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6.モルバーン学園(二年生編)
6-7.バッキンガルム侯爵領にて
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ベニーソンの言う事は単純だった。
農地がやせ細っている問題の解決の為、もっともっと聖女の祈りをかけてもらえないかと言う嘆願だった。
これからコイツの領地を全て回れというのだから、娘は当然断った。
「恐らく、連作障害が起きているな」
「連作障害・・・とはなんだ?」
「同じ作物を育て続けた時に起こる障害だ。回避するには間に毛色の違う作物を育成する事で土が復活する、こういうのを輪作と言うのだ。さらに言えばこのあたりの気候はライ麦より小麦の方が向いているぞ」
と、妻が言い出して故郷の村で実践した実績がある。
本当に私なんかより妻が生きていればこの国の為になったなんて思うところだ。
「おお・・・護衛殿は物知りだな。早急に手配しよう」
「ベニーソン殿は村に様子を見に行っているのか?」
「我は言っていない。これは報告が上がってきただけだ。だが、村の悩みは我の悩みだからな、それを解決するのが我の役目だ」
「村にも足を運んでその目で見た方が良いぞ。村人が貧困に喘いでいるのを知らないのではないか?」
「そんな事は無い、我が領地の民は幸せであるぞ!その証拠に税金も問題なく収められている」
「その税金とやらは誰が誰に徴収している?」
「それはだな───」
それはもう自信たっぷりに説明し始めた。
農地からの買取・運搬は商業ギルドが一括して行っていて、農家は作物の育成に専念できるという。
納税も纏めて商業ギルドが行っているので、侯爵も楽をさせてもらっているという。
これを画期的なシステムだというあたり、明らかにズレている。
「そのシステムの問題点は、農民から買い上げている所をチェックしていない事だな」
「どういう事だ?商業ギルドを信じるのが間違いとでもいうのか?」
「とどのつまりその通りだ。タダ同然で買い取られているのだからベニーソン殿も騙されている側と言う事だな。次に商業ギルドの買取がある時に同行してみれば分かるのでは?」
「そうだな、そうしてみるか、護衛殿。助言、感謝するぞ。それにしても大聖女の護衛がこの様な若い少女一人と言うのは心元ないであろう、王都に戻るまでの間、我の信頼置ける者を四人程つけてやろう」
「いや、それは遠慮しよう。私一人で十分だ。それとも私以上に強い者がいるのか?」
「護衛殿は知恵は回るようだが、流石に腕っぷしは大人に叶わぬであろう?」
「試してみるか?」
そんなノリで始まった腕試し。
中庭に4人の屈強そうな騎士がそろっていた。
中でも一番弱そうな奴が、先鋒として前に出る。
「俺が相手になってやる。どこからでもかかって来い」
「剣を構えろ」
「いっちょ前だな・・・、まぁいい、さあ、かかって来い!」
その言葉と同時にキーンと甲高い音が鳴る。
遅れて剣の上身が地面に突き刺さり、鈍い音がする。
誰も何が起きたか理解できなかっただろう。
剣身を失い柄をだけを握って茫然としていた先鋒に、私は剣先を向けた。
居合い抜き一閃だけで相手の剣を綺麗に切断したのは、まさにドワーフの業物だけはある。
「なっ・・・なんだと!俺の剣がっっ」
そんな先鋒を仲間の3人が笑う。
「ふっはっはっは、不良品つかまれてやんのー」
「ほら、俺の予備貸してやる」
「そ、そうだな、偶然だよな、おらあっ、かかってこ───」
その言葉を言い終わる前にキーンと甲高い音が鳴る。
遅れて剣の上身が地面に突き刺さる鈍い音がする。
先方が尻もちをついて、震え出した。
「こいつ、つええぞ!」
「腕試しは一人だけか?残り三人、同時にかかって来ても良いんだぞ」
「てめぇ、なめくさって!いくぞおめえら!」
「「おおお!」」
三人が同時に私に向かって剣を振り下ろしてきたが、深く被ったフードが揺れる事は無かった。
流石はドワーフの業物。
三本切っても大丈夫。
と、言わんばかりに、素早い剣捌きで相手の武器を切り捨てる。
それは四人が自信を失うのに十分な出来事だった。
阿鼻叫喚となっている四人をほったらかしでベニーソンが話しかけてきた。
「ぶらぼー!すんっばらしい!大聖女の護衛が終わったら、私の元で雇わせてもらうぞ!」
「残念だが予約は詰まっているんだ」
「そこをどうにか、そうだ言い値で雇うぞ」
「すまないな、やる事があるのだ。それに見た目で舐められてては護衛にならんだろ」
「ふむ、その論理で言えば、護衛は付いた方が良いのではないか?」
「・・・・そうだろうか?大聖女様」
「それでもいいんじゃない?」
親子二人の旅行で色々回る予定だったのだが、こうなると仕方がない。
こいつらを連れて何か遊ぶとしても窮屈で、少しため息が出る。
そんな状況で誰かが帰って来たのか、使用人が一斉に慌てて並び始めた。
「パパが帰って来たようだ」
30代に片足突っ込んでそうな男がパパと呼ぶのはかなり痛々しいと思いつつ帰って来た者を確認すると、ベニーソンの生き写しが居た。
流石は親子だと感心していると、父親の方から私に対して声をかけてきた。
普通なら一番に大聖女に声をかける物だと思うのだがな。
「君のその武器はもしや伝説級の業物ではなかろうか。少し見せてくれないか?」
「まぁ、見るだけなら構わないぞ」
「おおぉ・・・これはドワーフの逸品であるな。さぞ、名のある鍛冶師の傑作なのだろうな」
「ふ、分かるか、なかなか目が肥えているようだな。魔力を通すと霊体でも斬れるぞ」
「おお・・・それは良いな、しかしお主には少々大きいのではないか?」
「そんな事は無いよ、私に合うように調整してある」
「成程な、良いものを見せてもらった。できればこのドワーフを紹介してもらいたいところだ、それは可能だろうか?」
「ルグランジの地下迷宮に居るから、会いたければ探すがいい。同じ場所に居るとは限らないが、そこに居なければ私にはわからん」
「うむ、そうさせてもらおう」
このバッキンガルム侯爵は中々見どころがある奴だ。
この剣の良さを見抜くだけでも、それが伺えるというものだ。
それに息子と似た体形とは言え、父親は筋肉もちゃんとついてた。
そんな好感度が上がり切ってる所に、後について来ていた奴に思わず目くじらを立ててしまった。
*
(村から町に行く途中の会話)
「カロリーナ様、俺って言うの止めたんですね」
「ん・・・やっぱり変かな。ちょっとずつ変えていこうかと思って」
「ううん、全然変じゃないよ。むしろもっと女の子らしくしたっていいと思う!可愛い服も着て、髪の毛もお洒落しましょうよ。化粧も今から練習してた方がいいよっ」
「あ・・・・ああ・・・・ちょ、ちょっとずつな、焦る事はないだろ」
「ねぇ、学園でミスコンとかしないの?」
「駄目駄目、権力で票を集める奴がいるからな」
「そっかぁ・・・残念・・・」
農地がやせ細っている問題の解決の為、もっともっと聖女の祈りをかけてもらえないかと言う嘆願だった。
これからコイツの領地を全て回れというのだから、娘は当然断った。
「恐らく、連作障害が起きているな」
「連作障害・・・とはなんだ?」
「同じ作物を育て続けた時に起こる障害だ。回避するには間に毛色の違う作物を育成する事で土が復活する、こういうのを輪作と言うのだ。さらに言えばこのあたりの気候はライ麦より小麦の方が向いているぞ」
と、妻が言い出して故郷の村で実践した実績がある。
本当に私なんかより妻が生きていればこの国の為になったなんて思うところだ。
「おお・・・護衛殿は物知りだな。早急に手配しよう」
「ベニーソン殿は村に様子を見に行っているのか?」
「我は言っていない。これは報告が上がってきただけだ。だが、村の悩みは我の悩みだからな、それを解決するのが我の役目だ」
「村にも足を運んでその目で見た方が良いぞ。村人が貧困に喘いでいるのを知らないのではないか?」
「そんな事は無い、我が領地の民は幸せであるぞ!その証拠に税金も問題なく収められている」
「その税金とやらは誰が誰に徴収している?」
「それはだな───」
それはもう自信たっぷりに説明し始めた。
農地からの買取・運搬は商業ギルドが一括して行っていて、農家は作物の育成に専念できるという。
納税も纏めて商業ギルドが行っているので、侯爵も楽をさせてもらっているという。
これを画期的なシステムだというあたり、明らかにズレている。
「そのシステムの問題点は、農民から買い上げている所をチェックしていない事だな」
「どういう事だ?商業ギルドを信じるのが間違いとでもいうのか?」
「とどのつまりその通りだ。タダ同然で買い取られているのだからベニーソン殿も騙されている側と言う事だな。次に商業ギルドの買取がある時に同行してみれば分かるのでは?」
「そうだな、そうしてみるか、護衛殿。助言、感謝するぞ。それにしても大聖女の護衛がこの様な若い少女一人と言うのは心元ないであろう、王都に戻るまでの間、我の信頼置ける者を四人程つけてやろう」
「いや、それは遠慮しよう。私一人で十分だ。それとも私以上に強い者がいるのか?」
「護衛殿は知恵は回るようだが、流石に腕っぷしは大人に叶わぬであろう?」
「試してみるか?」
そんなノリで始まった腕試し。
中庭に4人の屈強そうな騎士がそろっていた。
中でも一番弱そうな奴が、先鋒として前に出る。
「俺が相手になってやる。どこからでもかかって来い」
「剣を構えろ」
「いっちょ前だな・・・、まぁいい、さあ、かかって来い!」
その言葉と同時にキーンと甲高い音が鳴る。
遅れて剣の上身が地面に突き刺さり、鈍い音がする。
誰も何が起きたか理解できなかっただろう。
剣身を失い柄をだけを握って茫然としていた先鋒に、私は剣先を向けた。
居合い抜き一閃だけで相手の剣を綺麗に切断したのは、まさにドワーフの業物だけはある。
「なっ・・・なんだと!俺の剣がっっ」
そんな先鋒を仲間の3人が笑う。
「ふっはっはっは、不良品つかまれてやんのー」
「ほら、俺の予備貸してやる」
「そ、そうだな、偶然だよな、おらあっ、かかってこ───」
その言葉を言い終わる前にキーンと甲高い音が鳴る。
遅れて剣の上身が地面に突き刺さる鈍い音がする。
先方が尻もちをついて、震え出した。
「こいつ、つええぞ!」
「腕試しは一人だけか?残り三人、同時にかかって来ても良いんだぞ」
「てめぇ、なめくさって!いくぞおめえら!」
「「おおお!」」
三人が同時に私に向かって剣を振り下ろしてきたが、深く被ったフードが揺れる事は無かった。
流石はドワーフの業物。
三本切っても大丈夫。
と、言わんばかりに、素早い剣捌きで相手の武器を切り捨てる。
それは四人が自信を失うのに十分な出来事だった。
阿鼻叫喚となっている四人をほったらかしでベニーソンが話しかけてきた。
「ぶらぼー!すんっばらしい!大聖女の護衛が終わったら、私の元で雇わせてもらうぞ!」
「残念だが予約は詰まっているんだ」
「そこをどうにか、そうだ言い値で雇うぞ」
「すまないな、やる事があるのだ。それに見た目で舐められてては護衛にならんだろ」
「ふむ、その論理で言えば、護衛は付いた方が良いのではないか?」
「・・・・そうだろうか?大聖女様」
「それでもいいんじゃない?」
親子二人の旅行で色々回る予定だったのだが、こうなると仕方がない。
こいつらを連れて何か遊ぶとしても窮屈で、少しため息が出る。
そんな状況で誰かが帰って来たのか、使用人が一斉に慌てて並び始めた。
「パパが帰って来たようだ」
30代に片足突っ込んでそうな男がパパと呼ぶのはかなり痛々しいと思いつつ帰って来た者を確認すると、ベニーソンの生き写しが居た。
流石は親子だと感心していると、父親の方から私に対して声をかけてきた。
普通なら一番に大聖女に声をかける物だと思うのだがな。
「君のその武器はもしや伝説級の業物ではなかろうか。少し見せてくれないか?」
「まぁ、見るだけなら構わないぞ」
「おおぉ・・・これはドワーフの逸品であるな。さぞ、名のある鍛冶師の傑作なのだろうな」
「ふ、分かるか、なかなか目が肥えているようだな。魔力を通すと霊体でも斬れるぞ」
「おお・・・それは良いな、しかしお主には少々大きいのではないか?」
「そんな事は無いよ、私に合うように調整してある」
「成程な、良いものを見せてもらった。できればこのドワーフを紹介してもらいたいところだ、それは可能だろうか?」
「ルグランジの地下迷宮に居るから、会いたければ探すがいい。同じ場所に居るとは限らないが、そこに居なければ私にはわからん」
「うむ、そうさせてもらおう」
このバッキンガルム侯爵は中々見どころがある奴だ。
この剣の良さを見抜くだけでも、それが伺えるというものだ。
それに息子と似た体形とは言え、父親は筋肉もちゃんとついてた。
そんな好感度が上がり切ってる所に、後について来ていた奴に思わず目くじらを立ててしまった。
*
(村から町に行く途中の会話)
「カロリーナ様、俺って言うの止めたんですね」
「ん・・・やっぱり変かな。ちょっとずつ変えていこうかと思って」
「ううん、全然変じゃないよ。むしろもっと女の子らしくしたっていいと思う!可愛い服も着て、髪の毛もお洒落しましょうよ。化粧も今から練習してた方がいいよっ」
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