エルダーストリア-手垢まみれの魔勇譚―

秋山静夜

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第三譚:憎悪爆散の魔人譚

彼の始まり

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 呪いと、疑問と、歓喜の中でオレの命は生まれ落ちた。

 母親がどうなったかは知らない。

 父親がどうしているかは知らない。


 ただ、オレの命の在り方を面白可笑しく喜ぶ男がそこにいて、

 壁と両腕を鎖で繋ぐ、小さな個室こそがオレの認識する日常セカイだった。


 初めに覚えたのは痛み。

 毎日毎日、別々の種類の痛みを与えられ、その影響の違いを観察されていた。

 物的な痛み、投薬による痛み、精神的な痛み、オレがその痛みを与えられた結果どうなるのかをそいつは知りたかったらしい。


 歓喜の声をあげながらそいつは言う。

「キーキキキキ! いや何とも素晴らしい! お前ほどの特異的な存在を好きにできるなど、何と、何とワタシは神に愛されているのか。……いやまあ神など知らんが。まあ安心しろ、お前は大事な検体だ。直せないほどに壊しはしない、……多分な。それよりもっと、もっと新しい反応をワタシに見せてくれないか!」


 オレをじっくりと見つめながら狂気に満ちた言葉をそいつは吐いてくる。
 そいつにとっては殺意のこもったオレの視線も、ただの研究材料に過ぎなかった。


「おや、おやおやおや。お前はワタシが憎いのか? まあまあそう思うのも仕方がない。だがワタシの研究は我が王の許可を得て行なっていることなのだ。……つまり、ワタシの行動全ては王の為すそれと同一なのだ。───────だから、その程度の憎しみではまだ足りない。我が王を呪い殺すほどの憎悪をどうかワタシに向けてくれ!」


 コイツの気持ち悪い戯れ言は聞き流すことにした。
 だが、オレの必ず殺すリストに1名追加をする。


 この男は魔族と呼ばれる種類の存在だ。

 業腹だがある程度の基本的な知識・常識はコイツらから教わっている。

 研究素体にも知性がないと実験のバリエーションが乏しくなるからだそうだ。クソ喰らえ。


 どうやら魔族を統べているのは魔王というやつらしい。

 
 それでオレの生きる目標はひとまず決まった。

 オレは、いずれ自由を手に入れてこのイカれた科学者を殺す。

 オレなんてモノに関わった連中を殺す。


 殺す、殺す、殺す、全てコロス!!


 そして、コイツらの頂点にいるという魔王を、必ず見つけ出してこの手で殺してやる!!
 

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