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第二章 軍属大学院 入学 編
116.良薬は口に苦いし酸っぱいし-Ⅱ
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酸素を追い求める様に、ひたすらに深い呼吸を繰り返す。
冷や汗はとめどなく流れ落ち、自制を無くしたかの様な口元にも遠慮なく入ってくるが、それを拭うのさえ忘れてひたすらに呼吸する。
「ぷはっ……ゲホッ……おぇ……」
「はぁ……良かった……。ほら、これを飲んで……」
呼吸が幾分か落ち着き、少し嘔吐き出した所で、傍にいる女性から水筒を差し出された。
「おぶぇ、ありばぼうぼぼ、ぶぉふ」
お礼を言おうとする意識と、早く水分を得ようとする肉体とがせめぎ合い、浴びるように飲んだ水が口元から溢れ出して垂れ落ちる。
「い、いいから、ゆっくり飲んで……!」
気を使ってくれたのかそんな言葉をかけてくれた。
お言葉に甘えて飲むのに集中をする。
「う、うっぷ……。ありがとうございま……あっ……」
全部飲み干した所で失態に気が付く。
いや、失態と言えば先ほどからの一連の全てが失態なのだが。
(なに人の物を全部飲み干してんだ僕は……!?)
厚意に甘えるままに全部飲み干してしまったという事実に再び冷や汗を流していると、その女性は少し抑揚の少なめな声で話しかけてきた。
「ふふっ……気にしなくていいよ。まだ余分に持ってきてるから」
「す、すみません……。ってあれ?」
ここに来てようやく気が付いたのだが、先ほどから自分を介抱してくれていたその女性は、ハルカさんであった。
「……?」
「あ、いえ、何でもないです。水、ありがとうございます」
自分の反応に不思議そうにするハルカさんに、とりあえず水のお礼を言う。
いや、そもそもこの空間には自分以外にはリオナさんとハルカさんしかいないので、リオナさんでないならばハルカさんでしかありえない。
(でも、何だかさっきと印象が違う様な……? 微妙に話し方に抑揚がついたというか、感情が籠っているというか……?)
自分が戸惑っていると、この空間にいるもう一人であるところのリオナさんが話しかけてくる。
「いやぁ良かった良かった。ありがとうねハルカちゃん♪」
「軽すぎですリオナ先生。処置が遅れていれば死んでいたかもしれないんですよ?」
「えっ!? しっ、死!?」
突然の事実宣告に驚愕を隠し切れない。
「ごめんねぇ。何だか余裕がありそうだったからちょっと長めにやってみようって思ったらやりすぎちゃったみたいで」
リオナさんは「テヘッ♪」とでも擬音が付きそうな態度で謝罪してくる。
それを聞いて、だんだんと記憶が蘇ってきた。
「た、確かに十秒たってもなかなか終わらなくって……」
突然の事態に焦りつつも、少しでも防御を失敗して体勢を崩そうものなら数百単位の魔法の波に晒される事になるので、自分は本当に死に物狂いで防御に徹していた。
しかし、自分の処理能力は本来あの攻撃に十秒程度耐えられる程度にしかない。
長引けば長引くほど負荷は蓄積していき、最後の方は恐らく殆ど意識も無く防御していたのではないだろうか。
「なんだかんだちゃんと防御出来てたから感心してたんだけどね。流石に三十秒くらい経った所で様子がおかしいなって私も気が付いて、魔法を消したらその途端タケル君倒れちゃって……」
(さ、三十秒もやっていたのか……!?)
サキトの帰還を喜んでいた時のあの愛ある姿に、自分はまるで聖母の様だとすら感じていたのに、今は少しばかり悪魔の様だとすら感じてしまう。
なぜ今自分がこうしてまともな思考をしていられるのかがわからないまである。
「……私の見た限りだと、たぶん彼は最後の十秒程は既に意識がありませんでしたよ。首が座ってないみたいに俯いてましたし……」
ハルカさんが衝撃的な事を言ってのける。
無意識に防いでいたのだとすれば凄い事だが、裏を返せば無意識に防げていなければ十秒間で約五百発の魔法に滅多打ちにされていたという事だ、
そうなっていた場合は流石に魔法を消してくれてはいたと思うが、それでも恐ろしい事に変わりはない。
『武……だいじょうぶなの?』
「う、うん……たぶん……」
キュウが心配そうに頬を舐めてくる。
「すっごく集中してるのかと思っちゃって……ごめんねタケル君?」
「いや、まあ無事だったので良いですけど……」
「い、いいのね……」
ハルカさんが表情の乏しいその顔を若干引き攣らせている。
無事でなければ、つまりは死んでいたという事なので、そもそも許す許さないの話ではないが、そもそもこちらがお願いしてこの特訓をしてもらっているのだ。
多少の手違いはあるだろう。
命あっての物種である。
「そういえば、あの凄まじい……おぞましい風味のやつは何ですか……?」
そう、死にかけた事よりも今気になるのはこれである。
いや、死にかけた事も十分重大な事態ではあるのだが、そちらはある程度理解できたから一先ずいいのだ。
「ああ、あれは私の家に伝わる……まあ気付け薬みたいなものよ」
自分の質問に答えたのはハルカさんであった。
確かに気付け薬と言われてみれば、しっくりと来ない事も無い。
あの風味なら死人すら気付けされそうだ。
「意識がなくなったせいか呼吸も殆どしてなかったらしいから、ハルカちゃんが慌てて食べさせたのよ。でも、本当に凄い効き目ねぇ」
通常意識は無くなっても呼吸はするはずなのだが、三十秒にも渡る悪魔の所業はどうやら自律神経にまでも影響を与えてしまった様だ。
冷や汗はとめどなく流れ落ち、自制を無くしたかの様な口元にも遠慮なく入ってくるが、それを拭うのさえ忘れてひたすらに呼吸する。
「ぷはっ……ゲホッ……おぇ……」
「はぁ……良かった……。ほら、これを飲んで……」
呼吸が幾分か落ち着き、少し嘔吐き出した所で、傍にいる女性から水筒を差し出された。
「おぶぇ、ありばぼうぼぼ、ぶぉふ」
お礼を言おうとする意識と、早く水分を得ようとする肉体とがせめぎ合い、浴びるように飲んだ水が口元から溢れ出して垂れ落ちる。
「い、いいから、ゆっくり飲んで……!」
気を使ってくれたのかそんな言葉をかけてくれた。
お言葉に甘えて飲むのに集中をする。
「う、うっぷ……。ありがとうございま……あっ……」
全部飲み干した所で失態に気が付く。
いや、失態と言えば先ほどからの一連の全てが失態なのだが。
(なに人の物を全部飲み干してんだ僕は……!?)
厚意に甘えるままに全部飲み干してしまったという事実に再び冷や汗を流していると、その女性は少し抑揚の少なめな声で話しかけてきた。
「ふふっ……気にしなくていいよ。まだ余分に持ってきてるから」
「す、すみません……。ってあれ?」
ここに来てようやく気が付いたのだが、先ほどから自分を介抱してくれていたその女性は、ハルカさんであった。
「……?」
「あ、いえ、何でもないです。水、ありがとうございます」
自分の反応に不思議そうにするハルカさんに、とりあえず水のお礼を言う。
いや、そもそもこの空間には自分以外にはリオナさんとハルカさんしかいないので、リオナさんでないならばハルカさんでしかありえない。
(でも、何だかさっきと印象が違う様な……? 微妙に話し方に抑揚がついたというか、感情が籠っているというか……?)
自分が戸惑っていると、この空間にいるもう一人であるところのリオナさんが話しかけてくる。
「いやぁ良かった良かった。ありがとうねハルカちゃん♪」
「軽すぎですリオナ先生。処置が遅れていれば死んでいたかもしれないんですよ?」
「えっ!? しっ、死!?」
突然の事実宣告に驚愕を隠し切れない。
「ごめんねぇ。何だか余裕がありそうだったからちょっと長めにやってみようって思ったらやりすぎちゃったみたいで」
リオナさんは「テヘッ♪」とでも擬音が付きそうな態度で謝罪してくる。
それを聞いて、だんだんと記憶が蘇ってきた。
「た、確かに十秒たってもなかなか終わらなくって……」
突然の事態に焦りつつも、少しでも防御を失敗して体勢を崩そうものなら数百単位の魔法の波に晒される事になるので、自分は本当に死に物狂いで防御に徹していた。
しかし、自分の処理能力は本来あの攻撃に十秒程度耐えられる程度にしかない。
長引けば長引くほど負荷は蓄積していき、最後の方は恐らく殆ど意識も無く防御していたのではないだろうか。
「なんだかんだちゃんと防御出来てたから感心してたんだけどね。流石に三十秒くらい経った所で様子がおかしいなって私も気が付いて、魔法を消したらその途端タケル君倒れちゃって……」
(さ、三十秒もやっていたのか……!?)
サキトの帰還を喜んでいた時のあの愛ある姿に、自分はまるで聖母の様だとすら感じていたのに、今は少しばかり悪魔の様だとすら感じてしまう。
なぜ今自分がこうしてまともな思考をしていられるのかがわからないまである。
「……私の見た限りだと、たぶん彼は最後の十秒程は既に意識がありませんでしたよ。首が座ってないみたいに俯いてましたし……」
ハルカさんが衝撃的な事を言ってのける。
無意識に防いでいたのだとすれば凄い事だが、裏を返せば無意識に防げていなければ十秒間で約五百発の魔法に滅多打ちにされていたという事だ、
そうなっていた場合は流石に魔法を消してくれてはいたと思うが、それでも恐ろしい事に変わりはない。
『武……だいじょうぶなの?』
「う、うん……たぶん……」
キュウが心配そうに頬を舐めてくる。
「すっごく集中してるのかと思っちゃって……ごめんねタケル君?」
「いや、まあ無事だったので良いですけど……」
「い、いいのね……」
ハルカさんが表情の乏しいその顔を若干引き攣らせている。
無事でなければ、つまりは死んでいたという事なので、そもそも許す許さないの話ではないが、そもそもこちらがお願いしてこの特訓をしてもらっているのだ。
多少の手違いはあるだろう。
命あっての物種である。
「そういえば、あの凄まじい……おぞましい風味のやつは何ですか……?」
そう、死にかけた事よりも今気になるのはこれである。
いや、死にかけた事も十分重大な事態ではあるのだが、そちらはある程度理解できたから一先ずいいのだ。
「ああ、あれは私の家に伝わる……まあ気付け薬みたいなものよ」
自分の質問に答えたのはハルカさんであった。
確かに気付け薬と言われてみれば、しっくりと来ない事も無い。
あの風味なら死人すら気付けされそうだ。
「意識がなくなったせいか呼吸も殆どしてなかったらしいから、ハルカちゃんが慌てて食べさせたのよ。でも、本当に凄い効き目ねぇ」
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