アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

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第二章 軍属大学院 入学 編

84.美味しすぎて辛い-Ⅲ

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「はぁ……。言葉遣いに関しましてはもう諦めておりますし、仕方ない点もございますので無理をせずともよろしいですわよ……。ですが立ち居振舞いの方はしっかりとお気を付けてくださいな。そもそも一人の女性として、その座り方は絶対によろしくありませんわよ」

「お、おう……。気を付ける……ます……」

 あのティストさんをこうも大人しくさせるとは、本当に何者なのであろうか。

(というよりこの料理を作ったとか言っていたような……)

 自分の視線に気が付いたのか、その女性はティストさんの肩から手を放して、優し気にこちらに微笑みかけてきた。

「あぁ、私としたことが申し遅れましたわね。私は非常勤ですが、そこの糸目と同様にこの屋敷の管理を任されております『エフィシス・ギーザクルス』と申しますの。普段は……そうですね、礼儀作法に関する講師などをしておりますの。これからはタケル様の身の回りのお世話などを私もさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたしますね」

 そういうとエフィシスさんは左足をひいて右足をやや曲げ、背すじをのばして軽く少しだけ腰をおとした。
 舞台女優などがする挨拶に似ているが、スカートの両端は持ち上げない様だ。
 何にしても口調や仕草の一つ一つがとても丁寧な方だ。
 流石は礼儀作法の講師と言った所であろうか。

「よ、よろしくお願いしますエフィシスさん……ん? ギーザクルス?」

 ギーザクルスと言えば確かハヴァリーさんもそんな家名だったような気がする。

「どうぞ『エフィ』とお呼びくださいな。お察しの通りそこの糸目とは家名が同じでございますよ」

「私めの家内にございますタケル様。先ほども申しました通り、これからは私たち二人でタケル様の身の回りのお世話を務めさせていただきます故、どうぞよろしくお願いいたしますな」

 そう言うとハヴァリーさんも丁寧にお辞儀をしてきた。
 そういえば、身の回りの世話をしてくれるという事は要するに使用人的な立場なのだとは思うが、そうなってくると給料などはどうすればいいのだろうか。

「あの……僕まだ働いてないんでよく考えると人二人どころか一人すら雇えるような経済力が無いんですけど……どうすれば良いですかね?」

 自分がそう聞くとハヴァリーさんとエフィさんはきょとんとした顔をした後、お互いに少し笑いながら口を開いた。

「そういえば私たちは一応使用人という形態でしたわね。セイル様が特殊すぎて失念しておりましたわ」

「確かに本来であればタケル様の懸念も御尤もですな。では改めて説明しておきましょうかな」

 そう言うとハヴァリーさんは一拍呼吸を置いてからさらに続ける。

「私め共はセイル様から、セイル様の財産の管理の方も一任されております。そしてその財産に関しましても昨日の手紙の方にタケル様の成したい事に必要ならば適宜使う様にと、そしてその判断も一任するという様に書かれておりました故、タケル様が経済上の心配をする必要は全くありませんよ」

「これからタケル様がお金が必要な場合はそちらの糸目か私にお申し付けくだされば用意いたしますわ。もちろん、あまりにも無駄遣いであると判断できる場合には許可しない場合もございますのでご了承くださいね」

「わ、わかりました……」

 要するに給料どころか財産ごと任されているから払う必要は無いという事なのだろう。
 というよりもエフィさんの後半の物言いがなんだか威圧感が凄かった。
 これが財布の紐を握られる感覚というやつなのだろうか。
 いや、そもそも自分の財布ではないのだが。

「別にどうせ使いきれねぇんだからある程度無駄に使わせても良いと思うけどなぁ」

 残っていた肉も全て平らげた様子のティストさんがそんな事を口にする。
 おじいちゃんは財閥か何かなのだろうか。
 そんなティストさんの物言いにエフィさんが反論する。

「節制を無くせばその先には破滅しか待っておりませんのよ。まあ本当に必要とされるものでしたら特に拒む事もございませんので、遠慮せずに申し付けてくださいな」

 必要なものと言えば、自分とキュウの食費くらいであろうか。
 いやそれもこうして朝食を作ってもらえている事から考えると殆ど必要ないのではなかろうか。
 今の自分はそれに頼るしかないのだが、おじちゃんが許可したらしいとは言え少し本当にこれで良いのか不安になってくる。

 できるだけ早く自分でも稼げるようにならねばと静かに心の中で誓うのであった。




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