なんか短編集的な

鳩の唐揚げ

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泉の女神

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「貴方が落としたのはこのAndroidのスマホですか?それともiPhoneですか?」

下校中、僕は突然背後から話しかけられた。

「え?」

ポケットを確認してみるとそこにあるはずのガラパゴス携帯は無かった。

「い、いえ…どちらでもないです。」

「貴方は正直者です。正直者の貴方にはこのiPhoneをあげましょう。」

「え、携帯を返して欲しいんですけど。」

「えぇ、つれないなぁ…」

彼女は少し不服そうな顔をして僕の携帯を手渡した。

その彼女とは、小学校、中学と同じ学校で、高校生なった今も同じ学校である。いわゆる幼馴染というやつだ。

「今日のテストどうだった?」

「ん、まぁ、平均は超えてると思う。」

「やっぱり頭良い人は違うなぁ、まだ平均出てないのに超えてるとか言っちゃって。」

「なっ、別に良いでしょ。…そう言うお前は?」

「え、聞いちゃう?それがねー、めっちゃできたんだなーこれが。」

彼女は凄く嬉しそうにそう言った。

「へぇ。よかったじゃん。」

「うん、君に教えてもらったおかげだね。」

僕も、少しだけ嬉しかった。

最期に、君の笑顔が見れたから。

「まぁ、僕のテストの点数はわからないんだけどね…。」

「そっか。」

少女は少し悲しそうな顔をしてそう呟いた。

僕は、明日この町からいなくなる。
僕は昔から体が弱かった。
今まではかろうじで保ってきたけど、高校を入ってすぐ、欠席を繰り返すようになった。
先月、掛かりつけの病院の先生から遠くにある大きな病院を紹介され、入院する事になった。

「明日だね、この町から出るの。」

彼女は少し悲しそうな顔をして、そう言って立ち止まった。

「そうだね、明日だ。」

怖い。
そんな感情が背後から僕を襲った。
もしかしたら、と考えてしまう。
それが顔に出ていたのか、彼女は僕を強く抱きしめた。

「大丈夫、きっと大丈夫だよ。」

そう言いながら。

少し、気持ちが軽くなった。
大丈夫。本当にそんな気がしてきた。

彼女は僕から離れた後、少し笑顔を見せた。

「面会に行きたいけど、君、本当に遠くに行っちゃうんだもんなー。」

「そうだね、でも、まぁ、携帯があるから。」

「でも君、ガラパゴスじゃん。」

そう言って、彼女はポケットからさっきのiPhoneを出した。

「それ、さっきの?」

「うん、あげる。」

少女はiPhoneを僕のポケットに入れた。

「え?」

「前に私が使ってたやつ。まだ使えるから…Wi-Fiにしか繋がらないけど。」

「あ、ありがとう。」

そう言って、彼女と別れた。


大丈夫。僕はきっと大丈夫。


入院後、親からポケットWi-Fiを貰った僕は、彼女からくるラインで勇気づけられた。
何度も、何度も。


そして3年後、僕は退院した。



「貴方が落としたのはこのAndroidのスマホですか?それともiPhoneですか?」

電車から降りると、僕は突然背後から話しかけられた。

「いいえ、違います。僕が落としたのは、心です。」

「どこに?」

「恋に。」

駅のホームには、彼女の「くっさ!」という声が響いた。
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