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第二章 軍属大学院 入学 編
119.似た者同士の励まし合い-Ⅱ
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「スゥッ――はぁ……」
色々と疑問に思いつつも、緊張が緩んだためか一気に体の力が抜け、たまらずその場で腰を下ろしてしまい、しばらくはひたすらに深呼吸を繰り返す事しか出来なくなった。
頭の奥深くから響いてくる様な鈍い痛みはなかなか引いてはくれないが、徐々にはましになってきているのでもうしばらく休憩すれば大丈夫だろう。
(流石に長めの休憩くれるよね……?)
疲れからか声を発するのも億劫なため、前方で胡坐をかいているティストさんに期待と信頼を込めた眼差しを送ってみる。
水筒の中身を煽る様にして飲んでいたティストさんは、自分の視線に気が付くと込められた意思や心情を上手く汲み取ってくれた様で――
「んあ? もう休憩終わりでいいのかよ? まだヘロヘロの癖に本当に欲しがりだなお前」
「い、いや……ちょっと長めに……休憩が欲しいです」
「んだよ。物欲しそうに見てくるからもう特訓のおかわりを要求してきたのかと思ったじゃねぇか」
全く心情を汲んでくれてはいなかった。
目は口程に物を言うというが、流石に何が欲しいかまでは伝わらなかったようだ。
というより、物欲しそうにしていると感じたのならせめて飲み物を欲しがっていると解釈してほしかった。
(疲労時にさらに疲労を求める特訓ジャンキーか何かと思っているのかな……?)
そんな冗談めいた――冗談であってほしい想像をしているうちに、だんだんと呼吸も落ち着いてきたので、自分も水筒を取り出して水分を補給する。
二時間超も動き続けていたのにも関わらず脱水症状などにならないのは、相変わらずな服の機能のおかげで汗だくになるような事が無いからだろう。
個人的には汗だくになる程運動をするのは嫌いではないのだが、そんな状態になった時は大概思考が鈍ってしまうので、冷静な判断を要する先ほどまでのような時には本当にありがたい機能である。
(そういえば、この服にも自動で修復される機能があるけど……同じなのかな……?)
すっかり塞がってしまった床の亀裂があった場所を見ながらそんな事を考える。
すっかり慣れてしまっていたが、よくよく考えれば火にも水にも繊維にもよくわからない材質の床にもなってしまう魔力とはいったい何なのであろうか。
「あの、ティストさん」
「んあ? もう再開してぇのか?」
「いや違いますよ!? どんだけ僕を痛めつけたいんですか!?」
「んだよあの程度で。軟弱な奴だな」
相当頑張ったつもりなのだが、ティストさん基準だとあれだけやっても軟弱らしい。
恐ろしい世界である。
「ってそうじゃなくって……。その、魔力って何なんですか……?」
「んあ? 何って……魔力は魔力だろ? 何が言いてぇんだ?」
「いや、魔力って色々な物になるじゃないですか。火とか水とか、この服も破れたら魔力を使って修復されますし、さっきティストさんが壊した床も元通りに直ったじゃないですか。どうしてなのかなって」
「どうしてって……。この床――ってかこの施設自体は建国した頃にいたイオカラっていう凄ぇ魔法師が作った魔方陣魔法の機能で自動修復されるし、その魔方陣魔法の一部をジジイが解明して作ったのがその服の自動修復機能なわけで……。――だぁぁっ! 私が知るかよそんなもん! ジジイに聞けジジイにっ!」
何とも答えになってない答えを述べると、考えるのが面倒になったのかティストさんがおじいちゃんに丸投げした。
聞けるものなら聞きたいが、流石にこれを聞くためだけに森の家まで数日かけて行くのも面倒くさい。
「あらあら、どうしたんですかティスト様? そんな大きな声をだされて……」
ハヴァリーさんならわかるだろうかなどと考えていると、ティストさんの声を聞きつけたのか、別の場所で何かをしていたリオナさんとハルカ先輩がこちらへと近づいてきた。
ハルカ先輩はわからないが、魔法専門らしいリオナさんなら何か知っているかもしれないので聞いてみる。
「あの、魔力って色々な物になったりしますけど、いったい何なんですか?」
「へ? 色々な物になるって……それが魔力でしょ?」
「だよな? 本当に何が言いてぇんだボウズ? ああ、言っておくが、イオカラの魔方陣魔法を一部でも理解できてるのなんてたぶんこの世にジジイくらいしか居ねぇから、聞いても無駄だぞ」
「ああ、ジジイっていうのはティスト様の師匠のセイル様の事よ――って、流石に知ってるわよね。そもそもタケル君にはティスト様も素で話してるんだから、ティスト様がセイル様の事を本心では凄く尊敬してるけど照れ隠しでジジイなんて呼び方してるのくらい――」
「――だぁぁぁぁっ! なに適当な事抜かしてんだリオナぁぁぁぁっ! 誰があんな鬼畜クソジジイの事なんか尊敬するかっ! 大体お前なぁっ――」
薄々勘付いてはいたが、やっぱりティストさんはおじいちゃんの呼び方は照れ隠しだったらしい。
そういえば昔おじいちゃんが「弟子も恥ずかしがり屋で、頼んでも呼んでくれんかった」などと言っていた気がする。
おじいちゃんの唯一の弟子ということは、十中八九ティストさんの事だったのだろう。
素直に「おじいちゃん」と呼んであげればいいのに――
「――なんであんなに恥ずかしがってんだろう……?」
「まあ、慣れればそう思っちゃうよね……」
相も変わらず照れ隠しなのかリオナさんに喚き散らしているティストさんを見ながらそんな事を呟くと、ハルカ先輩がこちらに歩み寄ってきて、相変わらず抑揚の少ない声で同調してきた。
色々と疑問に思いつつも、緊張が緩んだためか一気に体の力が抜け、たまらずその場で腰を下ろしてしまい、しばらくはひたすらに深呼吸を繰り返す事しか出来なくなった。
頭の奥深くから響いてくる様な鈍い痛みはなかなか引いてはくれないが、徐々にはましになってきているのでもうしばらく休憩すれば大丈夫だろう。
(流石に長めの休憩くれるよね……?)
疲れからか声を発するのも億劫なため、前方で胡坐をかいているティストさんに期待と信頼を込めた眼差しを送ってみる。
水筒の中身を煽る様にして飲んでいたティストさんは、自分の視線に気が付くと込められた意思や心情を上手く汲み取ってくれた様で――
「んあ? もう休憩終わりでいいのかよ? まだヘロヘロの癖に本当に欲しがりだなお前」
「い、いや……ちょっと長めに……休憩が欲しいです」
「んだよ。物欲しそうに見てくるからもう特訓のおかわりを要求してきたのかと思ったじゃねぇか」
全く心情を汲んでくれてはいなかった。
目は口程に物を言うというが、流石に何が欲しいかまでは伝わらなかったようだ。
というより、物欲しそうにしていると感じたのならせめて飲み物を欲しがっていると解釈してほしかった。
(疲労時にさらに疲労を求める特訓ジャンキーか何かと思っているのかな……?)
そんな冗談めいた――冗談であってほしい想像をしているうちに、だんだんと呼吸も落ち着いてきたので、自分も水筒を取り出して水分を補給する。
二時間超も動き続けていたのにも関わらず脱水症状などにならないのは、相変わらずな服の機能のおかげで汗だくになるような事が無いからだろう。
個人的には汗だくになる程運動をするのは嫌いではないのだが、そんな状態になった時は大概思考が鈍ってしまうので、冷静な判断を要する先ほどまでのような時には本当にありがたい機能である。
(そういえば、この服にも自動で修復される機能があるけど……同じなのかな……?)
すっかり塞がってしまった床の亀裂があった場所を見ながらそんな事を考える。
すっかり慣れてしまっていたが、よくよく考えれば火にも水にも繊維にもよくわからない材質の床にもなってしまう魔力とはいったい何なのであろうか。
「あの、ティストさん」
「んあ? もう再開してぇのか?」
「いや違いますよ!? どんだけ僕を痛めつけたいんですか!?」
「んだよあの程度で。軟弱な奴だな」
相当頑張ったつもりなのだが、ティストさん基準だとあれだけやっても軟弱らしい。
恐ろしい世界である。
「ってそうじゃなくって……。その、魔力って何なんですか……?」
「んあ? 何って……魔力は魔力だろ? 何が言いてぇんだ?」
「いや、魔力って色々な物になるじゃないですか。火とか水とか、この服も破れたら魔力を使って修復されますし、さっきティストさんが壊した床も元通りに直ったじゃないですか。どうしてなのかなって」
「どうしてって……。この床――ってかこの施設自体は建国した頃にいたイオカラっていう凄ぇ魔法師が作った魔方陣魔法の機能で自動修復されるし、その魔方陣魔法の一部をジジイが解明して作ったのがその服の自動修復機能なわけで……。――だぁぁっ! 私が知るかよそんなもん! ジジイに聞けジジイにっ!」
何とも答えになってない答えを述べると、考えるのが面倒になったのかティストさんがおじいちゃんに丸投げした。
聞けるものなら聞きたいが、流石にこれを聞くためだけに森の家まで数日かけて行くのも面倒くさい。
「あらあら、どうしたんですかティスト様? そんな大きな声をだされて……」
ハヴァリーさんならわかるだろうかなどと考えていると、ティストさんの声を聞きつけたのか、別の場所で何かをしていたリオナさんとハルカ先輩がこちらへと近づいてきた。
ハルカ先輩はわからないが、魔法専門らしいリオナさんなら何か知っているかもしれないので聞いてみる。
「あの、魔力って色々な物になったりしますけど、いったい何なんですか?」
「へ? 色々な物になるって……それが魔力でしょ?」
「だよな? 本当に何が言いてぇんだボウズ? ああ、言っておくが、イオカラの魔方陣魔法を一部でも理解できてるのなんてたぶんこの世にジジイくらいしか居ねぇから、聞いても無駄だぞ」
「ああ、ジジイっていうのはティスト様の師匠のセイル様の事よ――って、流石に知ってるわよね。そもそもタケル君にはティスト様も素で話してるんだから、ティスト様がセイル様の事を本心では凄く尊敬してるけど照れ隠しでジジイなんて呼び方してるのくらい――」
「――だぁぁぁぁっ! なに適当な事抜かしてんだリオナぁぁぁぁっ! 誰があんな鬼畜クソジジイの事なんか尊敬するかっ! 大体お前なぁっ――」
薄々勘付いてはいたが、やっぱりティストさんはおじいちゃんの呼び方は照れ隠しだったらしい。
そういえば昔おじいちゃんが「弟子も恥ずかしがり屋で、頼んでも呼んでくれんかった」などと言っていた気がする。
おじいちゃんの唯一の弟子ということは、十中八九ティストさんの事だったのだろう。
素直に「おじいちゃん」と呼んであげればいいのに――
「――なんであんなに恥ずかしがってんだろう……?」
「まあ、慣れればそう思っちゃうよね……」
相も変わらず照れ隠しなのかリオナさんに喚き散らしているティストさんを見ながらそんな事を呟くと、ハルカ先輩がこちらに歩み寄ってきて、相変わらず抑揚の少ない声で同調してきた。
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