アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

わらび餅.com

文字の大きさ
59 / 163
第二章 軍属大学院 入学 編

50.大雑把に繊細に-Ⅲ

しおりを挟む
 揺さぶられる中、何か良い案は無いかと思案する自分の目に留まったのは、時間を確認するソフィアの姿だった。

「えっと、ほら、えーっと……あっ、そうだ! アイラって実家が商会やってるんだよね? 時計とかって扱ってる?」

 思いついた辺りで揺さぶりから解放され、アイラへと何とか質問をする。

「ええ、まあ時計も扱ってるわよ? 何? 欲しいの? 仕方ないわね! 一番良い物を――」

「ちょっ、ちょっと待って! 時計を買いたいから色々と紹介してほしいんだよ!」

 おじいちゃんから時計の魔道具はそれなりに高価だと聞いた事がある。
 しかも結構大規模らしいアイラの実家の商会の一番良い時計なんてそんなものいったいどれ程の価値があるものになってしまうのか想像するのも恐ろしい。
 そんな自分の発言を聞いたアイラは少し不満気に返してくる。

「えー……大人しく受けとっときなさいよ。借りとかツケって私嫌いだからできるだけ早く返したいのに……」

(貸しは嫌いじゃないのか……?)

 思いはしたが口には出さな――

「お前貸しは好きだもんな」

「うっさいサキト!」

 スパーンッと小気味良い音を響かせてアイラがサキトの頭をはたいたが、サキトは「あでっ!」と言っただけで特にこたえた様子は無い。
 音のわりに優しいツッコミだったのだろうか。

「アイラお前、今の俺じゃなかったら意識失ってるぞ!」

「あんたがいつも身体強化してるのを知ってるから強くやってるに決まってるでしょ。他の人にやるわけ無いじゃない! てか今の強さでも効かないってあんたまた待機中の強化練度上げたの?」

「おう! 魔力に余裕も出来たし、特訓にもなるからな!」

 どうやらかなり強烈なツッコミだったようだ。
 いや、アイラはしれっとした顔で言っているが、頭を意識を失う程度の強さで叩くというのは果たしてツッコミと言ってもいいのだろうか。

(確かに魔力探知をすればある程度は身体強化の有無はわかるけれど……)

 まあ、長年の付き合いだからこそのやり取りなのだろう。
 そんな風に何となく感心していると、ソフィアが口を開く。

「でもアイラちゃん。お店で扱ってる商品をあげるってなったらそれって、アイラちゃんからのお礼というよりもお父さんからのお礼みたいにならないかな?」

「た、確かにそうね……。自腹でも買おうと思えば買えるけど、よくよく考えたら一番高いのって確か成金趣味の貴族用に用意した趣味の悪い物だった気もするし……」

「そうだアイラちゃんサキトくん! 三人で選んでプレゼントするっていうのはどうかな?」

「なるほど、確かにそれ良いかもしれないわね。欲しいものがわかってるなんてこんなにお礼しやすい状況を私一人で独占するのも悪いし」

「でも俺あんまり高額はだせねぇぞ? 義姉さんに借りるってのも何か違うし……」

「じゃあサキトには私が"貸し"って事にしとこうか?」

「うっ……それも義姉さんにあんまりしないように言われてるんだけど……少しくらいなら……」

「別にもうあんたが返せない程貸すつもりは無いわよ……。リオナさんにまた迷惑かけるのは私も嫌だし……。いろいろ学習したからその辺の計算ももう間違わないし……」

「それに一番大事なのは気持ちだよ! 出来るだけサキトくんにも出せそうな中で良い物を見つけるようにしましょう!」

 何だか勝手に話が進んで完全に買ってもらう流れになってしまっていて、正直今更自分で買うなんて言える雰囲気でもない。
 ソフィアがちょうどいい事を言ってくれているのでそれに乗っかる事にしよう。

「う、うん! 本当に気持ちだけで充分嬉しいよ! シンプルに時間だけわかれば良いからさ!」

 どんな時計があるのかは知らないが、デザインが凝ったようなものは高くついてしまうだろう。
 シンプルで良いのだシンプルで。
 そんな自分の主張をアイラは理解してくれたようで――

「なるほど”シンプルに時間だけわかれば良い”ね……。それなら確かちょうど良い物があった気がするわ! そうと決まればさっさと帝都を目指すわよ! 私だけ恩返しが少しも出来てないなんて状態からさっさと脱却したいもの!」

 そんな風に嬉々とした様子で発言した。
 彼女らは恩返しと言うが、個人的にはソフィアたちが無事だった事と、”護れた”という事実が得られただけで充分過ぎる程に報われているのだ。

――護られるだけで護れなかった自分から変わることができた。

 護れなかった事実が消えるわけではない。
 だが、自分が護れないだけの人間ではないとわかったのだ。
 自分に失望したまま生きていくはずだった人生を変えられた。
 これを”報われている”と言わずして何と言うのだ。
 彼女らの気持ちは本当に嬉しいが、これからきっと自分が無知なために色々と迷惑や手間をかけてしまうということを考えると、過剰に何かをしてもらうのは忍びない。
 とりあえずこれでやたらめったら高い物を買わせてしまうことは無いだろう。

(……無いよね?)

 若干嫌な予感を感じながらも、再び帝都に向けて歩を進め始めた。
 その後は、たまに魔力探知にかかる魔物を四体ほどサキトが仕留めながら進み、夕方には近くにあった町に宿泊し、次の日の昼前には目的地である帝都ヴェルジードを視界に捉えたのであった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...