アポロの護り人 ―異世界夢追成長記―

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第二章 軍属大学院 入学 編

101.掟通りの地元歩き-Ⅱ

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「サキトはそんなに早くシエラを発現させたいの? サキトの身体強化って学校で一番なくらいに凄いんでしょ?」

 正直昨日の試験を受けた後だと、サキト程の身体強化の練度があればそれほど――それこそ毎日心の底から願う程に力を欲する必要は無いと思うのだ。
 しかしサキトはそんな自分の質問に一切考える間も無く返答する。

「そりゃあ発現させてぇよ! 俺にもしシエラがあれば、この前の試験だってあんな目に遭わずに済んだかもしれねぇんだ……」

 そう言われると確かにそうだとは思う。
 事実、ポルテジオがなければ恐らく自分は三人を助ける事は出来なかっただろう。
 護るための力を得られたという、その点に関してはシエラが発現してくれた事を本当に嬉しく思う自分がいる。
 しかし、おじいちゃんからシエラが発現して寿命が延びる事によって起こる弊害を聞いているために、決して良い事ばかりとは思えない自分もいるのだ。

「……アイラとソフィアも、シエラを発現させたいって思う?」

 そんな自分の質問に、アイラとソフィアは軽く苦笑しながら答える。

「そうねぇ……。私は今までそれほど力が欲しいって思った事は無かったわ。でもそれって、この前程自分の無力を呪った事が無かったからなのよね……。正直もうあんな目に遭うのは二度と御免だけど、もし遭っちゃった時のために欲しいとは思っちゃうわよね」

「私もアイラちゃんやサキトくんと同じですかね。まあどうやったら発現できるのかはさっぱり何ですけど……」

「そっか……そうなんだ」

「何よタケル、なんか嬉しそうね」

「え? そ、そう?」

 正直に言おう。
 サキトに対して「焦る必要は無いのでは」などと考えてはいるが、自分はいつかはこの三人全員にシエラが発現してほしいと願っている。
 このまま自分だけが長い時を生き、三人と早々に別れるような事態になるのが嫌なのだ。
 しかしそれは、現状この世界に知り合いの殆どいない自分だから出来てしまう極めて利己的な考えだ。
 彼らには彼らの家族や友人がいて、それぞれの人生が待っている。
 まさか口が裂けても、「僕のためにシエラを発現してくれ」だなんて言えるわけもないし、言った所でどうこうなる問題でもない。
 だからせめて確認しておきたかったのだ。
 別れの時を先延ばしに出来る可能性があるのかどうかを。

「なあタケル、なんかシエラを発現させるコツとかって無ぇのか?」

「コツって言われてもなぁ……」

 再び歩きだしたサキトについて歩きながら考える。
 心当たりがある事と言えば、自分の強い意志と状況が噛み合ったという事ぐらいであるが、あの時――サキトたちを助けに森の中を全速力で飛んでいた時に心に流れ込んできた感情がサキトたちのものであったのならば、サキトたちにも発現していてもおかしくは無いはずだ。

(――あれ? というよりも……)

 そもそも感情が流れ込んでくるあの感覚はいったい何なのであろうか。
 あれも攻撃を感知する能力と同じ様にシエラの能力と考えるのが比較的自然だが、だとしたらポルテジオとはいったいどういう力なのだろうか。
 自分がポルテジオについてわかっている事と言えば『護るための力』という事だけだ。

(盾自体はもう自由に展開できるし、攻撃の感知は攻撃されれば勝手に発動するけど……あれは本当に突発的だよな……?)

 盾や感知は攻撃から身を護るための力だとすると、感情が流れ込んでくるのは何を護るための力なのだろうか。

(というかあれが発動した時ってどっちかって言うと精神的にダメージを受けてる様な……。でも護るための力なんだよな……?)

「い、いやタケル? 別に無いならいいんだぜ?」

「……へ? 何が?」

「え? いや、シエラを発現させるコツだよ」

「――ああっ、いや、うん。……ごめん、思いつかなかったや」

 サキトの言葉にハッとする。
 そういえばそれの話をしていたのであった。
 また思考が脱線してしまっていたようだ。
 まったく厄介な癖である。

『治すんじゃなかったの?』

 テッチの背に乗るキュウからじっとりとした視線が飛んでくる。

「そ、そのうちな」

 癖とは簡単に治せないからこそ癖なのだ。
 しかしそれはつまり、時間をかければ治すことができるのだという裏付けでもある。

(うん、大丈夫。いつかは治る)

『ふーん……』

 キュウの視線の湿り気が増した気がするがきっと気のせいだろう。

「そ、そういえばどうしてこの路地に入ったの? もしかして軍属大学院ってこの路地に……?」

 話を変えるために気になっていた事を聞いてみると、アイラが答えてくれる。

「ああ、この路地はただの抜け道よ。大きな通りは馬車も多いし、信号待ちもあるから、この道通った方が早く着くの。タケルも覚えとくといいわよ!」

 なるほど、地元民ならではの順路というわけだ。
 正直人混みはそこまで得意ではないので、是非とも活用させてもらおう。
 そうしてたまに分岐する路地をしっかりと記憶しながら、たまに見かける無邪気な子供たちを横目にしばらく進むと、前方に明るい路地の出口が見えてきた。
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