5 / 59
小児性愛に効く薬毒5
しおりを挟む
翌日、ハナが学校へ行くと、美優が椅子に座って思い詰めた顔で一点を睨んでいた。
「おはよ」
とハナが声をかけるとびくっと身体を震わせて、ハナの方を見た。
「ハナちゃん……」
夕べは眠れなかったのだろうと推測出来るほど顔色が悪い。
「あの、夕べ……」
「おばあちゃんから聞いたよ。薬毒もらったんでしょ? 妹に飲ませた?」
美優は力なく首を振った。
「ううん」
「え、まだ飲ませてないの?」
「うん、何て言って飲ませたらいいのか……それに……薬毒って毒なんでしょ? 妹にもませて平気なの……かな」
「佐野さんが飲んだのも薬毒、でも死ななかったでしょ」
「うん、でも……」
「まあいいよ。好きなだけうじうじ悩みなよ。そうやってるうちに夢に見た未来に近づいてるのはあんた達姉妹なんだからさ、でもね、うちの薬毒は服用期限があるから」
「あ、おばあさんに二週間以内に飲むようにって……言われた」
「そう、普通、病院でもらう薬だってあるよ。うちのは新鮮だから二週間以内に飲ませなきゃ、効用は消える。それから飲んだって遅いし、うちの薬毒に二包み目はないよ」
ハナにそう言われても美優はその薬毒を何日か持ち歩いていた。
すぐに妹に飲ませようという決心がつかなかったからだ。
妹に理由を話してそれを理解出来るだろうか?
仮にも毒という名のモノを妹に飲ませて、この先どうなるのか考えただけで恐ろしい。
もし妹が死んでしまったら?
グズグズと思い悩み、期限の二週間まで残り少なくなった土曜日。
図書室へ本の返却をしている間にいつもよりも帰る時間が遅くなった。
慌てて学校を出て家に帰り着いた時にはすでに玄関には妹の靴があり、中から下卑た笑い声が複数人分、聞こえた。
慌てて小さい台所を駆け抜け、ガラス戸を開く。
三人の男が裸の小さな妹を組み敷いていた。
一人はもちろん継父で後はその友人二人だ。
ちょくちょく遊びに来るので顔は知っている。
「杏里!」
妹は美優の声に顔を動かしてこちらを見たが、その顔には何の表情もなかった。
もう泣いてすらいない。
「外に出てろ」
と継父が美優に言った。
「なんでえ、たかっさん、お姉ちゃんの方も一緒に遊んだらいいのに」
酔っているのか薬物でも飲んでいるのか、男の一人は呂律の回らない声だった。
「駄目だ、こいつは高く売る予定だからな。手ぇ出すな」
継父は嫌な笑顔を美優に向けた。
「あああああ!」
と嗚咽が美優の喉から漏れた。
すぐそばにある椅子を持ち上げて、継父の方へ投げた。
自分で何をしているのかという意識もなく、ただ、美優はそこら辺にあるモノを継父達に放り投げた。それは妹にも当たったかもしれないが、妹を気遣う余裕などなかった。
継父達は酷く怒り、妹から離れて美優の方へ掴みかかってきた。
美優は腕や足を掴まれて、三人の男に顔や腹を酷く殴られた。
「杏里ー! 逃げて!! 逃げて!」
と美優は叫び続けた。
「にゃーお」
猫の声が聞こえたような気がして美優は我に返った。
気がつけば体中が酷く痛く口の中も血が味だろうかしょっぱかった。
頭ががんがん痛み、少し息をしても身体が痛い。
ゆっくりと身体を起こす。
制服は引きちぎられたが、美優の身体には何もされなかったようだ。
激怒はしていたが、やはり美優を高く売り飛ばすというのが頭にあるからだろう。
台所も壁も床もぐちゃぐちゃで、いろんな物が散乱していた。
その向こうの部屋も散らばった本や洗濯物の山があり、そして杏里が体育座りでこちらを見ていた。
美優は痛みを堪えて、思い切ってえいっと起き上がった。
「杏里……」
と声をかけると妹の身体がびくっとなった。
美優は妹の横に座ってから、
「ごめんね」
と言った。
「今まで助けてあげられなくてごめんね。嫌な思いさせたね。ごめんね」
妹の顔が杏里の方へ向いた。
痩せこけて頬もカサカサ、手足に肉が少しもない。
そして自衛の為に風呂に入らない杏里は臭い嫌な匂いがした。
「あのね、今更と思うかもだけどね。友達のおばあさんに言われたのね。未来はね自分達で変えていかなきゃならないって。あたし達二人でね。それでね、薬をもらったの。未来を変えていく薬。これを妹に飲ませなさいって。杏里、これ飲む?」
妹は美優の言葉を理解しているのかどうか分からない。
ぼーっとした顔で美優を見ている。
「飲めば杏里の未来が変わる……らしいんだけど」
「のむ」
と杏里が言った。
質問も躊躇もなかった。
目にも何の感情もない。が、妹は美優を見て「のむ」と答えた。
「分かった」
美優はコップに水をくんでから杏里に渡した。
薬の包みを開いて三角に折る。
粉の薬は少し灰色がかった色をしていた。
杏里は水を口に含み、そして粉薬を一気に飲んだ。
けほけほ、とむせたので追加で水を飲ませる。
タオルで口元を拭いてやると杏里が、
「ありがとう、お姉ちゃん」
と言った。
「ごめんね……ごめんね……今まで……」
と美優が言うと、
「ううん、お姉ちゃんにも嫌われたと思ってたから……」
と杏里が悲しそうに言った。
「ち、違う。違うよ。嫌ってなんかない! お姉ちゃんこそ杏里を助けてあげられなくて、頼りなくてごめんね」
「おはよ」
とハナが声をかけるとびくっと身体を震わせて、ハナの方を見た。
「ハナちゃん……」
夕べは眠れなかったのだろうと推測出来るほど顔色が悪い。
「あの、夕べ……」
「おばあちゃんから聞いたよ。薬毒もらったんでしょ? 妹に飲ませた?」
美優は力なく首を振った。
「ううん」
「え、まだ飲ませてないの?」
「うん、何て言って飲ませたらいいのか……それに……薬毒って毒なんでしょ? 妹にもませて平気なの……かな」
「佐野さんが飲んだのも薬毒、でも死ななかったでしょ」
「うん、でも……」
「まあいいよ。好きなだけうじうじ悩みなよ。そうやってるうちに夢に見た未来に近づいてるのはあんた達姉妹なんだからさ、でもね、うちの薬毒は服用期限があるから」
「あ、おばあさんに二週間以内に飲むようにって……言われた」
「そう、普通、病院でもらう薬だってあるよ。うちのは新鮮だから二週間以内に飲ませなきゃ、効用は消える。それから飲んだって遅いし、うちの薬毒に二包み目はないよ」
ハナにそう言われても美優はその薬毒を何日か持ち歩いていた。
すぐに妹に飲ませようという決心がつかなかったからだ。
妹に理由を話してそれを理解出来るだろうか?
仮にも毒という名のモノを妹に飲ませて、この先どうなるのか考えただけで恐ろしい。
もし妹が死んでしまったら?
グズグズと思い悩み、期限の二週間まで残り少なくなった土曜日。
図書室へ本の返却をしている間にいつもよりも帰る時間が遅くなった。
慌てて学校を出て家に帰り着いた時にはすでに玄関には妹の靴があり、中から下卑た笑い声が複数人分、聞こえた。
慌てて小さい台所を駆け抜け、ガラス戸を開く。
三人の男が裸の小さな妹を組み敷いていた。
一人はもちろん継父で後はその友人二人だ。
ちょくちょく遊びに来るので顔は知っている。
「杏里!」
妹は美優の声に顔を動かしてこちらを見たが、その顔には何の表情もなかった。
もう泣いてすらいない。
「外に出てろ」
と継父が美優に言った。
「なんでえ、たかっさん、お姉ちゃんの方も一緒に遊んだらいいのに」
酔っているのか薬物でも飲んでいるのか、男の一人は呂律の回らない声だった。
「駄目だ、こいつは高く売る予定だからな。手ぇ出すな」
継父は嫌な笑顔を美優に向けた。
「あああああ!」
と嗚咽が美優の喉から漏れた。
すぐそばにある椅子を持ち上げて、継父の方へ投げた。
自分で何をしているのかという意識もなく、ただ、美優はそこら辺にあるモノを継父達に放り投げた。それは妹にも当たったかもしれないが、妹を気遣う余裕などなかった。
継父達は酷く怒り、妹から離れて美優の方へ掴みかかってきた。
美優は腕や足を掴まれて、三人の男に顔や腹を酷く殴られた。
「杏里ー! 逃げて!! 逃げて!」
と美優は叫び続けた。
「にゃーお」
猫の声が聞こえたような気がして美優は我に返った。
気がつけば体中が酷く痛く口の中も血が味だろうかしょっぱかった。
頭ががんがん痛み、少し息をしても身体が痛い。
ゆっくりと身体を起こす。
制服は引きちぎられたが、美優の身体には何もされなかったようだ。
激怒はしていたが、やはり美優を高く売り飛ばすというのが頭にあるからだろう。
台所も壁も床もぐちゃぐちゃで、いろんな物が散乱していた。
その向こうの部屋も散らばった本や洗濯物の山があり、そして杏里が体育座りでこちらを見ていた。
美優は痛みを堪えて、思い切ってえいっと起き上がった。
「杏里……」
と声をかけると妹の身体がびくっとなった。
美優は妹の横に座ってから、
「ごめんね」
と言った。
「今まで助けてあげられなくてごめんね。嫌な思いさせたね。ごめんね」
妹の顔が杏里の方へ向いた。
痩せこけて頬もカサカサ、手足に肉が少しもない。
そして自衛の為に風呂に入らない杏里は臭い嫌な匂いがした。
「あのね、今更と思うかもだけどね。友達のおばあさんに言われたのね。未来はね自分達で変えていかなきゃならないって。あたし達二人でね。それでね、薬をもらったの。未来を変えていく薬。これを妹に飲ませなさいって。杏里、これ飲む?」
妹は美優の言葉を理解しているのかどうか分からない。
ぼーっとした顔で美優を見ている。
「飲めば杏里の未来が変わる……らしいんだけど」
「のむ」
と杏里が言った。
質問も躊躇もなかった。
目にも何の感情もない。が、妹は美優を見て「のむ」と答えた。
「分かった」
美優はコップに水をくんでから杏里に渡した。
薬の包みを開いて三角に折る。
粉の薬は少し灰色がかった色をしていた。
杏里は水を口に含み、そして粉薬を一気に飲んだ。
けほけほ、とむせたので追加で水を飲ませる。
タオルで口元を拭いてやると杏里が、
「ありがとう、お姉ちゃん」
と言った。
「ごめんね……ごめんね……今まで……」
と美優が言うと、
「ううん、お姉ちゃんにも嫌われたと思ってたから……」
と杏里が悲しそうに言った。
「ち、違う。違うよ。嫌ってなんかない! お姉ちゃんこそ杏里を助けてあげられなくて、頼りなくてごめんね」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?
鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。
先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。
隣人意識調査の結果について
三嶋トウカ
ホラー
「隣人意識調査を行います。ご協力お願いいたします」
隣人意識調査の結果が出ましたので、担当者はご確認ください。
一部、確認の必要な点がございます。
今後も引き続き、調査をお願いいたします。
伊佐鷺裏市役所 防犯推進課
※
・モキュメンタリー調を意識しています。
書体や口調が話によって異なる場合があります。
・この話は、別サイトでも公開しています。
※
【更新について】
既に完結済みのお話を、
・投稿初日は5話
・翌日から一週間毎日1話
・その後は二日に一回1話
の更新予定で進めていきます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる