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第二章 軍属大学院 入学 編
69.弟子と孫-Ⅰ
しおりを挟む屋敷へと向かうハヴァリーさんの後ろを歩きながら、改めて周りを見渡してみる。
屋敷まで一直線に伸びるレンガの道の両脇には花畑が広がっており、綺麗に掃除されているためか道には花弁一つとして落ちてはいない。
森の花畑を見慣れている自分としては、少しばかり物足りないように感じるが十分に広いであろう。
普通に家数軒分の敷地を花畑に費やしている。
その時、一枚の花弁が自分の顔の横を通り過ぎて道へと舞い落ちていく。
そのまま道へと静かに着地するかと思いきや、やはり何かしらの魔法的な効果が付与されているようで、道に落ちそうになった花弁は再びふわりと舞い上がり、上空へと昇っていく。
その花弁を目で追うと、これまた衝撃的な光景が広がっていて、思わず足を止めてしまった。
少し気にして見てようやく気が付く程度にではあるが、上空――三階建てである目の前の屋敷の屋根よりも少し高い位置くらいであろうか、その付近の宙空を風で飛ばされた花弁たちがひらりはらりと舞いながら徐々に同じ方向へと導かれるように飛んで行っているのだ。
その方向にあるのは件の屋敷であり、屋根の中心付近へと徐々に集まっている様は、まるで宙空にも薄らと花弁の道が出来ている様にも見える。
予想ではあるが、これは花弁を集めるためのシステムなのではないだろうか。
森の家では落ちた花弁が定期的に水路へと一斉に集約されて、花弁の小川を作りだして家まで運ぶというシステムであったが、この屋敷では空を伝って集めているのだろう。
(そういえば前に「常に集めるようにすると魔力の消費量が上がってうんぬんかんぬん」とか何とか言ってたような……)
この光景はこの光景で好きなのだが、どの世界でも節約の精神というのは大事なのだろう。
ノーモア環境破壊なのだ。
魔法で環境破壊がされているのかは知らないが。
(という事は、この空間も……)
「あの、ハヴァリーさん」
「はい。何でございますかな?」
自分が足を止めているのに気が付いていたのか、ハヴァリーさんも足を止めてこちらを向いていた。
足音にまで気を向けているのかもしれない。
「この屋敷って魔法陣魔法で結界とか張られてるんですか?」
よく見れば、路地を歩いた距離的には隣接してないとおかしいはずの民家たちが見えず、敷地を仕切っている鉄柵の向こう側には森が広がっている。
しかしあれは恐らく森の景色を投影しているだけだろう。
なんだか少し不自然だ。
まあ十中八九何かしらの結界が張られているだろう。
「ほぉ、よくお気づきに……そういえば大森林の方で生活していらしたのでしたな。このお屋敷は主と奥様が帝都でも静かに暮らすためにと準備なされたお屋敷ですのでな。人目につくわけにはいきませぬ。ですから周りから見られぬように様々な措置がなされておりますし、不肖の私めも僭越ながら人除けの結界を張らせていただいておりますよ」
「はぇー……」
「ワゥ……」
予想以上に厳重な対策がされている事実に関心していると、ハヴァリーさんに対してテッチが「あんたのが一番効果を発揮してるけどな……」的な事を皮肉っぽく言った。
「なんかハヴァリーさんのが一番効力があるって言ってますけど……」
「ほっほ、なんとなんと! 私めの施した結界は、ただの"好奇心"では決してこの場所にはたどり着けぬようにしているだけですぞ。タケル様も体験したのではないですかな? テッチ殿と接触していたのならば体験しておらぬかもしれませんがな」
「テッチと接触……? あっ! ひょっとしてあの路地の奥見ると不安になる奴ですか?」
「はい。最終的には恐怖からわき目も振らずに逃げ出してしまうようにできておりますゆえ――」
なるほど、確かに明確な目的が無いならばあの不安感からは逃げ出したくもなるだろう。
「――そういう怪奇現象的な話が好きな方々の間で噂になってしまいましてな。最近少し結界の強度を上げてみたところなのです。よろしければご感想をお聞かせくださいませんかな?」
それは本末転倒というものなのではないだろうか。
人除けの結界が呼び込み要素になってしまってるではないか。
「あ、でもそれなら確かに強度上げた方が良いかもしれませんよ。僕も最初は不安になりましたけど、途中から全然気にならなくなりましたし」
「はて……テッチ殿に触れたわけではなくですかな?」
「はい。あれならちょっと度胸がある人が来たら通れちゃうかもしれないです」
魔物九体を同時に相手取る程度の度胸さえあれば通れる事になる。
きっとそれなりにいるだろう。
「むむっ……ひょっとしたら結界が綻んでいるのかもしれませんな。後で確認せねば……」
「ワウゥ……」
「え? 『寧ろ強すぎるくらいだった』って言ってますけど……。あっ! ひょっとしておじいちゃんから貰った魔道具とかつけてると大丈夫だったりしますかね?」
そういえば飛翔魔法の魔道具のヴォルジェントを装着したままでずっとここまで来ていた。
じっくりと確かめれば程度ではあるが、おじいちゃんの魔力がこもっているようなので、これが結界の鍵になっていたりはしないだろうか。
「ほほぅ、そう言えばつけておられますな。確かにそれだけセイル様の魔力がこもっているならば、それが要因やもしれませぬな」
(あれ? 見える所に何かつけてたっけ……?)
というよりも、こもっている魔力の量まで認識している口ぶりだが、いったいどうやっているのだろうか。
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