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第二章 軍属大学院 入学 編
100.掟通りの地元歩き-Ⅰ
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大通りをしばらく進み、城がより一層大きく見えてきた辺りで、前を行くサキトたちが唐突に右折し、民家と民家の間にある細めの路地へと入って行ったので後に続く。
路地には馬車が通れる様な幅は無く、昼時が近いにも関わらず左右に並ぶ建物のせいで陽光があまり入ってこないためか薄暗い。
しかし、何故か陽当たりの悪い場所特有のジメジメとした空気は感じられない。
あの屋敷の結界内が特殊であったのかもしれないが、花畑の花々には朝露が降りていたので、帝都の気候が特別空気の乾燥したものだという事はないはずだ。
特に風も感じないので、風通しが良いからとも考えにくい。
(快適なのは良いんだけど……なんでだろう?)
不思議に思っていると前方から小さな子供たちの楽し気な笑い声が聞こえてきた。
何やら小さなボールを魔法で打ち返しあって遊んでいるようだ。
なるほど、大きな通りは人も馬車も交通量が多く子供が遊ぶには危険であるため、この様な路地が遊び場になっているのだろう。
それならばもしかすると、子供たちが快適に過ごせるようにと何かしら路地に魔法的な処理がなされているのかもしれない。
狭いとはいえ子供たちが遊べるような広さの路地で、どこまで続いているかはわからないが、それなりな距離もあるだろう。
ましてや屋外だ。
そんな路地全体を除湿出来るような設備を作れば、膨大な資金がかかりそうについ考えてしまう。
しかし、個人的な感覚であるが、魔法は″適度″な調整は難しいが″極度″な調整は簡単だ。
なので魔法を使えばそれほどコストがかからないのかもしれない。
この辺りの仕組みについても、ぜひ軍属大学院で学びたいものだ。
「あっ!?」
そんな事を考えていると、子供の一人が焦りを含んだ声をあげた。
何事かと視線を追ってみると、遊んでいた小さなボールが横の建物の屋根よりもだいぶ高い位置を大通りに向かって飛んでいっている。
恐らく魔法の力加減を盛大に間違えたのだろう。
慌てて別の子供がこちら――大通りに向かって走り出すが、『細い路地から突然子供が飛び出す』だなんて正に不幸な事故の原因であるわけで――
「ッ――」
咄嗟に飛ぶボールの前方にポルテジオを垂直に展開して止め、落下し始めたボールに対して今度は斜めにポルテジオを展開して自分の方へと滑らせる。
そうして向かってきたボールをキャッチしようかと思った時、それよりも先に両手の人差し指を立てたアイラがボールをお手玉でもするかの様にトントンと指先から出した衝撃を発生させる魔法で弾いて子供たちの方へと飛ばした。
上手いものである。
大通りに向かって走っていた子供は、サキトが両脇を抱えて持ち上げて止めており、子供たちは一様に今一状況が理解できず呆けていた。
「『パートン』をするなら、危ないですからもっと奥か公園みたいな広い場所でやらないとダメですよ」
ソフィアが優しくそう言うと、我に返った子供たちは各々頷くとボールを拾ってから路地の奥の方へと走り去っていった。
どうやらこのボールを魔法で打ち合う遊びの事をパートンと言う様だ。
アイラのこなれた様子から察するに、きっとこの世界での定番の遊びなのだろう。
「ほれ、お前も危ねぇからもう大通りに飛び出そうとしたりすんなよ」
「うん、ごめんなさい……」
持ち上げていた子供をサキトが注意しながら地面へ下すと、子供は素直に反省して一礼してから友人らを追いかけて路地の奥へと走っていった。
その後ろ姿を眺めながら、何やらサキトが感慨深げな笑みを浮かべる。
「どうかしたのサキト?」
「ん? いや、兄貴が昔『どんな力でも結局は使いようなんだ』って言ってたんだけどよ。タケルのシエラの使い方見てっと確かにその通りだなって思ってな」
自分の問いかけにそう答えたサキトは、一拍呼吸を置いてさらに続ける。
「案外シエラってのは魔物と渡り合うためだけの力じゃねぇのかもな……」
「何よサキト、あんたが女神様の教えに異を唱えるなんて。神官様にでも聞かれたら大目玉くらうわよ?」
「別に異を唱えるって程じゃねぇよ。ただ、兄貴の言ってた意味が何となくわかったっていうかな……。魔物を倒す力が欲しいって毎日心の底から願ってもシエラが発現しねぇのは、俺が何か思い違いをしてるからじゃねぇのかなってな」
どうやらサキトは先ほどの魔物との戦闘とは程遠いポルテジオの使い方を見て、何か思う所があったようだ。
確かおじいちゃんも最初の頃にシエラについて自分にそんな説明をしてくれたが、女神様の教えとやらを知らない自分からすれば、きっかけが魔物であっただけで別にシエラが『魔物と渡り合うためだけの力』などとは露程も思わない。
そんな事を言い出したらエフィさんの『素材の味を引き出すシエラ』なんていったいどうやって魔物と渡り合うというのだろうか。
しかし、話を聞く限りあまりこの考えは口外をしない方が良さそうなので、当たり障りのなさそうな質問をサキトへとしてみる。
路地には馬車が通れる様な幅は無く、昼時が近いにも関わらず左右に並ぶ建物のせいで陽光があまり入ってこないためか薄暗い。
しかし、何故か陽当たりの悪い場所特有のジメジメとした空気は感じられない。
あの屋敷の結界内が特殊であったのかもしれないが、花畑の花々には朝露が降りていたので、帝都の気候が特別空気の乾燥したものだという事はないはずだ。
特に風も感じないので、風通しが良いからとも考えにくい。
(快適なのは良いんだけど……なんでだろう?)
不思議に思っていると前方から小さな子供たちの楽し気な笑い声が聞こえてきた。
何やら小さなボールを魔法で打ち返しあって遊んでいるようだ。
なるほど、大きな通りは人も馬車も交通量が多く子供が遊ぶには危険であるため、この様な路地が遊び場になっているのだろう。
それならばもしかすると、子供たちが快適に過ごせるようにと何かしら路地に魔法的な処理がなされているのかもしれない。
狭いとはいえ子供たちが遊べるような広さの路地で、どこまで続いているかはわからないが、それなりな距離もあるだろう。
ましてや屋外だ。
そんな路地全体を除湿出来るような設備を作れば、膨大な資金がかかりそうについ考えてしまう。
しかし、個人的な感覚であるが、魔法は″適度″な調整は難しいが″極度″な調整は簡単だ。
なので魔法を使えばそれほどコストがかからないのかもしれない。
この辺りの仕組みについても、ぜひ軍属大学院で学びたいものだ。
「あっ!?」
そんな事を考えていると、子供の一人が焦りを含んだ声をあげた。
何事かと視線を追ってみると、遊んでいた小さなボールが横の建物の屋根よりもだいぶ高い位置を大通りに向かって飛んでいっている。
恐らく魔法の力加減を盛大に間違えたのだろう。
慌てて別の子供がこちら――大通りに向かって走り出すが、『細い路地から突然子供が飛び出す』だなんて正に不幸な事故の原因であるわけで――
「ッ――」
咄嗟に飛ぶボールの前方にポルテジオを垂直に展開して止め、落下し始めたボールに対して今度は斜めにポルテジオを展開して自分の方へと滑らせる。
そうして向かってきたボールをキャッチしようかと思った時、それよりも先に両手の人差し指を立てたアイラがボールをお手玉でもするかの様にトントンと指先から出した衝撃を発生させる魔法で弾いて子供たちの方へと飛ばした。
上手いものである。
大通りに向かって走っていた子供は、サキトが両脇を抱えて持ち上げて止めており、子供たちは一様に今一状況が理解できず呆けていた。
「『パートン』をするなら、危ないですからもっと奥か公園みたいな広い場所でやらないとダメですよ」
ソフィアが優しくそう言うと、我に返った子供たちは各々頷くとボールを拾ってから路地の奥の方へと走り去っていった。
どうやらこのボールを魔法で打ち合う遊びの事をパートンと言う様だ。
アイラのこなれた様子から察するに、きっとこの世界での定番の遊びなのだろう。
「ほれ、お前も危ねぇからもう大通りに飛び出そうとしたりすんなよ」
「うん、ごめんなさい……」
持ち上げていた子供をサキトが注意しながら地面へ下すと、子供は素直に反省して一礼してから友人らを追いかけて路地の奥へと走っていった。
その後ろ姿を眺めながら、何やらサキトが感慨深げな笑みを浮かべる。
「どうかしたのサキト?」
「ん? いや、兄貴が昔『どんな力でも結局は使いようなんだ』って言ってたんだけどよ。タケルのシエラの使い方見てっと確かにその通りだなって思ってな」
自分の問いかけにそう答えたサキトは、一拍呼吸を置いてさらに続ける。
「案外シエラってのは魔物と渡り合うためだけの力じゃねぇのかもな……」
「何よサキト、あんたが女神様の教えに異を唱えるなんて。神官様にでも聞かれたら大目玉くらうわよ?」
「別に異を唱えるって程じゃねぇよ。ただ、兄貴の言ってた意味が何となくわかったっていうかな……。魔物を倒す力が欲しいって毎日心の底から願ってもシエラが発現しねぇのは、俺が何か思い違いをしてるからじゃねぇのかなってな」
どうやらサキトは先ほどの魔物との戦闘とは程遠いポルテジオの使い方を見て、何か思う所があったようだ。
確かおじいちゃんも最初の頃にシエラについて自分にそんな説明をしてくれたが、女神様の教えとやらを知らない自分からすれば、きっかけが魔物であっただけで別にシエラが『魔物と渡り合うためだけの力』などとは露程も思わない。
そんな事を言い出したらエフィさんの『素材の味を引き出すシエラ』なんていったいどうやって魔物と渡り合うというのだろうか。
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