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第二章 軍属大学院 入学 編
90.肩書はあくまでも肩書-Ⅲ
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そんな感想を抱いていると、いつの間にか流れていた曲が止まっており、店の奥から男性が出てきた。
「いらっしゃいませ――おや? 朝から来客かと思ったらソフィアちゃんじゃないか。ああ、そういえばアイラが今日は朝から待ち合わせてると言っていたな」
「あっ、リーガルおじさん! おはようございます!」
見た目四十代程の薄い金髪のその男性は、親し気にそう口にしながらこちらへと歩いてくる。
ちなみにではあるが、今のは色の話であって別に頭髪の量について薄いと感じたわけではない。
男性の身長が高めなために彼の頭頂部を確認できないが、きっとふさふさしているだろう。
(ん?)
唐突にキュウがふわふわと空中に浮いて高度を上げたかと思うと、すぐに高度を下げて肩へと乗ってきた。
『ちょっと怪しい感じだったよ』
「お、おう……」
わざわざ確認しなくても良かったのだが――というより、そうなってくるとまるでそういう意図をもって"薄い"と思ったみたいではないか。
そんな意図は断じて無い。
無いったら無いのだ。
『無いの?』
「無いよ!」
「ん? どうかしたんですかタケルくん?」
「えっ!? いや! な、何でもないよ!」
思わずツッコミを入れてしまったが、キュウの言葉は自分にしか伝わっていないので、傍から見れば一人で突然騒ぎ出したヤバい奴だ。
いや、伝わっていたらそれはそれで問題なのだが――
「『タケルくん』? ……という事はまさか、君が!」
ソフィアと親し気に話していた男性が何かに気が付いた様子で、凄い勢いでこちらに近づいてくると、両手を握られて激しく握手をされた。
「いやぁ! 娘から話は聞いているよ! 本当に、本っ当にありがとう! 感謝してもしきれないよ! 本当に、娘たちを助けてくれてありがとう!」
男性は涙目になりながらそう感謝を述べてくる。
両手は少し痛い程に握られているが、その分だけ彼の想いが籠っている様にも感じられて、温かい気持ちになってくる。
話から察するにこの男性はたぶん――
「おっと、自己紹介がまだだったね。私はアイラの父親の『リーガル・グランツ』という者だ」
やはりアイラの父親のようだ。
顔立ちは少し違うが、髪の色や透き通る様な空色の瞳などは紛れもなく彼からの遺伝だろう。
「一応、グランツ商会の会長をしていてね。帝都は初めてなんだよね? だったらきっと隣にあるショッピングモールは楽しんでもらえると思うよ。是非とも見てまわってみてくれ。立場上あまりこういう事は言ってはならないのだが、何か困った事が起こった場合は是非とも力にならせて欲しい。しがない一人の商人だが、この辺りにはそれなりに顔が利くからね」
どことなく面倒見が良さそうな雰囲気も、アイラそっくりである。
正直、端まで歩くだけで数分かかる様な規模のあのお店の主には見えないが、ソフィアも然り、肩書なんてその人の本質には関係の無いものなのだろう。
「えっと、その、お気持ちは嬉しいんですけど、お礼とかそういうのは全然気にしなくても大丈夫ですよ」
「いや、しかしだね……」
自分はもう十分過ぎる程にたくさん貰っているのだと、どうやって伝えたものかと思っていると、ソフィアがリーガルさんを説得する様に語りかける。
「リーガルおじさん、良いんです。――タケルくんはそういう人なので。その辺りは本当に強情なんですよ?」
「ああ、そういえばアイラがそんな事も言っていたなぁ……。親としては娘の命を助けてくれた人に何もお礼をしないだなんて不義理な事はしたくは無いんだがなぁ……」
そう言われるとどうも弱るが、自分はもう十分過ぎる程に得ているのだ。
「さっきの感謝の言葉だけでももう、胸がいっぱいなんです。これ以上貰ってしまうと胸やけしちゃいますよ」
冗談めかしながらそう言うが、リーガルさんは消化不良のような表情を崩さない。
そんなリーガルさんを見かねたのか、ソフィアが何か彼へと耳打ちをする。
「ね? それでどうです?」
「うーむ。まあそれしかなさそうだねぇ……」
何を言っているのかは聞こえなかったが、話を聞き終えたリーガルさんはとりあえず納得したようだ。
「よし、じゃあアイラに二人が来た事を伝えてくるから、奥の部屋ででも待っててくれ」
「はい、わかりました」
「失礼します」
リーガルさんは自分たちを店の奥へと案内すると、そう言ってアイラを呼びに行ったので、ソフィアについてさらに奥にある中庭を突き進み、居住空間と思わしき家の中にある一室へと入ってアイラを待つ。
途中に大きな弦楽器が置いてあったが、ひょっとしたら店に入った時に流れていたあの曲はリーガルさんが弾いていたのかも知れない。
(ゆったりお茶でもしながら聴きたい様な曲だったよなぁ……)
そんな事を考えているとアイラがやってきたので、軽く挨拶を交わして適当にしゃべりながら、サキトが来るのを待つのであった。
「いらっしゃいませ――おや? 朝から来客かと思ったらソフィアちゃんじゃないか。ああ、そういえばアイラが今日は朝から待ち合わせてると言っていたな」
「あっ、リーガルおじさん! おはようございます!」
見た目四十代程の薄い金髪のその男性は、親し気にそう口にしながらこちらへと歩いてくる。
ちなみにではあるが、今のは色の話であって別に頭髪の量について薄いと感じたわけではない。
男性の身長が高めなために彼の頭頂部を確認できないが、きっとふさふさしているだろう。
(ん?)
唐突にキュウがふわふわと空中に浮いて高度を上げたかと思うと、すぐに高度を下げて肩へと乗ってきた。
『ちょっと怪しい感じだったよ』
「お、おう……」
わざわざ確認しなくても良かったのだが――というより、そうなってくるとまるでそういう意図をもって"薄い"と思ったみたいではないか。
そんな意図は断じて無い。
無いったら無いのだ。
『無いの?』
「無いよ!」
「ん? どうかしたんですかタケルくん?」
「えっ!? いや! な、何でもないよ!」
思わずツッコミを入れてしまったが、キュウの言葉は自分にしか伝わっていないので、傍から見れば一人で突然騒ぎ出したヤバい奴だ。
いや、伝わっていたらそれはそれで問題なのだが――
「『タケルくん』? ……という事はまさか、君が!」
ソフィアと親し気に話していた男性が何かに気が付いた様子で、凄い勢いでこちらに近づいてくると、両手を握られて激しく握手をされた。
「いやぁ! 娘から話は聞いているよ! 本当に、本っ当にありがとう! 感謝してもしきれないよ! 本当に、娘たちを助けてくれてありがとう!」
男性は涙目になりながらそう感謝を述べてくる。
両手は少し痛い程に握られているが、その分だけ彼の想いが籠っている様にも感じられて、温かい気持ちになってくる。
話から察するにこの男性はたぶん――
「おっと、自己紹介がまだだったね。私はアイラの父親の『リーガル・グランツ』という者だ」
やはりアイラの父親のようだ。
顔立ちは少し違うが、髪の色や透き通る様な空色の瞳などは紛れもなく彼からの遺伝だろう。
「一応、グランツ商会の会長をしていてね。帝都は初めてなんだよね? だったらきっと隣にあるショッピングモールは楽しんでもらえると思うよ。是非とも見てまわってみてくれ。立場上あまりこういう事は言ってはならないのだが、何か困った事が起こった場合は是非とも力にならせて欲しい。しがない一人の商人だが、この辺りにはそれなりに顔が利くからね」
どことなく面倒見が良さそうな雰囲気も、アイラそっくりである。
正直、端まで歩くだけで数分かかる様な規模のあのお店の主には見えないが、ソフィアも然り、肩書なんてその人の本質には関係の無いものなのだろう。
「えっと、その、お気持ちは嬉しいんですけど、お礼とかそういうのは全然気にしなくても大丈夫ですよ」
「いや、しかしだね……」
自分はもう十分過ぎる程にたくさん貰っているのだと、どうやって伝えたものかと思っていると、ソフィアがリーガルさんを説得する様に語りかける。
「リーガルおじさん、良いんです。――タケルくんはそういう人なので。その辺りは本当に強情なんですよ?」
「ああ、そういえばアイラがそんな事も言っていたなぁ……。親としては娘の命を助けてくれた人に何もお礼をしないだなんて不義理な事はしたくは無いんだがなぁ……」
そう言われるとどうも弱るが、自分はもう十分過ぎる程に得ているのだ。
「さっきの感謝の言葉だけでももう、胸がいっぱいなんです。これ以上貰ってしまうと胸やけしちゃいますよ」
冗談めかしながらそう言うが、リーガルさんは消化不良のような表情を崩さない。
そんなリーガルさんを見かねたのか、ソフィアが何か彼へと耳打ちをする。
「ね? それでどうです?」
「うーむ。まあそれしかなさそうだねぇ……」
何を言っているのかは聞こえなかったが、話を聞き終えたリーガルさんはとりあえず納得したようだ。
「よし、じゃあアイラに二人が来た事を伝えてくるから、奥の部屋ででも待っててくれ」
「はい、わかりました」
「失礼します」
リーガルさんは自分たちを店の奥へと案内すると、そう言ってアイラを呼びに行ったので、ソフィアについてさらに奥にある中庭を突き進み、居住空間と思わしき家の中にある一室へと入ってアイラを待つ。
途中に大きな弦楽器が置いてあったが、ひょっとしたら店に入った時に流れていたあの曲はリーガルさんが弾いていたのかも知れない。
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