていた。

「ひゃ!だ、誰?」

 前世でも今世でもDの称号を持つ俺は3次元の女体に盛大にパニックに陥った。

「ふふふ、やはり免疫は無さそうだな?」

 とサキさんの声が聞こえる。

「え?サキさん?」

「神の名が付く者は人化出来るぞ?」

 パニックになりまくって居ると袋が薄ら光っているのが見え何とかサキさんに離れて貰い手を突っ込むと
 裸のレーラが突撃してきた。


「ロスト起きたー!」

「ぎゃぁぁレーラ恥じらいを持ちなさーい」

 頭の中にメッセージが入ってくる。

『プクク、生粋のDの称号を持つ立原さん。いや今はロストさんでしたね。
貴方の為にお2人の服を用意しました!感謝してよね!?』

 アザーっす!適当な感謝の意を伝え引っこ抜く。

 するとそこには下着と上下の服が入っていた。

「2人共!女神様からのプレゼントの服!これ着て!」

「むむ?レティ様の贈り物ならしょうがないか……レーラ服を着るぞ」

 5分程悪戦苦闘していたのでその間に俺は調理セットで干し肉を切りカレー粉で炒めパンに挟んだ物を沢山用意する。

「ロストー美味しそうなの作ってる!ちょーだい!」

 突撃してきたレーラを見るととても可愛らしいブラウスの様な服にベスト短パンで尻尾用の穴も空いていた。

 サキさんとお揃いの様だ。

 3人で朝ごはんを食べた。

 ふむ美味しい、そして女神ありがとうカレー粉が調味料で良かった。


「さて、ロストこれからお前はどうするのだ?」

 そう聞かれて俺は昨日のうちに1つ決めた事があった。

「発表する前に少し実験をするね。んーんーん"ぅ!あ、あぁ。女神レティ様?」

『ほいほーい?なんじゃらほい??』

 まじか、成功してしまった……

「黒眼の人って後何人居ます? あ、この世界の人でね?」


『んー20人……いや19人かな?』

 今の人数が減った瞬間の言葉を聞き顔を歪めギリッと音が鳴る位奥歯を噛み締めてしまった。

『君は優しいね。それで?どうするの?』

「黒眼の人を俺は保護する。転生者や召喚者を隔離する様な世界や
 黒眼を虐げる世界に俺はうんざりしている。
 ロストになる前、5歳までの記憶を俺は昨日思い出した。
 毎日毎日暴力を振るわれ女神レティのおかげで死んでなかった。
 更にそれを気味が悪いと、この森に捨てられた。
 やっぱり俺は地球生まれの立原でもあって耐えよう、忘れようともしたけど……
 昨日、サキさんに名前を貰った時に覚悟が決まった。この世界に生まれたフェンロストとしてね」

 そういうとサキさんが渋い顔と怒りの眼が見えた。
 話しているうちに俺も感情が高まっていた。

「それでも俺は直接手は出さない。それをしても忌み子の恐怖、呪いとして更に黒眼の生を受けた者が死ぬだけだ。
 だからこそ俺は黒眼の人を集めどこかの組織で動く事にする。
 俺が勇者って事は魔王も居るんだろうけど
 そんな魔王関係は知らないし勝手にしてくれ」

『それがロストとしての答えなのね?私からのお願いも聞いて貰えないかな?』

 ん? レティのお願い?

「ん?何?」

『転生者や召喚者の隷属されてる人達の保護もお願い出来ない?』

「どうして? 力は持っているだろうしそもそもレティがちゃんと話して納得して行ったんでしょ?」

『平和な日本と違ってるって言っても上辺しか理解できない人が多かったのよ……私が女の子達の貞操は守ってるけどね』

 あぁ、俺の時と同様ね。

「でも記憶は?」

『残ってるわね』

「復讐したいと言われれば俺は止めれないぞ?
 しかも召喚者や転生者は言う事聞かない奴が隷属されているんでしょ?」

『そ、そうね。残念ながら力に溺れた人も居るわ』

「そいつらに俺は勝てないよ?」

『出来る限りでお願い』

「善処する」

『ありがとう……ごめんね』

 そこで繋がりが切れた。

「ロスト? 終わったのか?」

俺はサキさんの質問に対して頷く

「今の所19人黒眼の人が居るらしい。そいつらを保護して行こうと思う。
 後はレティのお願いで隷属させられている転生者や召喚者を助けて欲しいらしい」

 そこまで話した時に荘厳な気配が目の前から発せられる。
 覇気や神気と言われたら納得する程の圧力をサキさんが放っている。

 レーラの尻尾が股の内側に入り耳がペタンとなっている。

「ロスト?君は何になるんだ?」

 眼が黄金に光るサキさんを真っ直ぐ見返し俺は宣言する。

「俺は……俺は弱者の為の勇者になる。
 弱き立場を守らず奢る愚か者を屠り弱者が最低限努力で動ける世界にしたい」

 俺は宣言と共に光っていた。

 すると次はいつの間にか隣に来ていたサキさんに抱き締められていて

「茨の道よ?それでもするの?」

 優しげな声にハッキリと答えた。

「うん。たとえ俺の後ろが誰1人戦えなくてもやるよ」

「バカね……最初に出会ったのが我達で良かったのかも知れないわね。
 神狼の群れは絶対に仲間を見捨てないわ。何がなんでもね。
 ロスト貴方は我が名付けをした事により我の息子よ?
 だけど人族の世界では15歳が成人よ? それまではレーラもロストも修行ね」

 サキさんがくれる慈愛、レーラがくれる親愛を俺はたった1日とは言えど宝物だと思った。

「ありがとう」

 だからこそ感謝の言葉がさり気なく口から出ていた。

「れ、れれレーラも!仲間はずれはやっ!」

 サキさんと2人でレーラの言葉につい頬が緩んでしまった。
 こうして俺とレーラは修行することが決まるのであった。

 まずその前に俺はサキさんに頼み食べられる山菜や魔物を採ってきて貰い。
 手頃な岩を四角に切って貰い祭壇にした。
 その後、その獲物を使い料理して祭壇に乗せえ祈りを捧げた。

「女神レティ様にお願い奉ります。
 私が15歳になる迄に黒眼の者達が減る事を私は望みません。
 女神レティ様に黒眼の者達が死ぬ事を阻止して貰いたいのです」

 すると目の前に一筋の光が現れた。

『フェンサキーヌ、フェンレーラ、フェンロストお願い受け取りました』

  そこでパチンと手を叩く音が聴こえたと思ったら
 神聖な雰囲気は消えて女神レティが目の前に現れる。
 俺達は椅子を取り出し俺が作った料理を食べ始める。

『むむむっ!やっぱり美味しいわねっ!
 ロストはあっちでめちゃくちゃ料理してたから調味料セットを渡したけど正解ねっ!』

 レティの食レポを聞きながら俺達も、もぐもぐ食べながら俺を指さす。

 1つ食べ終わった所で一瞬世界が光った。

『はいっ!これで黒眼の人達を最低限守る事は出来るわ。
 それでロスト? 切り捨てる事は出来るかしら?』

 謎の質問に少し意味を考えた。
 あ……そういう事か。

「復讐者ですね……」

 レティは頷くが食べる事はやめない。
 いや、真面目な話がぶち壊しだよっ!

『いや、口を開かなくても話せるし。もぐもぐ』

 いや、念話でもぐもぐ言うなし。

「まぁ、その時は消しますしそれ以上に俺が後10年でそいつらより絶対的に強くなれば良い。
 レティももはや様とか要らんだろ?水要る?」

 目の前で胸をトントン叩いて詰まらせかけている残念女神に水を渡す。

『ふぅ、助かりました。それで?』

「黒眼の者達に希望を与えたいのです。
 そしてその希望が女神レティにあると伝えたいのです」

 少し悩んだ顔をするとちょいちょいと俺を呼ぶ。

 すると肩をガシッと捕まえて額にキスをした。
 うぇぇ、油でテカってた唇なんだけど??

『少しの間先程結界を張った者達に念話が送れます。
 そして理解が出来ない人達には封印して理解出来る知能発達した時に再生する様にします』

 その言葉を聞いて俺は今回は仕方なしと頷き声を発した。

「黒眼の者達よ。女神レティ様により君達には致命的になる
 攻撃を受けた時に結界が張られる事によって守って貰った。
 常時守って貰うとそれは他の事に利用されるからだ。
 後10年耐えてくれ。女神レティ様にお願いした
  私は幼すぎて貴方達を助けに行く力も伝も無い。
 非常に心苦しいが今から10年で私は力をつけて各地に居る黒眼の人達を集めようと思う。
 最後に黒眼は忌み子と言われているがそんな話は嘘だった、まやかしだった。
 本来は優秀な血統や能力者に現れる眼が黒眼だそうだ。
 毎日魔力操作していれば君達の力になるだろう。
 しかし隠せ、無能を演じるのだ。
 俺は女神レティ様にお願いをして、我ら同じ黒眼が先の未来に動き出す希望を与えた。
 頂いただけでは申し訳ないから女神レティ様に感謝をお祈りしなさい

 必ず、また会おう。私の名はロストこの名を聞いた時に是非声を掛けてくれ」

 そこで俺の体から光は消えた。

『最後はまるっきり宗教勧誘ね?』

 いやいや、女神様よ? あんたそれが力の源でしょ?

『確かにそうなんだけど……うわっ!え?やばくない?』

「また勝手に心読むし、それでどうしたの?」

『神としての格が上がった……』

「は?19人でしょ?」

『はははぁ、19人だけでこの世界の数億人の力を上回ったわね。引くわー』

 ジト目で見られてもね。

「あ!そういえばさ。砂糖入ってるのは良いんだけどさ。
 お菓子作りたいけど作れないんだけど?」

『献上出来るかしら?』

「ヒッ」

 レティの背後が蜃気楼の様になっとるぅぅ

「む、無理かな?だってこっちの世界で作るにはバターを作ったり生クリームを作ったりさ
 諸々が無いし調理道具も手作業じゃ少し厳しい。
 そもそも、森の中で卵はとれても小麦粉は無理だよ? 」

 そう言うとレティは顎に手を当てて少し悩むとどこかに連絡を始めた。

 サキさんが近付いて来て

「レティ様は何を話しているんだ?」

 ん? わかんないの? あ!俺にはもしかして定番の言語理解が着いてる?
 あれ?でも最初レーラの声聞こえなかった様な……日本語だからかな?

「んー俺の前世の世界の神と交渉して何か素材をやり取り出来るようにしてるっぽい」

『っしゃぁぁぁぁ!』

 急に立ち上がり叫び腕を上げたレティ、女神様眼福ですそのブルンブルン
 でもそのがに股は乙女のする格好ではありませんよ。

『ロストさーん!1番受付までお越しください』

 ど、どんなテンション?

 袋を渡すと何か3つ位の光の玉が入り袋の口を見せられたので手を突っ込むと

 新メニュー
・地球産食材購入(制限有り)
・家電魔道具創造レシピ
・調理用魔道具セット

 と現れた為地球産食材購入を選ぶと
『何が欲しいか』と聞かれたので取り敢えず生クリームと念じると

・生クリーム350ml
・生クリーム泡立て済み
・カスタードクリーム350g……

 とメニューが出たのでとりあえず泡立て済みの生クリームを選ぶと大銅貨1枚と言われた。

 んん? 少し高いかも? まぁ手数料かな?と思い払うと念じると手には懐かしきビニールがあった。

 俺は再び袋に手を入れてパンを4つ取り出して新しくなった調理道具セットから包丁を取り出して
 半分に切れ込みを入れてそこに生クリームを豪快に入れてマリトッツォ風にしたら皆に提供した。

「ほい!簡単な物でお菓子とは言えないけどね!」

 3人は速攻で俺の手からパンを受け取り口に入れるとプルプル震えて

「「『んーまぁーい!』」」

 と言うので俺はお湯を沸かし紅茶を購入して紅茶を入れる。

 4人でお茶会になるのであった。

 しばらくすると誰かから連絡が入った様で悲しそうにレティは

『時間が来たから帰るね。ロスト? たまには私に献上してね?
 箱でも良いからその前で献上って言えば出来るから。
じゃあね!』

 そう言って帰っていくのであった。

 そして俺達の修行も始まるのであった。


◇◇◇◇◆◇◇
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