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第二章 軍属大学院 入学 編
143.悪癖の一因-Ⅰ
しおりを挟む賑やかだったパーティーも終わりを迎え、自分とアイラとサキトの三人は今、ソフィアの自室へと訪れ、一つのテーブルを囲んで座っていた。
やたらとモフモフしてそうなぬいぐるみが至る所に並べられた非常に可愛らしい部屋なのだが、当のソフィアは現在別のモフモフの虜になっていた。
「はぁ~……癒やされますぅ……」
「キュキュウ~」
キュウを撫でながら恍惚とした表情を浮かべるソフィアを見て、ようやく力になれた事に安堵していると、自分の手の中に収まっているロンドが不満げな鳴き声を漏らす。
「ピィ……」
「ん? どうしたんだいロンド?」
「ピピィピィピィ!」
どうやらいつもは今のキュウのポジションにロンドがいるらしく、少しジェラシーを感じているらしい。
「自分からタケルくんの所に行ったくせに何言ってるんですかもう!」
「あはは……それならロンドも戻るかい?」
問いかけながら人差し指でロンドの頭を軽く掻くように撫でると、気持ち良さげに目を細めながら答えを返す。
「ピィピィ」
ソフィアとは後でいくらでも時間があるので、今は自分の手の中が良いらしい。
「まったく、薄情なパートナーです……」
「やべぇ、何の話してんのか全然わかんねぇ」
「そんなのいつもの事じゃない。まあ私はある程度予測はついたけどね。どうせロンドがまたわがままな事言ってるんでしょ?」
流石はエスパーアイラ、大体の状況を理解しているようである。
「……ピィッ!」
「ちょっとロンド、アイラちゃんは本当の事言っただけなんだからそんな事言っちゃダメでしょ!」
「え? ロンドは何て言ったのよ?」
「『アイラにはもう羽を触らせてやらない』みたいな事言ってるね」
「え……」
アイラがこの世の終わりみたいな顔をしている。
(伝えない方が良かったかもしれないな……)
少し罪悪感が湧いてきたのでフォローをしておこう。
「こらロンド、あんまり意地悪な事言ってちゃダメだぞ?」
「ピ、ピィ……」
「良かったねアイラ、さっきのは冗談だってさ」
「何でタケルくんの言う事なら素直に聞くんでしょうか……?」
アイラが安堵の表情を浮かべたかと思えば、今度はソフィアが少し落ち込んでしまった。
ままならぬ。
何か話を変えつつソフィアの気分を盛り上げられる様な話題はないだろうか。
「ん~……ああ、そうだ!」
「ん? どうしたんだタケル?」
「いや、すっかり忘れてたと思ってね。はいソフィア、これ」
ロンドに一度肩へと移動してもらい、マジックバッグから花束を取り出してソフィアへと差し出す。
「わぁ、綺麗……。ええと、これは……?」
「一応お祝い、かな? 僕が自分で準備したわけじゃないのが申し訳ないんだけど……」
全てハヴァリーさんが選んでくれた花であるため、流石に自分からのお祝いと言い切る事は憚られた。
「いえ、嬉しいです! ありがとうございます! 早速飾ってきますね!」
そう言ってソフィアは花束を受け取ると、足早に部屋を出て行った。
喜んでもらえたようで何よりである。
「そういえば俺たちも忘れてたな」
「私はタイミングを見計らってただけで、ちゃんと覚えてたわよ」
そう言うとサキトとアイラもマジックバッグから何かを取り出して机の上へと置いた。
「ぬいぐるみ……?」
サキトはやたら凜々しい熊のぬいぐるみを、アイラは可愛らしい猫のぬいぐるみを取り出したようだ。
それぞれ簡単にリボンが巻かれており、恐らくこれが二人からソフィアへの祝いの品なのだろう。
「まあこの部屋見りゃわかると思うけど、ソフィアはぬいぐるみが――ってかモフモフしたもんが大好きでな!」
「って言っても、この部屋にあるぬいぐるみの半分以上は何かしらのお祝いの度に私とサキトがあげてる物なんだけどね。改めて見ると凄い量ね……」
ソフィアがいなくなって手持ち無沙汰になったからか、キュウはアイラの持ってきた猫のぬいぐるみをつつき始めた。
(猫とキュウか……なかなか良いな)
小動物同士の愛らしさが良い感じに交わっていて、実に目の保養になる。
アイラも同じ気持ちなのか満面の笑みである。
やはり、可愛いはどの世界でも共通で通じる正義なのだろう。
「ああ、そういえばサキトとアイラには何も準備してないや……色々案内とかして貰ったし、何か欲しい物あれば言ってよ」
自分が用意できる物などたかが知れているが、ソフィアにだけ準備して二人には渡さないというのは単純に自分の気が収まらない。
「私は別にいいわよ……って言ってもあんたは納得しないわよね……。そうねぇ……その、きゅ、キュウちゃん撫でさせてくれたり……でも、良いわよ?」
「え? そんな事で良いの? それは別にキュウが良い時ならいつでも良いけど? なあキュウ?」
「キュ? キュウッ!」
キュウが返事をするや否やアイラに飛びつくと、それを受け止めたアイラがしどろもどろになりながらもキュウを撫でて幸せそうに笑う。
満足してくれた様でなによりだ。
「サキトは?」
「うーん俺はなぁ……。そうだ! 今度タケルの家に行かせてくれよ! 確か露天風呂とかあるんだろ?」
「え? サキトもそんな事で良いの? 僕は全然大丈夫だけど――あ、でも一応確認とってからの方が良いか……」
「ああ、世話してくれてる人がいるんだっけか?」
「うん、多分許可してくれるとは思うんだけど、どっちにしてもその人が結界を張ってるから伝えとかないとサキトが入れないかもしれないし……」
「おまえの家、結界張られてんのか……。まあ銀将様の家なわけだもんな。そりゃあ結界でも張ってないと――あれ? そう考えたらなんか余計に行きたくなってきたな!」
サキトもどうやら満足してくれそうなので、早いうちに許可を貰う事にしよう。
結局何一つ自分からとしてのお祝いは出来ていないが、まあ今回は仕方ないだろう。
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