娘を殺された母親が旦那とその愛人に復讐する話。

猫又

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「彼は休日に会社で俺と会った時、酷く動揺していてね。俺は彼の妻である君とも働いた事もあるから君がどうしているか聞いたんだ。俺は君の近況が知りたかっただけなんだけど、彼は妻は娘を置いて出かけている、と言うんだ。君がいつも娘を置いて好きなように遊びに出かけるとね。俺としては、奥さんだって息抜きが必要だから、出かけた時くらいは君が子供を見てないとダメなんじゃないかって言ったんだ。そしたら怒り出してね。他所の家庭の事なんか放っておけって言われたよ。まあその通りなんだけど、だったら奥さんが遊び歩いてるなんて言わなきゃいいのに、と思ったよ。しかも、俺の知ってる君は責任感の強い人だったから、子供を置いて遊び歩くなんて変だなと思ったんだ。彼、自分が女と会ってたから焦って君を悪者にすり替えたんだね。でもその後、火事に遭った事を聞いて、びっくりしたよ」
「そうですか、夫は仕事もせずに女と会ってたんですね……娘を見ててと頼んだのに、ほんの半日の間だったのに……それすらも義母に押しつけて……」
 さらに義母は娘を嫌っていたから、眠っている愛衣を置いて理沙と出かけたんだろう。
 そのせいで娘は死んでしまったのだ。
「秋山さん、義姉が弁護士なんで離婚の事は任せてあるんです。義姉に今の話をして貰えますか?」
「もちろんだよ。それに早いほうがいいと思うよ。休日出勤と偽って会社で女と会うなんて、業務違反もいいとこだ。降格は免れないし、給与も減る。今のうちに慰謝料や財産分与の話もきちんと弁護士さんにしてもらった方がいいよ」
「そうですね、ありがとうございます。助かります」
「俺に出来る事があったら何でも力になるから言ってくれよ」
 と秋山さんは言った。
 彼の下で働いてる時から、秋山さんは優秀で思いやりの心のある人だった。
 同期の彼が栄転でニューヨークに行きに選ばれた時は夫はかなり荒れて、秋山さんの愚痴をこぼしていた。秋山さんよりも自分の方が優秀なのに、上役は少しも分かっていない、と言っていたものだ。息子が可愛い義母も同調して肯定するものだから、夫は酷くお金を使って憂さ晴らしをしていた。
 思えばあれくらいから、夫の器量の小ささを感じるようにはなっていたけど、何とか立ち直って欲しいと強くも言えなかった私もいけなかったのかもしれない。
  もううんざりだ。
 理沙もかなり怪しいけど、浮気相手は他にもいたんだ。
 そしてまた悔やむ、なんでそんな男の元に子供を置いて出かけてしまったのか。
 実を言うと彼らをいくら憎んでも、何をしても娘が戻ってくる事はない。
 だから動けないでいた。
 私は心が死んでしまい、動くのも億劫だった。
 供養して骨をお墓に入れるまで何とか生きていれば良かった。
 それさえ済めば自分が野垂れ死んでも良かった。
 そう思っていた。だって何をしたって娘は戻らないのだから。
 
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