エルダーストリア-手垢まみれの魔勇譚―

秋山静夜

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第二譚:灼銀無双の魔法譚

人物紹介②

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ユリウス・ガトーショコラ&カタリナ・ザッハトルテ:

 奴隷大国アスキルドに囚われていた魔族の子供。
 ユリウスは燃えるような赤髪、カタリナは水の流れを内包したかのような青髪をした10歳くらいの少年少女たち。
 2年前に魔族が人間領に攻め込んだ際、貴族の嫡子であった彼らは経験を積ませるために彼らの親と同行していた。(魔族は女性が家を継ぐこともある。)

 イリアたち勇者パーティの出現によって一気に劣勢に立たされた魔族の軍は自領へと撤退していったが、ユリウスとカタリナの父親たちは退却の際に取り残された負傷者たちを率先して抱えながら逃げていた。
 その為本軍と離れてしまった彼らは一時的にアスキルドを占領し、機を見て魔族領へと帰ろうと考えていた。

 しかし人間側の抵抗が彼らの想像よりも激しく、そうこうしている内に勇者イリアがアスキルドへと到着してしまう。
 イリアの圧倒的な力の前にアスキルドを占領していた魔族の残党は容易く蹴散らされ、先頭に立って戦ったユリウスとカタリナの親はイリアの手によって殺される。

 残った魔族の一団はアスキルドの国民によって取り押さえられ(この時点でイリアは次の地域へと向かう)、捕えられた魔族はアスキルド復興の傍らで拷問、虐待を受けていく。

 彼らにまともな食事が与えられることがあるはずもなかったが、魔族にとってはそれ以上に魔素の枯渇の方が由々しき問題であり、魔素欠乏により死に至った者も少なくなかった。(アスキルド占領時点では、上級貴族であるユリウスとカタリナの親が生成する魔素によって賄っていた。)

 魔族における貴族の中でもさらに上級の貴族の子弟であったユリウス、カタリナは自己保存に必要な分の魔素は自身で生成できていたため、他の者たちと比べれば衰弱する早さも遅く、アスキルド国民からの虐待のダメージも軽微であった。

 しかし、尊敬する父の死、周囲の仲間たちが死んでいく環境の中で彼らの精神は徐々に蝕まれていく。

 カタリナは塞ぎこむことで心を自衛し、ユリウスは彼ら人間を憐れむことで悟りに近い境地へと至った。

 そんな逃げ場もない時間が過ぎていった先で、聖剣による死がユリウスたちに与えられることが決定する。

 幼い命が最期を覚悟する冷えた檻の中で、白銀の少女との出会いが彼らにもたらしたものは、一体何であったのか。



奴隷王ラヴァン・パーシヴァル:

 奴隷大国アスキルドの国王。100近い年齢だが、未だに国の中枢を支え続ける名君である。
 彼が産まれた当時はアスキルドは魔法国エミリアの奴隷下に置かれており、彼は生まれながらの奴隷であった。
 しかし同時に密かに守り通されたアスキルドの王族でもあり、彼を守る為に多くのアスキルドの民が率先して命を落としていった。

 時が過ぎ、対外的要因にて魔法国エミリアは滅亡、アスキルド国が復興しラヴァン・パーシヴァルが国王として戴冠することとなる。
 青年期を戦場に出される奴隷として命懸けの生活を送っていた彼の心には二つの柱となる考えが育った。

 一つは例え奴隷であっても、せめて尊厳ある命としては平等な国を築き上げるという理想。

 そしてもう一つは、彼の奴隷時代を作り上げた魔法使い、穢れ人たちを撲滅とする復讐であった。

 彼が半ば優秀な王であったことにより、その矛盾を孕んだ国は瓦解することもなく歪みを抱えながら大国として成長していく。

 そんな奴隷大国に大きな風穴を空けたのは、淀んだ歴史も歪んだ憎しみも知ったことかと笑う、一人の魔法使いの少女だった。

 老い先長くないこの老人は、人生最後の仇敵としてその少女を定め、その命を燃やすように挑みかかっていく。
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