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馬並みですか?それ以上ですか?

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 また同じように怒りそうなクラッチロウを遮る。

「気の優しさで言えばコチラはいかがですか?  ペンリンです」

「品種改良の案を出した奴に聞きたい。何故、ペンギンとキリンを配合したと」

 キリンの馬より大きな下半身にペンギンの上半身が申し訳なさそうについている。キリンの首が長いという利点を何故ペンギンに変えたのだ?  泳ぐのか?  無理だろ。

「逆ならこちら、キギンも居ますが?」

「ペンギンの下半身で首の長いキリンの頭に耐えられるのか?  ってか用途!」

「こちらの方も難癖付けてくれますが、クラッチロウ様はいかがですか?」

 この商人、クラッチロウなら何も考えないで買いそうとか、実はバカにしてるんじゃないのだろうか?

「一応全部キープしとくか」

 やっぱりバカだ。キギンとか邪魔でしかないだろ。馬車を首で引くのか?  じゃあ普通にキリンでいいだろ!

「こちらは持久力に優れております、ゴリダ」

「はいはい、ラクダの上半身がゴリラね」

「いえ、下半身がゴリラとコブの部分もゴリラです」

「全身ゴリラじゃねーか。ラクダはどこだよ」

「ゴリラの股間からラクダの首から上が生えてます」

「ホラーじゃねーか」

「気に入った!」

 クラッチロウの美的センスが皆無だと言うことがわかった。

 スペンサーの持て余してる物を売り付けようとしていないかと言ったのが正しかったということだ。

 ここに長く居てもクラッチロウがとんでもないものを欲しがってもいけないので、一番使えそうなゴリラウロスを二頭買って帰ることにした。

「スペンサーは人の心の中も読めるのか?  それとも先読みで次の言葉がわかるとか」

「人の心の中は例え神でも土足で立ち入るわけにはいきません。ただ念じればその人の顔を見れば何を思っているかはわかりますがね」

「全てをお見通しってことだな」

「ですがね……」

 怪訝な表情をスペンサーは浮かべた。

「実は先読みの力が無くなっているのです。それにあのような商人なら念じなくても裏の顔が見えたりするものですが、それも全くなかったのです」

「それは一体どういうことなのでしょうか?」

 心配そうにクラッチロウが泣きそうな顔になっている。コイツ、本当にスペンサーの事になると弱弱しいな。

「つまり難しく言うと……」

「いや、簡単に言えよ、そこは」

 自分の悲惨な状況で何を言っているのだ。

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