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第二章 軍属大学院 入学 編
73.全力と死ぬ気の差-Ⅱ
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「まあ実際、私がボウズを本当に殺しそうになったらたぶん、ハヴァリーの爺さんが助けてくれるだろうから安心しとけよ。ぬくぬくとそのまんまの覚悟で試験に臨めばいいさ。……まあ、見た感じもうボウズには無理そうだけどな」
彼女が自分に背を向けて離れて行く。
このままでは駄目だとわかっているのに体は動いてくれない。
「軍人になれば犯罪者相手に殺意を向けられる事なんてざらだ。それに耐えられねぇんならさっさと帰りなボウズ」
(あの頃から何も変わってないじゃないか……)
――力を得ても、死ぬ事を恐れて一つの命を見捨てたあの頃と何も変わっていない。
本当に彼女の言う通りだ。
一流の甘ちゃんという言葉がひどくしっくりと感じてしまう。
向けられた殺意に怯えて逃げるような、その程度の覚悟しかないのだきっと。
――こんな僕に、誰かを護れるような生き方なんて――
その時、頬に柔らかくて小さく、そして温かい何かが触れる。
「きゅ、キュウ……?」
肩に乗るキュウの前足だった。
キュウは前足を自分の頬に添えたまま――
「キュウッ!」
ぷすっ――と爪を立ててきた。
「痛っ!?」
「キュウッ! キュウキュウッ!」
「え? 難しく考えすぎって……何を……?」
「キュウキュウキュキュウッ。キュウキュキュウッ!」
「死ぬのは……立ち向かって護った……え? 待ってキュウ、何を……」
キュウの言いたい事が詳細すぎるのか、上手く伝わって来ない。
上手く伝わっていない事に気が付いたのか、キュウはもどかしそうにしている。
その後、自分の頬を見て何かに気が付いた様な反応を見せた。
自分の頬と言えば、先程キュウが爪を立てた事で血が出始めているのだが、キュウは何を思ったのかその頬を伝う血を小さな舌で舐めとった。
その瞬間、身体中を魔力が駆け巡り、床に白桃色と黄色に輝く二つの魔法陣らしき何かが広がった。
おじいちゃんがいつも書いていたアルファベットに似た文字とは違い、何か直線だけで作られたような奇怪な文字がたくさん並んでいる。
その二つの魔法陣は次第に溶け合い、一つの大きなアポロ色の魔法陣となったかと思うと、ひと際強い輝きを放った後に消え去った。
(な、なんだ今の……?)
まったく状況が掴めずに困惑していると、突然幼い子供の様な声が"心"を通して響いてくる。
『お! やっとちゃんと聞こえるようになった♪ 武も聞こえてる?』
(な、なんだこいつ!?)
知らないはずなのにどこか聞き覚えのあるようなその声にさらに困惑していると、頬に軽くぷすりと爪を立てられる。
『こいつとは何さ! 相棒だって言ったくせに! 武のアホ!』
「なっ!? ま、まさかキュウなのか!?」
『それ以外に誰がいるのさ! アホ! 武のアホ!』
二回も言わなくても良いではないか。
すぐに気が付かなかった事にご立腹なのかキュウはツーンとしている。
しょうがないではないか。
ただでさえ殺されそうになったり、急に魔法陣が発生したり、いきなりあまりにもくっきりとした声が心を通して伝わってきたりと状況を把握しきれないのだ。
自分も突然キュウの声がはっきりとわかるようになって大概に驚いているのだが、どうやら驚いているのは自分だけではない様で――
「――はあ!? ボウズてめぇまだその精霊と契約してなかったってのか!? でもジジイの手紙には精霊化までは出来るって……はあ!?」
「いやはや……何から驚いて良いのかがわかりませんな」
「ワウッ!」
彼女――ティストさんと少し離れた場所で見ていたハヴァリーさんは驚いている様だが、テッチはそれほど驚いていない様だ。
というよりも、どうやら今のがずっと気になっていた"契約"というものらしい。
なるほど、それならばこんなにはっきりとキュウと意思疎通が出来るようになるのだからさっさとするべきであった。
「キュウも知ってたなら知ってたでさっさと契約してくれれば良かったのに……」
『だってテッチんから聞いた"契約したら出来る事"がほとんど出来てたんだもん! 魔力ちゃんと渡せるし、考えてる事も何となく伝わるし、精霊化だって出来たし! 契約出来てるんだと思ってたんだもん! 契約したらこんなにちゃんとわかるなんて聞いてなかったし……』
テッチんとはテッチの事だろうか。
まさかそんな呼び方をしていたとは。
彼女が自分に背を向けて離れて行く。
このままでは駄目だとわかっているのに体は動いてくれない。
「軍人になれば犯罪者相手に殺意を向けられる事なんてざらだ。それに耐えられねぇんならさっさと帰りなボウズ」
(あの頃から何も変わってないじゃないか……)
――力を得ても、死ぬ事を恐れて一つの命を見捨てたあの頃と何も変わっていない。
本当に彼女の言う通りだ。
一流の甘ちゃんという言葉がひどくしっくりと感じてしまう。
向けられた殺意に怯えて逃げるような、その程度の覚悟しかないのだきっと。
――こんな僕に、誰かを護れるような生き方なんて――
その時、頬に柔らかくて小さく、そして温かい何かが触れる。
「きゅ、キュウ……?」
肩に乗るキュウの前足だった。
キュウは前足を自分の頬に添えたまま――
「キュウッ!」
ぷすっ――と爪を立ててきた。
「痛っ!?」
「キュウッ! キュウキュウッ!」
「え? 難しく考えすぎって……何を……?」
「キュウキュウキュキュウッ。キュウキュキュウッ!」
「死ぬのは……立ち向かって護った……え? 待ってキュウ、何を……」
キュウの言いたい事が詳細すぎるのか、上手く伝わって来ない。
上手く伝わっていない事に気が付いたのか、キュウはもどかしそうにしている。
その後、自分の頬を見て何かに気が付いた様な反応を見せた。
自分の頬と言えば、先程キュウが爪を立てた事で血が出始めているのだが、キュウは何を思ったのかその頬を伝う血を小さな舌で舐めとった。
その瞬間、身体中を魔力が駆け巡り、床に白桃色と黄色に輝く二つの魔法陣らしき何かが広がった。
おじいちゃんがいつも書いていたアルファベットに似た文字とは違い、何か直線だけで作られたような奇怪な文字がたくさん並んでいる。
その二つの魔法陣は次第に溶け合い、一つの大きなアポロ色の魔法陣となったかと思うと、ひと際強い輝きを放った後に消え去った。
(な、なんだ今の……?)
まったく状況が掴めずに困惑していると、突然幼い子供の様な声が"心"を通して響いてくる。
『お! やっとちゃんと聞こえるようになった♪ 武も聞こえてる?』
(な、なんだこいつ!?)
知らないはずなのにどこか聞き覚えのあるようなその声にさらに困惑していると、頬に軽くぷすりと爪を立てられる。
『こいつとは何さ! 相棒だって言ったくせに! 武のアホ!』
「なっ!? ま、まさかキュウなのか!?」
『それ以外に誰がいるのさ! アホ! 武のアホ!』
二回も言わなくても良いではないか。
すぐに気が付かなかった事にご立腹なのかキュウはツーンとしている。
しょうがないではないか。
ただでさえ殺されそうになったり、急に魔法陣が発生したり、いきなりあまりにもくっきりとした声が心を通して伝わってきたりと状況を把握しきれないのだ。
自分も突然キュウの声がはっきりとわかるようになって大概に驚いているのだが、どうやら驚いているのは自分だけではない様で――
「――はあ!? ボウズてめぇまだその精霊と契約してなかったってのか!? でもジジイの手紙には精霊化までは出来るって……はあ!?」
「いやはや……何から驚いて良いのかがわかりませんな」
「ワウッ!」
彼女――ティストさんと少し離れた場所で見ていたハヴァリーさんは驚いている様だが、テッチはそれほど驚いていない様だ。
というよりも、どうやら今のがずっと気になっていた"契約"というものらしい。
なるほど、それならばこんなにはっきりとキュウと意思疎通が出来るようになるのだからさっさとするべきであった。
「キュウも知ってたなら知ってたでさっさと契約してくれれば良かったのに……」
『だってテッチんから聞いた"契約したら出来る事"がほとんど出来てたんだもん! 魔力ちゃんと渡せるし、考えてる事も何となく伝わるし、精霊化だって出来たし! 契約出来てるんだと思ってたんだもん! 契約したらこんなにちゃんとわかるなんて聞いてなかったし……』
テッチんとはテッチの事だろうか。
まさかそんな呼び方をしていたとは。
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