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6.モルバーン学園(二年生編)
6-11.商業ギルドにて
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二週間ほど経った頃、またまた商業ギルドから呼び出しがかかった。
何回呼び出せば気が済むのかと少しは憤慨したが、今回はギルド長からではなくブルーナから丁寧に頼み込む様な書面だった。
ギルドに入ると会議室に通されるが、その案内をしてくれたブルーナは何やら怯えている様子。
何事かと聞いてみれば、ギルド長が切れてるらしく職員に八つ当たりしているらしい。
「そうなんです、もうギルド長の頭皮もボロボロで髪も薄くなっちゃってるんです、どうにかしてください!」
「私だっていやだよ!めんどくせえ!」
「でもね、ギルド長、うわごとで陛下の名前を繰り返し、繰り返し、繰り返し唸る様に言うんですよ!」
「こえーな!相手にしたくないから帰っていい?」
「ダメです!せっかく来たんですから、ちょっとでも相手してやってください」
「介護みたいに言うなよ!あーっもうっ、仕方ない・・・ちょっとだけだぞ」
女王とは言え12歳の子供に何を求めてるのだ。
私はギルド長の親でなければ子供でもないのだぞ。
しかし、立場上は迷える国民は一人でも救ってやらねばならない訳だろうか。
だとすれば国王って辛いな。
部屋に入ると、ギルド長が目の下にクマを作って待ち構えていた。
私が何か言って特に反応はなく、俯いてひたすらブツブツと何かを唱えていた。
精神的にヤバくなっているのは一目瞭然だ。
「いい加減に、正気を取り戻せ!」
何を言ってもブツブツと独り言を言い続ける。
重症だと思いながら、ギルド長の机の上を見た。
そこには取引明細書が山積みになっている。
「なんだこれ、みるぞ?いいんだな?」
適当に何枚か手に取って確認すると、村単位でまとめられた報告書のようなもので、これまでの収穫量と取引量、支払額が記載されている。
その大半が違法だと思えるような金額で、買い取られていた。
だが、最後には正規の額で調整したうえで村に支払われていた。
さらに利息を払ったという行もあった。
それが一つの村ならまだ問題にはならなかっただろう。
見る限り、バッキンガルム侯爵領だけでなく、いくつもの領地で同じ様な事をしていたらしく、全て清算させられていた。
少し考えれば分かる話だ、商業ギルドがしてきた事をバッキンガルム侯爵が知ってしまった。
バッキンガルム侯爵は人脈が広いらしく、調査が全土に及ぶのは一瞬だった。
その上で適性額に正させ、支払いを求めたという事らしい。
教えたのは私なのだが、少しは同情するべきか?いや、そこまでの必要はないな。
完全に自業自得だよな。私は悪くない。
「いい加減に、目を覚ませ!」
頭を小突くと、ギルド長はやっと正気を取り戻す。
「はっ、これは、女王陛下・・・・」
「いままで甘い汁吸って分、吐き出しただけなら問題ないだろう?」
「利息が・・・利息が・・・利息さえなければ・・・」
「利息くらい、大した額じゃないだろう?いったいいくらになったんだ」
そっと差し出された金額に少し眩暈がした。
有り得ない額に膨れ上がったものは個人で支払える規模を超えている。
更にその請求先は、ロレンツォ個人宛てとなっている。
私が調べた限り、前責任者の頃から行われていた汚職だった。
それを全て、今のギルド長に支払うというのも酷な話だろう。
私はファーヴニルから貰った小さな布袋から、金貨をゆっくりと、一枚、一枚、積み重ねて行く。
結果、大量の金貨を取り出した。
するとロレンツォの目の色がみるみる変わり、生気がみなぎって来る。
「これを使って、利息を支払え。その代わり今後は誰かを騙すような不誠実な取引はするな。いいな?」
丁度、負債を帳消しにできる額を渡した所で、釘を刺した。
「この金は貸しだ。利子は取らんから安心しろ。今後の働きによっては、貸しではなく譲渡とする事も考えてやろう」
「な・・・なにを・・・どこから・・・つまり・・・」
「だがな、今後部下に八つ当たりしたり、取引相手に不誠実なことをしたとなれば、即刻取り立てる。その取り立てが出来ないのであれば、お前やその家族からむしり取る・・・逃げるなよ」
「は、はい!」
「じゃあ、先ずは───」
それから色々注文を付けた。
後にギルド職員から裏のギルド長と呼ばれるようになるとは思いもよらなかった。
ギルド職員から慕われる様になったり、ちょっとしたお茶会を開き団らんする程には馴染んだのは、また別の話。
さて、出資した分を何らかの方法で回収しないといけない訳だ。
でなければ、ファーヴニルの機嫌を損ねるからな。
*
(それから暫くしてからの話)
「シェイラ、店の売り上げはどうだ」
「カロリーナ様、順調ですよ。あんパンは色んな店で売るようになった分、ウチは他の商品で差別化していますから」
「結構な事だな。二号店の準備は出来ているか?」
「はい、有望なお店を引き込みましたからね、流通も含めて調整済みです」
「いいね、その調子だ。三号店四号店も視野に入れ───」
「それなのですが、既に10件ほど加入申し込みがあります、厳選しても3店舗は増やせる状況ですよ」
「お・・・おう、やるじゃねえか」
何回呼び出せば気が済むのかと少しは憤慨したが、今回はギルド長からではなくブルーナから丁寧に頼み込む様な書面だった。
ギルドに入ると会議室に通されるが、その案内をしてくれたブルーナは何やら怯えている様子。
何事かと聞いてみれば、ギルド長が切れてるらしく職員に八つ当たりしているらしい。
「そうなんです、もうギルド長の頭皮もボロボロで髪も薄くなっちゃってるんです、どうにかしてください!」
「私だっていやだよ!めんどくせえ!」
「でもね、ギルド長、うわごとで陛下の名前を繰り返し、繰り返し、繰り返し唸る様に言うんですよ!」
「こえーな!相手にしたくないから帰っていい?」
「ダメです!せっかく来たんですから、ちょっとでも相手してやってください」
「介護みたいに言うなよ!あーっもうっ、仕方ない・・・ちょっとだけだぞ」
女王とは言え12歳の子供に何を求めてるのだ。
私はギルド長の親でなければ子供でもないのだぞ。
しかし、立場上は迷える国民は一人でも救ってやらねばならない訳だろうか。
だとすれば国王って辛いな。
部屋に入ると、ギルド長が目の下にクマを作って待ち構えていた。
私が何か言って特に反応はなく、俯いてひたすらブツブツと何かを唱えていた。
精神的にヤバくなっているのは一目瞭然だ。
「いい加減に、正気を取り戻せ!」
何を言ってもブツブツと独り言を言い続ける。
重症だと思いながら、ギルド長の机の上を見た。
そこには取引明細書が山積みになっている。
「なんだこれ、みるぞ?いいんだな?」
適当に何枚か手に取って確認すると、村単位でまとめられた報告書のようなもので、これまでの収穫量と取引量、支払額が記載されている。
その大半が違法だと思えるような金額で、買い取られていた。
だが、最後には正規の額で調整したうえで村に支払われていた。
さらに利息を払ったという行もあった。
それが一つの村ならまだ問題にはならなかっただろう。
見る限り、バッキンガルム侯爵領だけでなく、いくつもの領地で同じ様な事をしていたらしく、全て清算させられていた。
少し考えれば分かる話だ、商業ギルドがしてきた事をバッキンガルム侯爵が知ってしまった。
バッキンガルム侯爵は人脈が広いらしく、調査が全土に及ぶのは一瞬だった。
その上で適性額に正させ、支払いを求めたという事らしい。
教えたのは私なのだが、少しは同情するべきか?いや、そこまでの必要はないな。
完全に自業自得だよな。私は悪くない。
「いい加減に、目を覚ませ!」
頭を小突くと、ギルド長はやっと正気を取り戻す。
「はっ、これは、女王陛下・・・・」
「いままで甘い汁吸って分、吐き出しただけなら問題ないだろう?」
「利息が・・・利息が・・・利息さえなければ・・・」
「利息くらい、大した額じゃないだろう?いったいいくらになったんだ」
そっと差し出された金額に少し眩暈がした。
有り得ない額に膨れ上がったものは個人で支払える規模を超えている。
更にその請求先は、ロレンツォ個人宛てとなっている。
私が調べた限り、前責任者の頃から行われていた汚職だった。
それを全て、今のギルド長に支払うというのも酷な話だろう。
私はファーヴニルから貰った小さな布袋から、金貨をゆっくりと、一枚、一枚、積み重ねて行く。
結果、大量の金貨を取り出した。
するとロレンツォの目の色がみるみる変わり、生気がみなぎって来る。
「これを使って、利息を支払え。その代わり今後は誰かを騙すような不誠実な取引はするな。いいな?」
丁度、負債を帳消しにできる額を渡した所で、釘を刺した。
「この金は貸しだ。利子は取らんから安心しろ。今後の働きによっては、貸しではなく譲渡とする事も考えてやろう」
「な・・・なにを・・・どこから・・・つまり・・・」
「だがな、今後部下に八つ当たりしたり、取引相手に不誠実なことをしたとなれば、即刻取り立てる。その取り立てが出来ないのであれば、お前やその家族からむしり取る・・・逃げるなよ」
「は、はい!」
「じゃあ、先ずは───」
それから色々注文を付けた。
後にギルド職員から裏のギルド長と呼ばれるようになるとは思いもよらなかった。
ギルド職員から慕われる様になったり、ちょっとしたお茶会を開き団らんする程には馴染んだのは、また別の話。
さて、出資した分を何らかの方法で回収しないといけない訳だ。
でなければ、ファーヴニルの機嫌を損ねるからな。
*
(それから暫くしてからの話)
「シェイラ、店の売り上げはどうだ」
「カロリーナ様、順調ですよ。あんパンは色んな店で売るようになった分、ウチは他の商品で差別化していますから」
「結構な事だな。二号店の準備は出来ているか?」
「はい、有望なお店を引き込みましたからね、流通も含めて調整済みです」
「いいね、その調子だ。三号店四号店も視野に入れ───」
「それなのですが、既に10件ほど加入申し込みがあります、厳選しても3店舗は増やせる状況ですよ」
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