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5.モルバーン学園(一年生編)
5-5.廃墟ダンジョンにて
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俺はダンジョン探索を続けようとしていたのだが、最早、そんな雰囲気ではなくなっていた。
それもこれも、ダグラスがアルヴィンの事を聞き続けるから、気が散って仕方がない。
これがミーハーという物かと思い、若干ウンザリしている所、変なざわめきを感じる。
「おや、どうやらボスが現れている様ですね」
「ボスが居るのですか。それは楽しみ」
「あまり舐めない方がいいですよ、碌な防具も無しに挑むのは無鉄砲と言わざるを得ません」
「・・・ルジュランジでも大して変わらない紙装備でしたよ」
「・・・本当ですか・・・なんて命知らずな・・・」
今は運動用の服装となっている。
股下のあるスカートモドキ、汗をかいてもいいような通気性の良い上着。
肘も膝も出ているのだから、冒険としてミスマッチなのは否めない。
だが、まぁ何とかなるだろうと思っていたし、ダグラスも同じ様な服装だから文句を言われる程の事とは思えない。
「ダグラス様がそういうのでしたら、戻りますか」
「ああ、そうしよう。人数ももう少し居た方がいいからね。それにそろそろ戻らないと授業に遅刻するぞ」
「それは一大事ですね」
仕方なく戻る事になったが、若干、後ろ髪をひかれている。
美味しいモノを目の前にして我慢が出来るか?と言う話だ。
だが、俺も大人だ。
見た目は兎も角、中身は大人なんだ。
我慢できるさ・・・。
「大丈夫か、とてもじゃないが辛そうに見えるぞ」
「大丈夫・・・大丈夫です、ちゃんと我慢できます」
「トイレか!」
「ちがうわ!」
「・・・もしかして、猫被ってるのか」
「・・・」
「別にいいぞ、誰にも言わない、好きな口調で喋ればいい。そんな事で親友を見限ったりはしないさ」
少し笑みを浮かべながらの言葉に、俺は素直になる事にした。
「じゃあ、お言葉に甘えて・・・お前、良い奴だな」
「そうだろう?」
「・・・ふ、まぁ、親友と堅苦しい話し方は良くないな、楽な話し方をさせてもらうぜ───」
グサッ──
音もなく飛んできた矢がダグラスの腕を貫いた。
反射的に振り向くと、高台からゴブリンスカウトが覗いている。
これはマズイ。
「ダグラス!走れるか!」
「駄目だ、力が入らない」
「わかった、俺が負ぶって走る」
「いいから、お前は逃げろ!ゴブリンなら速攻で殺す事はない」
「何言ってるんだ、ゴブリンにとって男は殺害対象だぞ、ほら、早く!」
カーティスみたいな体格の相手なら兎も角、ダグラス程度の体格であれば、背負う事は造作もない。
問題があるとすれば、背を射られる可能性だ。
慣れない事だが、あれをやるしかないな。
ダグラスを背負って走り出すと、ゴブリンの奴らも動き出した。
奴らは迷宮の狩人と言われる程で、舐めた人間から殺される。
一体一体は貧弱で倒すのも容易だが、学習能力が高い上に経験共有を持つのが特徴だ。
経験共有の範囲を外れるには距離を取るしかない。
その経験共有の中心となる母体、所謂上位種と離れる事を嫌い、それ以上は追いかけてこないのだ。
俺は魔操糸術で細かいネットを生成し、ダグラスの全身を覆った。
奴らが射る矢、扱う武器等には、必ずと言っていい程、毒が塗られている。
それも致死性は低く、即効性のある毒だ。
致死性の低さは仲間の戦力低下を引き落とす。
例えば今みたいに、俺がダグラスを見捨てる事が出来ず背負った状態であれば俺は戦えない。
戦争でも良くある手法で基本戦術と言っていい。
『非殺傷な兵器は命を大事した結果、作られた物だ』なんて言い出す奴らの脳みそはお花畑で満ち溢れているのだと思った事がある。
なんせ、ゴブリン以下の頭脳だからな、碌な事を思いつかないのだ。
平和主義が聞いてあきれる。
「───重くないか」
「これくらい余裕だ、追加の矢は刺さってないだろうな。臓器を射抜かれると流石に致死性が低い毒でもヤバイ」
「大丈夫だ、奴らの矢の威力が落ちているのか、僕の服で弾けている・・・いやこれは魔操糸術か、見事だな」
「はは、それだけ喋れるなら安心だな」
「さっき言ってた、男は殺されるというのはわかった、女はどうなるんだ」
「どうにもならんよ。ちょっと、人間に対する釣り餌にされるだけさ、釣りは楽しいものだろう?奴らもそうやって楽しむんだ」
「興味深い生態だな」
雑談をするなら大丈夫だと信じて走っていたが、魔操糸術が消えてしまった。
指から繰り出す場合、細かい操作は出来るのだが、時間が持たない。
そういう意味で使い物にならないんだ。
「ちぃっ」
「どうした」
「魔操糸術が切れた」
「次撃たれたら・・・」
グサッ──
今度の矢は俺の脹脛を貫通した。
短い嗚咽の声と共に、俺は顔から転倒する。
「ボスどころじゃなかったな」
「おい、だから一人で逃げろと言ったのに!」
「まぁ、大丈夫だ、出来たら這って少しでも出口に向かって進んでてくれないか」
俺の眼を見て信じたダグラスは体を引きずりながら先に進んだ。
足を庇い、痛がる俺を見にゴブリンが集まるのに数分の刻を要した。
もう動けないから観念しているとでも思ったのだろう。
だが、集まるのがちーと遅かった様だ。
「セブンフェイス、最大モード───」
俺程度が持つにはあまりにも不釣り合いな大剣が姿を現す。
その出現にゴブリンの数体が巻き込まれ、絶命する中、俺は剣から大量の魔操糸術を繰り出した。
「あまいなぁ、仕留めたと思って油断しただろ」
「キィィイ!」
セブンフェイスを通常サイズに戻し、軽いフットワークで、ゴブリンを付き次と惨殺する。
「てめえらには、どうして俺が動けるのか分からないだろうな」
最後の一匹を仕留めると、俺はそそくさとダグラスの元に走った。
*
「ダグラス、大丈夫か」
「カロリーナはどうして動けるんだ!エリクサーでも飲んだのか?」
「いやな、俺、自己治癒能力が尋常じゃなく高いみたいでさ、あと毒も殆ど効かないんだ」
「へ、へえ・・・すごいなお前、と言う事は、毒で動けなくなったのは演技か」
「まぁ、一瞬は効いてるから、あの瞬間は少し動きづらかった」
「そうか、まぁ・・・無事でよかったよ」
この後、授業に遅刻する事にはなったが、時々ダンジョンに同行する事を約束した。
それもこれも、ダグラスがアルヴィンの事を聞き続けるから、気が散って仕方がない。
これがミーハーという物かと思い、若干ウンザリしている所、変なざわめきを感じる。
「おや、どうやらボスが現れている様ですね」
「ボスが居るのですか。それは楽しみ」
「あまり舐めない方がいいですよ、碌な防具も無しに挑むのは無鉄砲と言わざるを得ません」
「・・・ルジュランジでも大して変わらない紙装備でしたよ」
「・・・本当ですか・・・なんて命知らずな・・・」
今は運動用の服装となっている。
股下のあるスカートモドキ、汗をかいてもいいような通気性の良い上着。
肘も膝も出ているのだから、冒険としてミスマッチなのは否めない。
だが、まぁ何とかなるだろうと思っていたし、ダグラスも同じ様な服装だから文句を言われる程の事とは思えない。
「ダグラス様がそういうのでしたら、戻りますか」
「ああ、そうしよう。人数ももう少し居た方がいいからね。それにそろそろ戻らないと授業に遅刻するぞ」
「それは一大事ですね」
仕方なく戻る事になったが、若干、後ろ髪をひかれている。
美味しいモノを目の前にして我慢が出来るか?と言う話だ。
だが、俺も大人だ。
見た目は兎も角、中身は大人なんだ。
我慢できるさ・・・。
「大丈夫か、とてもじゃないが辛そうに見えるぞ」
「大丈夫・・・大丈夫です、ちゃんと我慢できます」
「トイレか!」
「ちがうわ!」
「・・・もしかして、猫被ってるのか」
「・・・」
「別にいいぞ、誰にも言わない、好きな口調で喋ればいい。そんな事で親友を見限ったりはしないさ」
少し笑みを浮かべながらの言葉に、俺は素直になる事にした。
「じゃあ、お言葉に甘えて・・・お前、良い奴だな」
「そうだろう?」
「・・・ふ、まぁ、親友と堅苦しい話し方は良くないな、楽な話し方をさせてもらうぜ───」
グサッ──
音もなく飛んできた矢がダグラスの腕を貫いた。
反射的に振り向くと、高台からゴブリンスカウトが覗いている。
これはマズイ。
「ダグラス!走れるか!」
「駄目だ、力が入らない」
「わかった、俺が負ぶって走る」
「いいから、お前は逃げろ!ゴブリンなら速攻で殺す事はない」
「何言ってるんだ、ゴブリンにとって男は殺害対象だぞ、ほら、早く!」
カーティスみたいな体格の相手なら兎も角、ダグラス程度の体格であれば、背負う事は造作もない。
問題があるとすれば、背を射られる可能性だ。
慣れない事だが、あれをやるしかないな。
ダグラスを背負って走り出すと、ゴブリンの奴らも動き出した。
奴らは迷宮の狩人と言われる程で、舐めた人間から殺される。
一体一体は貧弱で倒すのも容易だが、学習能力が高い上に経験共有を持つのが特徴だ。
経験共有の範囲を外れるには距離を取るしかない。
その経験共有の中心となる母体、所謂上位種と離れる事を嫌い、それ以上は追いかけてこないのだ。
俺は魔操糸術で細かいネットを生成し、ダグラスの全身を覆った。
奴らが射る矢、扱う武器等には、必ずと言っていい程、毒が塗られている。
それも致死性は低く、即効性のある毒だ。
致死性の低さは仲間の戦力低下を引き落とす。
例えば今みたいに、俺がダグラスを見捨てる事が出来ず背負った状態であれば俺は戦えない。
戦争でも良くある手法で基本戦術と言っていい。
『非殺傷な兵器は命を大事した結果、作られた物だ』なんて言い出す奴らの脳みそはお花畑で満ち溢れているのだと思った事がある。
なんせ、ゴブリン以下の頭脳だからな、碌な事を思いつかないのだ。
平和主義が聞いてあきれる。
「───重くないか」
「これくらい余裕だ、追加の矢は刺さってないだろうな。臓器を射抜かれると流石に致死性が低い毒でもヤバイ」
「大丈夫だ、奴らの矢の威力が落ちているのか、僕の服で弾けている・・・いやこれは魔操糸術か、見事だな」
「はは、それだけ喋れるなら安心だな」
「さっき言ってた、男は殺されるというのはわかった、女はどうなるんだ」
「どうにもならんよ。ちょっと、人間に対する釣り餌にされるだけさ、釣りは楽しいものだろう?奴らもそうやって楽しむんだ」
「興味深い生態だな」
雑談をするなら大丈夫だと信じて走っていたが、魔操糸術が消えてしまった。
指から繰り出す場合、細かい操作は出来るのだが、時間が持たない。
そういう意味で使い物にならないんだ。
「ちぃっ」
「どうした」
「魔操糸術が切れた」
「次撃たれたら・・・」
グサッ──
今度の矢は俺の脹脛を貫通した。
短い嗚咽の声と共に、俺は顔から転倒する。
「ボスどころじゃなかったな」
「おい、だから一人で逃げろと言ったのに!」
「まぁ、大丈夫だ、出来たら這って少しでも出口に向かって進んでてくれないか」
俺の眼を見て信じたダグラスは体を引きずりながら先に進んだ。
足を庇い、痛がる俺を見にゴブリンが集まるのに数分の刻を要した。
もう動けないから観念しているとでも思ったのだろう。
だが、集まるのがちーと遅かった様だ。
「セブンフェイス、最大モード───」
俺程度が持つにはあまりにも不釣り合いな大剣が姿を現す。
その出現にゴブリンの数体が巻き込まれ、絶命する中、俺は剣から大量の魔操糸術を繰り出した。
「あまいなぁ、仕留めたと思って油断しただろ」
「キィィイ!」
セブンフェイスを通常サイズに戻し、軽いフットワークで、ゴブリンを付き次と惨殺する。
「てめえらには、どうして俺が動けるのか分からないだろうな」
最後の一匹を仕留めると、俺はそそくさとダグラスの元に走った。
*
「ダグラス、大丈夫か」
「カロリーナはどうして動けるんだ!エリクサーでも飲んだのか?」
「いやな、俺、自己治癒能力が尋常じゃなく高いみたいでさ、あと毒も殆ど効かないんだ」
「へ、へえ・・・すごいなお前、と言う事は、毒で動けなくなったのは演技か」
「まぁ、一瞬は効いてるから、あの瞬間は少し動きづらかった」
「そうか、まぁ・・・無事でよかったよ」
この後、授業に遅刻する事にはなったが、時々ダンジョンに同行する事を約束した。
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