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第二章 軍属大学院 入学 編
140.強力なコネ-Ⅰ
しおりを挟む「……よし。行くぞ」
ほんのりとした淡い明かりに包まれた廊下で意気込みを改め、パーティー会場へと通じる扉に近づくと、使用人と思わしき人が扉を開く。
目映い明かりと共に雅びな音楽と人々の賑やかな声が溢れだし、それと同時に悪意の塊が――
(……あれ? 来ない……?)
身構えていたのが馬鹿らしくなるほどに何も感じない。
ひょっとして本当に、キュウが一瞬でも感じたために自分にも流れ込んできたのだろうか。
『……ごめん』
「い、いや、そうと決まった訳じゃないしさ。それにどうしようも無い事だろ? 気にすんなって」
責任を感じた様子のキュウを慰めながら、会場内に視線を巡らせる。
ソフィアの様子が気になるというのもあるが、感じなくなったとはいえ自分の周りにいるのはあの悪意を垂れ流していた様な者たちなのだ。
笑みを浮かべながら会話しつつも、その下にはどす黒い欲望を渦巻かせている。
自分は貴族ではないので話しかけられる様な事は無いとは思うが、正直あまり関わり合いにはなりたくないし、そんな者たちに囲まれている状態で一人でいるというのは心細い。
せめて知り合いと共にいたいのだ。
「お、いたいた」
自分と同じように平民であるためか、特に誰に話しかけられるわけでもなくひたすら料理にありついている友人――サキトへと近づく。
人が近づく気配を感じたのか、声を掛けてもいないのにこちらに気がついたサキトは、頬張っていたフライドチキンを慌てて飲み込んでから口を開く。
「むあ? んぐっ……。ふう、タケルじゃねぇか。なんか全然見かけなかったけどどこ行ってたんだ?」
「あはは、ちょっと気分転換に外の空気吸いにいってたんだ」
「気分転換って、ちょっと早すぎやしねぇか? まだパーティー始まってそんなに時間経ってねぇぞ?」
「うん、ちょっとね……」
「ふーん、まあよくわかんねぇけど無理はすんなよ? それよりほれ、この揚げ物とか超美味ぇぞ? まだろくに食ってねぇんだろ?」
言われてみれば当然であるが、パーティーが始まってすぐに逃げ出してしまっていたためまだ何も食べてはいなかった。
嗚咽がこみ上げてきて仕舞うほどの状態だったため、そもそも食べられたものではなかったが、今ならばもう大丈夫だろう。
「でも最初から揚げ物っていうのもなぁ……」
サキトのいるテーブルはどうやら揚げ物などの油をふんだんに利用した料理が多いようで、最初に口にするにはあまりにも重すぎる。
「ああ、それならあっちの方にサラダとか置いてるテーブルがあったはずだぞ」
サキトの顎で示した方向を見ると、確かに緑豊かな皿が並ぶテーブル
「サラダか……。でもお肉も食べたいんだよなぁ……」
実際の所のマナーなど知らないのだが、無駄なトラブルを避けるためにもあまり取り皿に料理を乗せて動き回るのはよろしくない気がする。
「一応なんかうっすい肉ならあったぜ? おれはあんまりああいう上品なのは口に合わねぇし、がっつり食いてぇからこっちに来てっけどよ」
「なるほど、じゃああっちに行ってみようかな。でもサキト、ちゃんと野菜も食べないと体に悪いよ?」
「うっ……義姉さんみたいな事言うなよな……。良いんだよ別に、いつもは家でめちゃくちゃ食べさせられるし、こういう時くらい好きなもん目一杯食わねぇと損だろ?」
「損かな?」
「損だろ。義姉さんの料理って別に不味いわけじゃねぇんだけど、こういうのと比べたらどうにも平凡だしよ」
作ってもらっておいてなんて言い草なんだ。
「じゃあサキトが作ればいいじゃん。そうすれば好きな物ばっか食べられるよ?」
「いや、俺が作ったら不味いもんしか出来ねぇし、そもそも好きなもんばっか作るのを義姉さんが許さねぇよ。だから俺は作らねぇ!」
(そんな情けない事をドヤ顔で言われてもなぁ……)
現状自分も食事は人任せになっているので強くは言えないのだが、せめてもう少し感謝しがら食べるべきではないだろうか。
「まあもうちょっと感謝しながら食べなよ? じゃあちょっと向こうのテーブルに行ってみるよ」
「おう! また後でな!」
そうしてサキトと別れ、サラダなどが置かれているテーブルへと移動する。
結果的にまた一人になってしまうが、お腹が空いてしまったのだから仕方がない。
「お、生ハムだ。結構好きなんだよね」
一人暮らしをしていた頃は、切っただけの野菜と一緒にするだけでサラダに塩気が加わって食べやすかったのでしょっちゅう食べていたものだ。
いわゆる一人暮らしのお供の一つだ。
『このお肉は生なの?』
「いや、生ではなかったと思うけど……。実はよく知らないんだよね」
キュウの質問に答えながら、生ハムで野菜を包む。
(そういえば普通にお箸とかあるんだなぁ……)
それで言えばフォークやスプーンがある事も不思議なはずではあるのだが、結局利便性を追求すれば同じ様な形状や使用方法に行き着くものなのかもしれない。
気にしても仕方のない事なのでそれ以上考えるのはやめ、出来上がった小さな生ハムサラダを頬張る。
(うん、おいしい)
きっと舌の肥えた人ならば、「絶妙な塩気がうんたら」とか「舌触りがうんたら」とか感じるのであろうが、自分にとっては美味しい生ハムである。
「ああ、でもなんか変わった香りがしたな」
その辺りにこだわりがあったりするのだろうか。
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