アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

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第一章 カラハダル大森林 異世界転移 編

36.急転-Ⅰ

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 食事も終わり、お互いについて色々と話していたところで、紹介し忘れている者たちがいることに気が付いた。

「そうだ。すっかり忘れてたや。おいでキュウ」

 既に果物を食べ終え、横たわるテッチの上に同じく横たわって欠伸をしているキュウに声をかける。
 キュウの上にもロンドが乗っていて、鏡餅のような状態になっている。
 平和だ。

「キュ?」

 「どうしたの?」という感じにキュウが起き上がると、上に乗っていたロンドはそのまま飛び立ち、ソフィアの肩の上へと舞い戻った。
 少し遅れてキュウも自分の膝に乗ったところで、両手で持ち上げて三人に紹介をする。

「こいつが僕の相棒で、光と火の精霊の――ほら、自己紹介して」

「キュウッ!」

「キュウって言うんだ! 賢いなぁお前はまったくよしよし――」

 ちゃんと自分の名前を言えるだなんてなんて賢いのだろうか。
 持ち上げている両手でわしわしと撫でまわすとくすぐったそうにキュウが鳴き声をあげる。

「キュキュキュウッ♪」

「お、おう。タケルとキュウが仲が良いことはわかったな……」

「仲が良いっていうか……どちらかと言うと親バカって感じじゃないかしら? でもかわいいわね……」

「いいな……そうだロンド! 頑張って『ロンド』って鳴いてみて!」

「ピ、ピィ……」

 「む、無茶言わないでくれ……」という感じにロンドが鳴いている。
 最初の頃は安直な名前を付けたものだと思っていたが、今ではよくぞこの名前を付けたと思っている。
 実に良い名前だ。

「ほほほ。では一応こちらも紹介をしておこうかのぅ。わしの事は知っておるようじゃから省くとして、そこでのんびりしておるのが光と雷の精霊のテッチじゃ。わしの女房の契約精霊じゃの。ソフィア嬢ちゃんや。その子の事も紹介をしてはくれんかのぅ?」

「は、はい! 私の契約精霊で、光と風の精霊のロンドです!」

「ピィッ!」

 おじいちゃんによるテッチの紹介と、ソフィアによるロンドの紹介が終わったところで、一つの疑問が生まれた。

("契約"って何の事なんだろう……)

 自分とキュウは特に契約と呼ばれるような事をした覚えは無いが、何かソフィアとロンドの関係と違うところがあるのだろうか。

(契約って言うだけはあるし、何か儀式とかするのかな……?)

「あの、タケルくん」

 顎に左手を当てて、右手で膝の上のキュウを撫でながら色々と考えていると、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
 何事かと思い顔をあげると、目の前に端正な顔立ちの少女の顔が――ソフィアの顔があった。
 使い慣れた花の石鹸の香りがふわりと鼻孔をくすぐる。
 一瞬あまりの近さに緊張からか鼓動が速くなったが、すぐにソフィアの視線が自分に向いていない事に気が付く。
 視線の向いていた先は自分の膝元――つまりキュウであった。

「その、もし良ければなんですけど、キュウちゃんを……撫でさせて貰えませんか?」

 その目はあまりにも期待に満ち溢れていて、断るにはあまりにも忍びない。
 というよりキュウが嫌がりでもしない限り、断る理由も別に無い。
 小声でキュウに問いかける。

「別に良いよな? キュウ」

「キュ? キュウッ!」

「良いってさ。はい」

 キュウを持ち上げてソフィアに渡す。
 撫でさせて貰うだけのつもりだったようで、ソフィアは一瞬驚いたが、恐る恐るとキュウを受け取った。

「キュ、キュキュッ♪」

「はぁぁ……もふもふ……かわいい……」

 どうやらキュウの可愛さの虜になったようでご満悦のようである。
 当然であろう。
 若干だらしない顔になっているが、キュウの可愛さを考えれば仕方のない事だ。
 仕方がないったら仕方がないのだ。

 そんな様子をアイラがどこか羨ましそうな様子で見ているのに気が付いた。
 ここにもまた一人キュウの可愛さに魅了された者が誕生したようだ。
 その在り様だけでこんなにも簡単に人を魅了するとは、まったく罪深い精霊である。

「アイラも撫でる?」

「い、いや、私は別にっ……いいわよ」

 アイラは頬を赤らめながら目を逸らす。
 察するに照れくさいのであろう。
 しかし照れくさいのであれば、無理に勧めるのもあまり好手とは言えないかもしれない。
 どうにかして自然な感じに、アイラにキュウの可愛さを直に体感してもらう方法は無いものかと考えていると――

「キュッ」

「あ! キュウちゃん……」

「へ?」

 アイラの感情でも読んだのかはわからないが、キュウがソフィアの腕を飛び出してアイラの肩へと乗った。

「え、ちょっ、え?」

「キュキュウ♪」

 肩に乗ったキュウはアイラが反応する間もなく頬ずりをする。

「ちょっ、ちょっと……もう! くすぐったいったら!」

「キュキュキュウッ♪」

 そう言いながらもアイラは笑顔であり、キュウを押しのけようとはしない。
 なるほど確かにキュウから強引に擦りついていったならば、照れていたアイラには有効であろう。
 その人に合わせたやり方で可愛さを振りまくとは――

(――キュウ……恐ろしい子!)

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