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お猫様のご機嫌取り
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それからタマはご飯を食べにこなくなった。
僕は心配で何度も見に行こうとしたが、毎回ユウジさんに止められてもどかしい思いをしていた。
どうしてこんなにタマのことが気になるのだろう。まだ一ヶ月と少しの付き合いじゃないか。
「はぁ…」
最近ため息をつく回数が格段に増えた。
ため息をつく度に幸せが逃げていくと言うが、ため息をつきすぎてもう幸せなんてないかもしれないと思えるほどである。
タマはずっと部屋にいるわけではないようで、時々部屋の外ではちあわせることがある。
でも、毎回どちらともなくそっぽを向いて通り過ぎてしまうのだ。
こんな状態でタマのところに行っても何を言えばいいのかわらない。
僕はまたため息をついた。
次の日、タマの部屋の前に朝食を置いてみた。
ユウジさんとタクヤさんが朝食を食べ終えた後に見に行くと、食器の中が空っぽになっていたのでものすごく安堵した。
「どうしたの?なんかいいことでもあった?」
部屋に戻るとユウジさんは不思議そうに聞いてきた。
「何でもないです」
僕は平静を装って洗い物を始める。
これで一歩前進だ。
それから毎食部屋の前にご飯を置くことにした。
毎回ちゃんと食べてくれているので、安心して頬が緩む。
でも心のどこかで食べ物で釣っている感じがして申し訳なさもあった。
僕は意を決してタマの部屋をノックした。
ギチャリという古くなったカギの開く音がすると、扉が開いた。
「なに」
タマが顔を半分だけ出して短く言う。
タマは僕を見ないようにしていた。それでも出てきてくれたことにその場に崩れ落ちそうなほど安堵した。
「えっと…タマのこと、気になって…」
「私のことはほっといて」
タマはムスッとして言った。
「やだよ。なにをそんなに怒ってるんだよ」
「…怒ってなんかない」
ふいに泣き出しそうな顔になる。
「怒ってるじゃないか。怒ってないならなんで僕を避けるの?」
「…なんとも思わないの?」
弱々しくタマは言う。
「なにが?」
「私が…猫だってこと」
「なんとも思わないっていうと嘘になるけど…でも、だからってこれまでとなんも変わんないよ」
「どうしてそんなこと言えるの?」
「だってタマはタマでしょ?だったら僕はそれでいい」
タマは黙り込んだ。それでも僕は続ける。
「うまく言えないけど…僕はタマのこと…その、好きだから」
タマの顔がみるみる赤く染まる。
「ばかーっ!」
タマは扉を閉めてしまった。
また怒らせてしまったのだろうか?
少し迷ったけど、今日は自室に戻ることにした。
僕は心配で何度も見に行こうとしたが、毎回ユウジさんに止められてもどかしい思いをしていた。
どうしてこんなにタマのことが気になるのだろう。まだ一ヶ月と少しの付き合いじゃないか。
「はぁ…」
最近ため息をつく回数が格段に増えた。
ため息をつく度に幸せが逃げていくと言うが、ため息をつきすぎてもう幸せなんてないかもしれないと思えるほどである。
タマはずっと部屋にいるわけではないようで、時々部屋の外ではちあわせることがある。
でも、毎回どちらともなくそっぽを向いて通り過ぎてしまうのだ。
こんな状態でタマのところに行っても何を言えばいいのかわらない。
僕はまたため息をついた。
次の日、タマの部屋の前に朝食を置いてみた。
ユウジさんとタクヤさんが朝食を食べ終えた後に見に行くと、食器の中が空っぽになっていたのでものすごく安堵した。
「どうしたの?なんかいいことでもあった?」
部屋に戻るとユウジさんは不思議そうに聞いてきた。
「何でもないです」
僕は平静を装って洗い物を始める。
これで一歩前進だ。
それから毎食部屋の前にご飯を置くことにした。
毎回ちゃんと食べてくれているので、安心して頬が緩む。
でも心のどこかで食べ物で釣っている感じがして申し訳なさもあった。
僕は意を決してタマの部屋をノックした。
ギチャリという古くなったカギの開く音がすると、扉が開いた。
「なに」
タマが顔を半分だけ出して短く言う。
タマは僕を見ないようにしていた。それでも出てきてくれたことにその場に崩れ落ちそうなほど安堵した。
「えっと…タマのこと、気になって…」
「私のことはほっといて」
タマはムスッとして言った。
「やだよ。なにをそんなに怒ってるんだよ」
「…怒ってなんかない」
ふいに泣き出しそうな顔になる。
「怒ってるじゃないか。怒ってないならなんで僕を避けるの?」
「…なんとも思わないの?」
弱々しくタマは言う。
「なにが?」
「私が…猫だってこと」
「なんとも思わないっていうと嘘になるけど…でも、だからってこれまでとなんも変わんないよ」
「どうしてそんなこと言えるの?」
「だってタマはタマでしょ?だったら僕はそれでいい」
タマは黙り込んだ。それでも僕は続ける。
「うまく言えないけど…僕はタマのこと…その、好きだから」
タマの顔がみるみる赤く染まる。
「ばかーっ!」
タマは扉を閉めてしまった。
また怒らせてしまったのだろうか?
少し迷ったけど、今日は自室に戻ることにした。
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