エルダーストリア-手垢まみれの魔勇譚―

秋山静夜

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第三譚:憎悪爆散の魔人譚

最後の幕

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「フザケルナ、フザケルナー!!」

 つい先ほどまでイリアにで看病されていた魔人ルシアが騒ぎ出す。


「ほら見ろイリア、お前が妙な優しさをみせるからアイツが暴れ出しただろうが。」


「だって、じゃないとまたアゼルが腰かけにするところだったじゃないですか。」


「敗者にはあれくらいの扱いでもまだぬるいくらいだ。そしてそれでいいんだよ。負けた奴が優しくされるとか屈辱以外の何ものでもないからな。膝枕された上に頭を撫でられるとか子供かよ。」


「いや、あれはつい手が勝手に。それに静かにしてれば可愛い寝顔でしたよ、魔人さん。」
 イリアは持ち前の無自覚さで、さらに火に油を注ぐような発言をしていく。


「オレを、オレを舐めるな!!」
 魔人ルシアからは魔素が黒い蒸気のように立ち昇り、彼の怒りのボルテージが上昇していくのが目に見えてわかる。


「言わんこっちゃない。めんどくさいがもう一度眠らせるぞ。というよりは、いい加減に力の差をわかってもらいたいものだがな。その折れない心だけは称賛に値するが。」


「いちいち手加減とか器用なことを頑張るわよね。私に任せてくれたら一瞬でカタをつけてみせるのに。」
 アミスアテナはウズウズとした様子で今にも獲物を斬りたいオーラを出している。


「ダメだよアミスアテナ。できる限りクロムさんのお願いを叶えてあげないと。」


「殺す、殺す、殺ス、殺ス、コロス、コロス、コロスコロスコロスコロス!!!!」

 魔人ルシアから立ち昇る魔素の蒸気は留まるところを知らず、それだけでなく彼の肉体は四肢の末端から黒く変色していく。

「おいおい、さっきまでとは様子が違うぞ。あいつヤバいんじゃないか?」


「知らないわよ。私に頼らないなら自分たちでどうにかしなさいよ~」
 敵の変化にもアミスアテナはどこ吹く風である。


「! アゼル、来ます!」


「魔、ま、マ、マオ、魔王!! シ、死ね!!!」
 白と黒が入り交じっていたはずの魔聖剣を純粋な黒に染め上げて、魔人ルシアは最後の殺しあいをアゼルに臨む。


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