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全ては意外と見えている②
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「イチから二階と五階を行き来できるエレベーターがあることが聞けたんだし。ファッションセンスを高める時間は全くの無駄ではなかったように思う」
五階のファッションルームでイチとニイと別れ、廊下の窓から射す光が赤なのを確認してからナナとわたしは八階の夢世界に来ていた。
夢世界に扉はなく、七階から続く階段の先に漂う黒い煙のようなものを抜けると宇宙空間にいきなり放り出された感覚になる。
宇宙空間みたいに果てがなさそうな場所だけど壁や天井はあるんだろうか、巨大なパーティールームに星や月の描かれてない青墨のポスターを切り貼りしたイメージのほうがしっくりと。
「なにか考えているのかい、ハチ」
「こんなに目印のない空間だと階段を見つけるのが大変そうだなと思いまして」
すでに階段どころか、わたしの前を歩くナナの姿も見えづらい。輪郭は分かるけど鼻を触ろうとすると唇を触ってしまいそうで不安になる。
「もしかするとハチはこの夢世界に来たのは今日が初めてだったり」
「女の子はあらゆる出来事が初めてで普通だと博士が言っていた気がします」
「博士の冗談は忘れてもらうとして。これは黒い煙なんかじゃ、百聞は一見にしかずか」
と口にしたナナがさらに部屋を明るくしてくれと言うと合成音声のようなものが耳元で聞こえ。
突然、真っ白な空間になって目がちかちかするがナナの全体像がよく分かるので結果オーライか。
「見たことのない幽霊と出会った時のように悲鳴を上げても良いんだよ」
ナナの意地悪な言葉は聞き流すとしてどんな原理なんだろう、図書室で読んだファンタジーの少年が使えるような魔法が原因ではないはず。
この館には魔法に近い科学はあっても、マジカルそのものはないんだからメカニカルな答えがある。
「本質は意外と目に見えていて、その裏を見ようとしないからこそ不思議だと思ってしまう」
博士となんの話の最中に聞いた台詞だったかは、もう忘れてしまったけどなんとなく印象的で覚えていたんだっけな。
「つまり、答えはすでに見えているのにそれ以外の強烈なインパクトにわたしは頭を使いすぎている」
ナナは黒い煙をこれと言っていたが。それは少し変で命令をしたから、その通りになっている。
「黒い煙の正体はとんでもない量のナノマシンで、誰かが命令した通りに再現してくれるのが夢世界」
正解だったらしくナナが拍手をしてくれた。
頭を使いすぎてしまい座りたくなって。ソファーがほしい、なんて思わずわたしが口にすると。
後ろに五階のファッションルームにあった、赤いドーナツ型のソファーが現れた。
「ちゃんと座れるんですね」
「どうして赤いソファーが出てきたのか驚かないんだな」
「頭のデータを読み取ったとかでは。このソファーはわたしの記憶にも新しいですし」
「優秀すぎると可愛くなくなるらしいね。わたしは以前の天然のハチが好きだったようだ」
わたしが養殖になった影響ではなく、ナナがへそ曲がりなだけではないかな。クイズに正解しただけの話だし。
「養殖から天然に戻る方法はありますかね」
「心配しなくても優秀なハチも好きだよ。さてと、そろそろ事件について考えようか」
ナナがわたしの肩とくっつきそうなぐらい近くに座る。
「今なら分かるだろう、わざわざこの夢世界に来た理由がさ」
「ここならわたしやナナの頭に浮かべているデータを映像としてお互いに見られるからでしょうか」
にやりとナナが口角を上げていく。
シイが壊されたのは月曜日の廊下の窓の光が赤色になっていた頃、彼女自身の部屋で斧でばらばらにされた。
ナナの言葉を再現して、斧を持つ黒いもやもやがシイの肉体を分解していく。
「ここで問題だ、シイはなぜ自分の部屋でばらばらにされてしまったんだと思う」
「うっかり、シイが犯人を自分の部屋に招き入れてしまったからなのでは」
開かない扉もだけど、一階にある個室は眼球認証以外では開けることが不可能なんだから。
「斧を持った犯人をシイが自ら招き入れるかな」
「改めて考えてみると変ですね」
サンの斧はかなり大きかったし、折り畳み式でもなかったから背中に隠そうとしても不自然になってしまう。
「斧に限らないが、基本的に来客がなにかを持っていればそちらを見るようだ」
さっき部屋を訪ねた時も灰色のステッキに視線を向けていたからアンドロイドにも適用されるものと考えて良いはず、とナナが唇を動かす。
「だから、そんなステッキを持っていたんですね」
「どんなステッキだと思われていたのかは暇な時にでも教えてもらうとして」
身の危険を感じさせる斧を持つ犯人をシイが部屋に招き入れる可能性は低い。ここまではハチも同じ考えで良いかとナナが確認をしてきた。
「エクレアなら喜んで部屋に入ってもらいますが、もしもクラゲスカートだったら戸惑うのと同じ理屈ですね」
わたしの頭の中の豆電球が光った気がする。
「警戒されないようにシイの部屋の扉の近くに斧を立てかけておいたとか、どうでしょうか」
そしてシイが部屋の中に入っていき背中を向けた瞬間に立てかけておいた斧で彼女をばらばらに。
「ハチだからこそ浮かんだ発想だな」
てっきりナナならすでに思いついていると思ったのに予想外に好感触だった。
「わたしはシイが壊そうとして自室に招いた誰かに返り討ちされたのかと考えていたよ」
「シイがそんな酷いことをしようとするなんて」
「人間に憧れていたところがあるんだから例のメッセージに翻弄されて、壊すための計画を練っていたとしても不思議じゃない」
内気なシイが秘密裏に殺意を抱いていたとしても誰にも分からない。見えているものだけが真実とも限らないだろう。
博士から聞いた言葉を否定するかのようにナナは表情を歪めていた。
五階のファッションルームでイチとニイと別れ、廊下の窓から射す光が赤なのを確認してからナナとわたしは八階の夢世界に来ていた。
夢世界に扉はなく、七階から続く階段の先に漂う黒い煙のようなものを抜けると宇宙空間にいきなり放り出された感覚になる。
宇宙空間みたいに果てがなさそうな場所だけど壁や天井はあるんだろうか、巨大なパーティールームに星や月の描かれてない青墨のポスターを切り貼りしたイメージのほうがしっくりと。
「なにか考えているのかい、ハチ」
「こんなに目印のない空間だと階段を見つけるのが大変そうだなと思いまして」
すでに階段どころか、わたしの前を歩くナナの姿も見えづらい。輪郭は分かるけど鼻を触ろうとすると唇を触ってしまいそうで不安になる。
「もしかするとハチはこの夢世界に来たのは今日が初めてだったり」
「女の子はあらゆる出来事が初めてで普通だと博士が言っていた気がします」
「博士の冗談は忘れてもらうとして。これは黒い煙なんかじゃ、百聞は一見にしかずか」
と口にしたナナがさらに部屋を明るくしてくれと言うと合成音声のようなものが耳元で聞こえ。
突然、真っ白な空間になって目がちかちかするがナナの全体像がよく分かるので結果オーライか。
「見たことのない幽霊と出会った時のように悲鳴を上げても良いんだよ」
ナナの意地悪な言葉は聞き流すとしてどんな原理なんだろう、図書室で読んだファンタジーの少年が使えるような魔法が原因ではないはず。
この館には魔法に近い科学はあっても、マジカルそのものはないんだからメカニカルな答えがある。
「本質は意外と目に見えていて、その裏を見ようとしないからこそ不思議だと思ってしまう」
博士となんの話の最中に聞いた台詞だったかは、もう忘れてしまったけどなんとなく印象的で覚えていたんだっけな。
「つまり、答えはすでに見えているのにそれ以外の強烈なインパクトにわたしは頭を使いすぎている」
ナナは黒い煙をこれと言っていたが。それは少し変で命令をしたから、その通りになっている。
「黒い煙の正体はとんでもない量のナノマシンで、誰かが命令した通りに再現してくれるのが夢世界」
正解だったらしくナナが拍手をしてくれた。
頭を使いすぎてしまい座りたくなって。ソファーがほしい、なんて思わずわたしが口にすると。
後ろに五階のファッションルームにあった、赤いドーナツ型のソファーが現れた。
「ちゃんと座れるんですね」
「どうして赤いソファーが出てきたのか驚かないんだな」
「頭のデータを読み取ったとかでは。このソファーはわたしの記憶にも新しいですし」
「優秀すぎると可愛くなくなるらしいね。わたしは以前の天然のハチが好きだったようだ」
わたしが養殖になった影響ではなく、ナナがへそ曲がりなだけではないかな。クイズに正解しただけの話だし。
「養殖から天然に戻る方法はありますかね」
「心配しなくても優秀なハチも好きだよ。さてと、そろそろ事件について考えようか」
ナナがわたしの肩とくっつきそうなぐらい近くに座る。
「今なら分かるだろう、わざわざこの夢世界に来た理由がさ」
「ここならわたしやナナの頭に浮かべているデータを映像としてお互いに見られるからでしょうか」
にやりとナナが口角を上げていく。
シイが壊されたのは月曜日の廊下の窓の光が赤色になっていた頃、彼女自身の部屋で斧でばらばらにされた。
ナナの言葉を再現して、斧を持つ黒いもやもやがシイの肉体を分解していく。
「ここで問題だ、シイはなぜ自分の部屋でばらばらにされてしまったんだと思う」
「うっかり、シイが犯人を自分の部屋に招き入れてしまったからなのでは」
開かない扉もだけど、一階にある個室は眼球認証以外では開けることが不可能なんだから。
「斧を持った犯人をシイが自ら招き入れるかな」
「改めて考えてみると変ですね」
サンの斧はかなり大きかったし、折り畳み式でもなかったから背中に隠そうとしても不自然になってしまう。
「斧に限らないが、基本的に来客がなにかを持っていればそちらを見るようだ」
さっき部屋を訪ねた時も灰色のステッキに視線を向けていたからアンドロイドにも適用されるものと考えて良いはず、とナナが唇を動かす。
「だから、そんなステッキを持っていたんですね」
「どんなステッキだと思われていたのかは暇な時にでも教えてもらうとして」
身の危険を感じさせる斧を持つ犯人をシイが部屋に招き入れる可能性は低い。ここまではハチも同じ考えで良いかとナナが確認をしてきた。
「エクレアなら喜んで部屋に入ってもらいますが、もしもクラゲスカートだったら戸惑うのと同じ理屈ですね」
わたしの頭の中の豆電球が光った気がする。
「警戒されないようにシイの部屋の扉の近くに斧を立てかけておいたとか、どうでしょうか」
そしてシイが部屋の中に入っていき背中を向けた瞬間に立てかけておいた斧で彼女をばらばらに。
「ハチだからこそ浮かんだ発想だな」
てっきりナナならすでに思いついていると思ったのに予想外に好感触だった。
「わたしはシイが壊そうとして自室に招いた誰かに返り討ちされたのかと考えていたよ」
「シイがそんな酷いことをしようとするなんて」
「人間に憧れていたところがあるんだから例のメッセージに翻弄されて、壊すための計画を練っていたとしても不思議じゃない」
内気なシイが秘密裏に殺意を抱いていたとしても誰にも分からない。見えているものだけが真実とも限らないだろう。
博士から聞いた言葉を否定するかのようにナナは表情を歪めていた。
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