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第二章 軍属大学院 入学 編
51.初旅最後の一悶着-Ⅰ
しおりを挟む時刻は昼前、快晴の下踏み固められた地面を軽く蹴って前へと進む。
自分たちの目指した帝都ヴェルジードという場所はもうすでに視界に捉えており、あと数分もすれば今の少しゆったりとした走りでも辿り着くだろう。
昨日までのようなペースで走ればもっと早く着けるのだが、目的地に明るいうちに辿り着けるのが確定している事と、もう一つの理由から少しばかりペースを落としているのだ。
テッチも背にキュウとロンドを乗せて、自分たちのペースに合わせて走っている。
たぶんテッチ的には散歩程度の感覚だろう。
この距離からでも都市を囲んでいる壁は高く堅牢で相当に巨大であり、ここまで見てきた村や町とは一線を画す規模の都市である事が見て取れた。
もっと遠くに居た時に、壁からわずかに何か城のてっぺんのようなものが小さく見てとれたが、ここまで近づくと中の様子は既に一切見えなくなっている。
大きな都市壁にも圧倒されるが、他にも目を惹かれるものはたくさんある。
例えばこの街道周辺の様子だ。
昨日まで自分たちが走っていた街道は広くとも道幅が十メートルほどであり、付近は見渡す限り雑草が生い茂っていたが、今走っている街道は正確にはわからないが明らかに四倍は道幅があるように見え、付近に草はそれほど生えていない。
門らしき所までこの広さの街道が真っ直ぐと伸びている様は見ていてなかなか気持ちが良いものだ。
辺りには四メートル程の高さの白い棒状の何かがそれぞれ二十メートル程の間隔で大量に遠くまで並べられており、所々にその棒状の何かが折れている部分を除けば非常に壮観である。
それ以外にも昨日までとの明らかな相違点はあるのだが、とりわけ一番感じるのはすれ違う荷馬車などの量の差だ。
これがペースを落としているもう一つの理由である。
昨日は本当に極々たまにすれ違う程度、一昨日に至ってはすれ違いすらしなかったのに対し、今は二、三分に一度何台もの馬車が固まった集団とすれ違っているようなペースだ。
土を踏み固めたような道を走って移動している時点である程度察してはいたが、この世界の流通の主流は荷馬車での運搬のようで、荷車を風魔法などで出来るだけ軽くして馬で引っ張るのだそうだ。
人々の服はほとんどがポロシャツだったりジャージだったりなのに、移動手段は発展していないという、何ともミスマッチな光景に違和感を感じざるを得ない。
「それにしても凄い馬車の数だな……。でも道こんなに広くなくても良いんじゃないのかな?」
いくら多いとはいえ、ここまで広い必要は無いように見える。
しかしこの道は舗装されたというよりはどちらかと言うと人が通るうちに出来たという感じの道で、実際にこれだけの範囲が踏み固められたという事になるが――
「朝方の出発ラッシュの時間帯の交通量が半端じゃないのよ。一部の界隈じゃヴェルジードの事を帝都って呼ぶよりも"貿易都市"って呼ぶ方が主流なくらい商業が盛んなんだから!」
自分の素朴な疑問に答えてくれたのはアイラであった。
つまり朝方になるとこの広い道が荷物をいっぱいに積んだ荷馬車などで埋め尽くされるという事だろうか。
「……ちょっと見てみたいな」
「まあ都市壁の上からなら見てもいいんじゃない? ……間違っても下で見ちゃだめよ。擦り潰されるから」
アイラは顔を青くしながらそう答えた。
(どことなく経験からの助言のような気がするな……)
話から察するに、あの大きな都市壁には上る事が出来るようなので、是非とも行ってみたいものだ。
そんな感想を抱きながら次の質問をする。
「あのいっぱいある白い棒は何なの? 所々折れちゃってるけど……」
「ああ、あれは魔力灯ですよ。暗くなると帝都の周辺をあれで照らすんです。帝都内にも色んな場所にありますよ!」
「折れてるのは魔物に襲われたやつだな。本当は破壊される前に魔物を討伐しなきゃなんだけど、たぶん間に合わなかったんだろうな」
ソフィアとサキトがそれぞれ答えてくれた。
家にあった魔力灯の明かりは、自分の知る蛍光灯や白熱灯などよりも優しい光で、結構気に入っていたので、是非とも全て点灯している所を見てみたいものだ。
(全部点灯している光景も上から見ると綺麗かもしれないな……)
そんな風に気になった事や物を質問しながら走っていると、時間はあっという間に過ぎ去り、自分たちはついに門の手前まで辿り着いた。
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