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第二章 軍属大学院 入学 編
50.大雑把に繊細に-Ⅲ
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揺さぶられる中、何か良い案は無いかと思案する自分の目に留まったのは、時間を確認するソフィアの姿だった。
「えっと、ほら、えーっと……あっ、そうだ! アイラって実家が商会やってるんだよね? 時計とかって扱ってる?」
思いついた辺りで揺さぶりから解放され、アイラへと何とか質問をする。
「ええ、まあ時計も扱ってるわよ? 何? 欲しいの? 仕方ないわね! 一番良い物を――」
「ちょっ、ちょっと待って! 時計を買いたいから色々と紹介してほしいんだよ!」
おじいちゃんから時計の魔道具はそれなりに高価だと聞いた事がある。
しかも結構大規模らしいアイラの実家の商会の一番良い時計なんてそんなものいったいどれ程の価値があるものになってしまうのか想像するのも恐ろしい。
そんな自分の発言を聞いたアイラは少し不満気に返してくる。
「えー……大人しく受けとっときなさいよ。借りとかツケって私嫌いだからできるだけ早く返したいのに……」
(貸しは嫌いじゃないのか……?)
思いはしたが口には出さな――
「お前貸しは好きだもんな」
「うっさいサキト!」
スパーンッと小気味良い音を響かせてアイラがサキトの頭を叩いたが、サキトは「あでっ!」と言っただけで特に堪えた様子は無い。
音のわりに優しいツッコミだったのだろうか。
「アイラお前、今の俺じゃなかったら意識失ってるぞ!」
「あんたがいつも身体強化してるのを知ってるから強くやってるに決まってるでしょ。他の人にやるわけ無いじゃない! てか今の強さでも効かないってあんたまた待機中の強化練度上げたの?」
「おう! 魔力に余裕も出来たし、特訓にもなるからな!」
どうやらかなり強烈なツッコミだったようだ。
いや、アイラはしれっとした顔で言っているが、頭を意識を失う程度の強さで叩くというのは果たしてツッコミと言ってもいいのだろうか。
(確かに魔力探知をすればある程度は身体強化の有無はわかるけれど……)
まあ、長年の付き合いだからこそのやり取りなのだろう。
そんな風に何となく感心していると、ソフィアが口を開く。
「でもアイラちゃん。お店で扱ってる商品をあげるってなったらそれって、アイラちゃんからのお礼というよりもお父さんからのお礼みたいにならないかな?」
「た、確かにそうね……。自腹でも買おうと思えば買えるけど、よくよく考えたら一番高いのって確か成金趣味の貴族用に用意した趣味の悪い物だった気もするし……」
「そうだアイラちゃんサキトくん! 三人で選んでプレゼントするっていうのはどうかな?」
「なるほど、確かにそれ良いかもしれないわね。欲しいものがわかってるなんてこんなにお礼しやすい状況を私一人で独占するのも悪いし」
「でも俺あんまり高額はだせねぇぞ? 義姉さんに借りるってのも何か違うし……」
「じゃあサキトには私が"貸し"って事にしとこうか?」
「うっ……それも義姉さんにあんまりしないように言われてるんだけど……少しくらいなら……」
「別にもうあんたが返せない程貸すつもりは無いわよ……。リオナさんにまた迷惑かけるのは私も嫌だし……。いろいろ学習したからその辺の計算ももう間違わないし……」
「それに一番大事なのは気持ちだよ! 出来るだけサキトくんにも出せそうな中で良い物を見つけるようにしましょう!」
何だか勝手に話が進んで完全に買ってもらう流れになってしまっていて、正直今更自分で買うなんて言える雰囲気でもない。
ソフィアがちょうどいい事を言ってくれているのでそれに乗っかる事にしよう。
「う、うん! 本当に気持ちだけで充分嬉しいよ! シンプルに時間だけわかれば良いからさ!」
どんな時計があるのかは知らないが、デザインが凝ったようなものは高くついてしまうだろう。
シンプルで良いのだシンプルで。
そんな自分の主張をアイラは理解してくれたようで――
「なるほど”シンプルに時間だけわかれば良い”ね……。それなら確かちょうど良い物があった気がするわ! そうと決まればさっさと帝都を目指すわよ! 私だけ恩返しが少しも出来てないなんて状態からさっさと脱却したいもの!」
そんな風に嬉々とした様子で発言した。
彼女らは恩返しと言うが、個人的にはソフィアたちが無事だった事と、”護れた”という事実が得られただけで充分過ぎる程に報われているのだ。
――護られるだけで護れなかった自分から変わることができた。
護れなかった事実が消えるわけではない。
だが、自分が護れないだけの人間ではないとわかったのだ。
自分に失望したまま生きていくはずだった人生を変えられた。
これを”報われている”と言わずして何と言うのだ。
彼女らの気持ちは本当に嬉しいが、これからきっと自分が無知なために色々と迷惑や手間をかけてしまうということを考えると、過剰に何かをしてもらうのは忍びない。
とりあえずこれでやたらめったら高い物を買わせてしまうことは無いだろう。
(……無いよね?)
若干嫌な予感を感じながらも、再び帝都に向けて歩を進め始めた。
その後は、たまに魔力探知にかかる魔物を四体ほどサキトが仕留めながら進み、夕方には近くにあった町に宿泊し、次の日の昼前には目的地である帝都ヴェルジードを視界に捉えたのであった。
「えっと、ほら、えーっと……あっ、そうだ! アイラって実家が商会やってるんだよね? 時計とかって扱ってる?」
思いついた辺りで揺さぶりから解放され、アイラへと何とか質問をする。
「ええ、まあ時計も扱ってるわよ? 何? 欲しいの? 仕方ないわね! 一番良い物を――」
「ちょっ、ちょっと待って! 時計を買いたいから色々と紹介してほしいんだよ!」
おじいちゃんから時計の魔道具はそれなりに高価だと聞いた事がある。
しかも結構大規模らしいアイラの実家の商会の一番良い時計なんてそんなものいったいどれ程の価値があるものになってしまうのか想像するのも恐ろしい。
そんな自分の発言を聞いたアイラは少し不満気に返してくる。
「えー……大人しく受けとっときなさいよ。借りとかツケって私嫌いだからできるだけ早く返したいのに……」
(貸しは嫌いじゃないのか……?)
思いはしたが口には出さな――
「お前貸しは好きだもんな」
「うっさいサキト!」
スパーンッと小気味良い音を響かせてアイラがサキトの頭を叩いたが、サキトは「あでっ!」と言っただけで特に堪えた様子は無い。
音のわりに優しいツッコミだったのだろうか。
「アイラお前、今の俺じゃなかったら意識失ってるぞ!」
「あんたがいつも身体強化してるのを知ってるから強くやってるに決まってるでしょ。他の人にやるわけ無いじゃない! てか今の強さでも効かないってあんたまた待機中の強化練度上げたの?」
「おう! 魔力に余裕も出来たし、特訓にもなるからな!」
どうやらかなり強烈なツッコミだったようだ。
いや、アイラはしれっとした顔で言っているが、頭を意識を失う程度の強さで叩くというのは果たしてツッコミと言ってもいいのだろうか。
(確かに魔力探知をすればある程度は身体強化の有無はわかるけれど……)
まあ、長年の付き合いだからこそのやり取りなのだろう。
そんな風に何となく感心していると、ソフィアが口を開く。
「でもアイラちゃん。お店で扱ってる商品をあげるってなったらそれって、アイラちゃんからのお礼というよりもお父さんからのお礼みたいにならないかな?」
「た、確かにそうね……。自腹でも買おうと思えば買えるけど、よくよく考えたら一番高いのって確か成金趣味の貴族用に用意した趣味の悪い物だった気もするし……」
「そうだアイラちゃんサキトくん! 三人で選んでプレゼントするっていうのはどうかな?」
「なるほど、確かにそれ良いかもしれないわね。欲しいものがわかってるなんてこんなにお礼しやすい状況を私一人で独占するのも悪いし」
「でも俺あんまり高額はだせねぇぞ? 義姉さんに借りるってのも何か違うし……」
「じゃあサキトには私が"貸し"って事にしとこうか?」
「うっ……それも義姉さんにあんまりしないように言われてるんだけど……少しくらいなら……」
「別にもうあんたが返せない程貸すつもりは無いわよ……。リオナさんにまた迷惑かけるのは私も嫌だし……。いろいろ学習したからその辺の計算ももう間違わないし……」
「それに一番大事なのは気持ちだよ! 出来るだけサキトくんにも出せそうな中で良い物を見つけるようにしましょう!」
何だか勝手に話が進んで完全に買ってもらう流れになってしまっていて、正直今更自分で買うなんて言える雰囲気でもない。
ソフィアがちょうどいい事を言ってくれているのでそれに乗っかる事にしよう。
「う、うん! 本当に気持ちだけで充分嬉しいよ! シンプルに時間だけわかれば良いからさ!」
どんな時計があるのかは知らないが、デザインが凝ったようなものは高くついてしまうだろう。
シンプルで良いのだシンプルで。
そんな自分の主張をアイラは理解してくれたようで――
「なるほど”シンプルに時間だけわかれば良い”ね……。それなら確かちょうど良い物があった気がするわ! そうと決まればさっさと帝都を目指すわよ! 私だけ恩返しが少しも出来てないなんて状態からさっさと脱却したいもの!」
そんな風に嬉々とした様子で発言した。
彼女らは恩返しと言うが、個人的にはソフィアたちが無事だった事と、”護れた”という事実が得られただけで充分過ぎる程に報われているのだ。
――護られるだけで護れなかった自分から変わることができた。
護れなかった事実が消えるわけではない。
だが、自分が護れないだけの人間ではないとわかったのだ。
自分に失望したまま生きていくはずだった人生を変えられた。
これを”報われている”と言わずして何と言うのだ。
彼女らの気持ちは本当に嬉しいが、これからきっと自分が無知なために色々と迷惑や手間をかけてしまうということを考えると、過剰に何かをしてもらうのは忍びない。
とりあえずこれでやたらめったら高い物を買わせてしまうことは無いだろう。
(……無いよね?)
若干嫌な予感を感じながらも、再び帝都に向けて歩を進め始めた。
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