アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

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第二章 軍属大学院 入学 編

91.それでも肩書は偉大-Ⅰ

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「よお! 待たしちまったみてぇだな」

「ああ、おはようサキト」

「おはようございますサキトくん」

 アイラの家のリビングと思わしき部屋でソフィアとアイラと共に談笑をしていると、部屋の扉からリーガルさんに連れられてサキトが入ってきたので自分とソフィアはサキトと挨拶を交わす。

「おっそいわよサキト! 今何時だと思ってんの!」

「え……? 九時ちょうどくらいじゃねぇのか……?」

「時間通りね」

「じゃあ別にいいじゃねぇか! 時間間違えたかと思ったじゃねぇか……」

 アイラだけは普通に挨拶を交わすのではなく、冗談めかしてサキトをからかった。
 きっとこれがアイラなりのサキトに対する挨拶なのだろう。
 この数日でわかった事ではあるが、アイラは少々人をからかうのが好きなようだ。
 と言っても、それは決して人を不快にさせる様な性質のものでは無いと感じられる。
 それはきっと、彼女の人の好さあっての事なのだとは思うが、それ故にか彼女は自身がからかわれる事にあまり慣れていないようなのだ。

「五分前には行動しなさいって事よ。タケルとソフィアなんて三十分前行動だったわよ?」

「ま、マジかよ……。流石にそれは早すぎねぇか……?」

「うん、僕も正直早すぎるかなとは思ってたんだ。ごめんねアイラ」

「えっ!? 早すぎましたか? 私はいつもこれくらいなんですけど……ご、ごめんねアイラちゃん……」

 なのでこの様に冗談が通じていないかの様に振る舞うと――

「なっ!? べ、別に謝る事なんてないわよ!? 早い分には悪い事なんてないし! ね、ねえそうよねパパ!」

「ああ! 商人っていうのは信用が命だからね。時間に遅れるような事があってはならないから、早いに越したことはないよ」

 こうして取り乱してしまうのだ。
 なんだかリーガルさんとアイラの話が少しだけ噛み合っていない様な気がしないでもないが、まあ本質的には同じだと言いたいのであろう。
 というよりも、ソフィアが若干素でへこんでいた様に見えたのだが気のせいだろうか。
 一応フォローを入れておこう。

「あからさまに早すぎは良くない事もあるかもしれないけど、三十分くらいなら大丈夫だと思うよ?」

「そ、そうですよね! 大丈夫ですよね! ……あれ? でもタケルくんさっき早すぎるって――」

「――さて! サキトも来たことだし、早速案内してもらおうかな!」

 どうやら本気で気にしていた様だ。
 自分の発言の矛盾にソフィアが気付きそうになっていたので急いで話を逸らす。
 ソフィアは不思議そうな表情をしばらくしていたが、とりあえず納得した様である。
 自分でやっておいて何ではあるが、彼女が悪い人に騙されたりしないか少々心配だ。
 そんな心配をしながら座っていたソファから立ち上がろうとすると、アイラがそれを制止してくる。

「ああちょっとまってタケル! 先に渡しておきたい物があるの」

「へ? 渡しておきたい物?」

 いったい何であろうか。
 帝都観光のパンフレットとかだろうか。
 そんな別に今渡されなくても良いものを的外れに予想していた自分を余所にアイラは自身のアイテムバッグの中を漁り、そして中から一つの黒い箱を取り出した。
 手のひらサイズのその箱は革製であり、明らかに高い物が入っていそうである。
 少なくともパンフレットで無い事は確かだろう。

「え、えーっと……それは?」

「タケルが欲しいって言ってた腕時計よ!」

 なるほど、腕時計が入っているのならば何だか高級そうな箱に入っているのもある程度納得ができる。
 ちゃんとした腕時計なんて買った事は愚かまともに見た事すら無いが、きっとちゃんとした店で扱われる物はちゃんとした箱に入っているものなのだろう。
 恐る恐ると、それこそ薄氷にでも触れるかのようにその箱を両手で受け取る。
 想像以上に箱はずっしりとしており、素人丸出しの自分にはそれだけでも高級そうだと感じられてしまう。
 そんな自分を見かねたのかアイラが苦笑気味に話しかけてくる。

「そんなに緊張しなくても、入ってるのはただの腕時計よ。なんであの枝をあんな風に扱えるのにこんなのでそんなに緊張してるのよ……」

 一応リーガルさんがいるのでぼかしながら言ってくれている様だが、"あの枝"とはピカレスの枝――香木くんの事だろう。
 アイラたちからすればよっぽど香木くんの方が高級品なのだろうが、自分にとっては香木くんは香木くんである。
 香木くんを扱うのに緊張も何も無いのだ。
 それにひきかえこの黒光りする革製の箱は全くもって得体が知れない。
 よっぽど緊張してしまうのも仕方がないではないか。
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