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第二章 軍属大学院 入学 編
99.長年の片思い-Ⅲ
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そうしてラグルスフェルト居住区画を出てからしばらく、大通りを城に向かって真っすぐ進んでいたところで、大事な事を伝え忘れていた事を思い出した。
「ああそういえば、僕も昨日軍属大学院の入学試験合格したんだ。すっかり伝え忘れてたや」
「おお! そりゃめでてぇ! まあ当然だよな。ってか試験受けたんだな。どんな試験だったんだ?」
「おめでとうございます! タケルくんなら試験は受けなくても良いと思ってましたけど、ひょっとして面接試験とかですか?」
「あら、おめでとう。まあタケルで不合格だったら私たちも正直怪しいものね。寧ろ合格してくれてないと困るわよ」
三者三葉に祝辞を述べてくれるが、三人とも自分に対する評価が良すぎやしないだろうか。
「えーとね。ティストさんっていう軍属大学院の学院長の人がちょうど僕のこれから暮らす家に来てね。その人に戦闘試験をしてもらったんだ。今朝『合格に決まってんだろ!』って言われたけど、試験中は殺されかけたりしたから正直不合格かと思ってたよ」
今思えば面接試験も兼ねていた様な気もするが、まあそんな細かい所まではいいであろう。
というよりも、まさか自分でもこんなに朗らかに「殺されかけた」なんて言えるとは思ってもいなかった。
本当に合格していて良かったし、改めて生きていて良かったと思う。
しかし、そんな気軽な自分の言葉とは裏腹に、三人は足を止めて唖然としていた。
流石に「殺されかけた」はヘビー過ぎただろうか。
三人だって今回の試験で死にかけたのだからどっこいどっこいと言った所だと思うのだが。
寧ろ自分にはハヴァリーさんやテッチがついていただけマシまである。
そんな三人を見て不思議に思っていると、次々に復活した三人が慌て気味に問い詰めてくる。
「てぃ、ティスト様に試験して貰ったって本当なのタケル!?」
「ど、どんな試験だったんだ? その……どんな試験だったんだ!?」
「てぃ、ティスト様……そ、それよりも『殺されかけた』って大丈夫なんですかタケルくん!?」
殺されかけた事について心配してくれているのがソフィアだけな辺りに何となく寂しさを感じるが、きっとアイラとサキトにとってティストさんの試験を受けたという事がそれほどの衝撃だったのだろう。
薄々予想はしていたが、やはりティストさんは有名人の様だ。
あれだけ強くて、軍属大学院の学院長までしているのだ。
軍人界隈である程度有名であってもおかしくはない。
というよりサキトに関しては前の質問も合わせれば同じ質問を三回繰り返しているのだが、本人は気が付いているだろうか。
「殺されかけただけで結果的にはほぼ無傷だから大丈夫だよ。みんな驚いてるけど、ティストさんってそんなに有名なの?」
「有名ってタケルあんたなんて恐れ多い事を……。まああんたの状況考えたら知らなくて当然といえば当然か……。サキト、説明してあげなさい」
「へへっ仕方ねぇな! よーく聞いとけよタケル! ティスト様ってのはな、銀将様のただ一人の正当な弟子にして、現在の軍序列第二位に君臨し、黄金の槍を自在に操る様とその師の呼び名にちなんで『金将』の二つ名で親しまれ、その圧倒的な強さと可憐さから軍の顔として帝国全土で人気を博するお方なのだ!」
「……可憐?」
「って軍が配布するパンフレットに書かれてるんですよ」
サキトらしからぬ言い回しと内容に疑問を抱いていると、ソフィアが苦笑しながらそう付け加えてきた。
その様子から察するに、恐らくソフィアだけは本来のティストさんを見たことがあるのだろう。
確かに顔立ちは整っているとは思うが、あの物言いや態度から『可憐』だなんてイメージは湧くはずもない。
というより、よくそんなパンフレットの発行をあのティストさんが認めたものだと驚きすら感じる。
「ん? というか軍序列って何?」
「軍の中で何番目に強いかって指標よ。まあ実質的に世界で何番目に強いかって言っても過言ではないわよ!」
「えっと……つまりティストさんって世界で二番目に強いの?」
「第一位のルノアルド様が魔法主体の戦闘スタイルだから、近接戦闘ならたぶん世界一位だぜ! 憧れるよな! ったく羨ましいったらないぜ」
アイラも大概ではあるが、サキトの目の輝かし様が尋常ではない。
恐らくそういう英雄譚的な物が大好きなのだろう。
それこそパンフレットに書かれている事を丸暗記してしまう程に。
そりゃあどんな試験だったか気になるわけだ。
(でもだとすると、やっぱり想像を遥かに上回る程に手加減してくれてたんだよな……)
近接戦闘において世界一強いらしい人と自分がまともにやりあえば、寸毫の間も無く打倒される事は火を見るよりも明らかである。
死ぬだの殺すだの色々吐いてはいたが、やはり紛れもなく『優しい優しい姉弟子様』のようだ。
(でも世間様に偽りの姿を広めているのはよろしくないな。今度会ったら一言物申しておこう)
そんな決意を胸に秘めつつ、軍属大学院へと再び歩を進め始める。
途中サキトがどうしてもと言うので試験の内容を説明したら、再びソフィアに心配されたのはまた別の話だ。
「ああそういえば、僕も昨日軍属大学院の入学試験合格したんだ。すっかり伝え忘れてたや」
「おお! そりゃめでてぇ! まあ当然だよな。ってか試験受けたんだな。どんな試験だったんだ?」
「おめでとうございます! タケルくんなら試験は受けなくても良いと思ってましたけど、ひょっとして面接試験とかですか?」
「あら、おめでとう。まあタケルで不合格だったら私たちも正直怪しいものね。寧ろ合格してくれてないと困るわよ」
三者三葉に祝辞を述べてくれるが、三人とも自分に対する評価が良すぎやしないだろうか。
「えーとね。ティストさんっていう軍属大学院の学院長の人がちょうど僕のこれから暮らす家に来てね。その人に戦闘試験をしてもらったんだ。今朝『合格に決まってんだろ!』って言われたけど、試験中は殺されかけたりしたから正直不合格かと思ってたよ」
今思えば面接試験も兼ねていた様な気もするが、まあそんな細かい所まではいいであろう。
というよりも、まさか自分でもこんなに朗らかに「殺されかけた」なんて言えるとは思ってもいなかった。
本当に合格していて良かったし、改めて生きていて良かったと思う。
しかし、そんな気軽な自分の言葉とは裏腹に、三人は足を止めて唖然としていた。
流石に「殺されかけた」はヘビー過ぎただろうか。
三人だって今回の試験で死にかけたのだからどっこいどっこいと言った所だと思うのだが。
寧ろ自分にはハヴァリーさんやテッチがついていただけマシまである。
そんな三人を見て不思議に思っていると、次々に復活した三人が慌て気味に問い詰めてくる。
「てぃ、ティスト様に試験して貰ったって本当なのタケル!?」
「ど、どんな試験だったんだ? その……どんな試験だったんだ!?」
「てぃ、ティスト様……そ、それよりも『殺されかけた』って大丈夫なんですかタケルくん!?」
殺されかけた事について心配してくれているのがソフィアだけな辺りに何となく寂しさを感じるが、きっとアイラとサキトにとってティストさんの試験を受けたという事がそれほどの衝撃だったのだろう。
薄々予想はしていたが、やはりティストさんは有名人の様だ。
あれだけ強くて、軍属大学院の学院長までしているのだ。
軍人界隈である程度有名であってもおかしくはない。
というよりサキトに関しては前の質問も合わせれば同じ質問を三回繰り返しているのだが、本人は気が付いているだろうか。
「殺されかけただけで結果的にはほぼ無傷だから大丈夫だよ。みんな驚いてるけど、ティストさんってそんなに有名なの?」
「有名ってタケルあんたなんて恐れ多い事を……。まああんたの状況考えたら知らなくて当然といえば当然か……。サキト、説明してあげなさい」
「へへっ仕方ねぇな! よーく聞いとけよタケル! ティスト様ってのはな、銀将様のただ一人の正当な弟子にして、現在の軍序列第二位に君臨し、黄金の槍を自在に操る様とその師の呼び名にちなんで『金将』の二つ名で親しまれ、その圧倒的な強さと可憐さから軍の顔として帝国全土で人気を博するお方なのだ!」
「……可憐?」
「って軍が配布するパンフレットに書かれてるんですよ」
サキトらしからぬ言い回しと内容に疑問を抱いていると、ソフィアが苦笑しながらそう付け加えてきた。
その様子から察するに、恐らくソフィアだけは本来のティストさんを見たことがあるのだろう。
確かに顔立ちは整っているとは思うが、あの物言いや態度から『可憐』だなんてイメージは湧くはずもない。
というより、よくそんなパンフレットの発行をあのティストさんが認めたものだと驚きすら感じる。
「ん? というか軍序列って何?」
「軍の中で何番目に強いかって指標よ。まあ実質的に世界で何番目に強いかって言っても過言ではないわよ!」
「えっと……つまりティストさんって世界で二番目に強いの?」
「第一位のルノアルド様が魔法主体の戦闘スタイルだから、近接戦闘ならたぶん世界一位だぜ! 憧れるよな! ったく羨ましいったらないぜ」
アイラも大概ではあるが、サキトの目の輝かし様が尋常ではない。
恐らくそういう英雄譚的な物が大好きなのだろう。
それこそパンフレットに書かれている事を丸暗記してしまう程に。
そりゃあどんな試験だったか気になるわけだ。
(でもだとすると、やっぱり想像を遥かに上回る程に手加減してくれてたんだよな……)
近接戦闘において世界一強いらしい人と自分がまともにやりあえば、寸毫の間も無く打倒される事は火を見るよりも明らかである。
死ぬだの殺すだの色々吐いてはいたが、やはり紛れもなく『優しい優しい姉弟子様』のようだ。
(でも世間様に偽りの姿を広めているのはよろしくないな。今度会ったら一言物申しておこう)
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