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DV男に効く湿布
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「ふあ~~~」
とモネが大きなあくびをした。
「ドゥ、茶!! 骸、肩もんで!!」
店先の座椅子に座ってモネが大声で眷属二匹に命令をした。
「はいはいよっと」
足下で寝そべっていた骸はすばやく人型になってモネの肩を揉み始めた。
ドゥはその時、意識を取り戻さないハナの側にいたが、やれやれと立ち上がった。
「モネさん、里に帰るか行商に行かなくていいんすか?」
人型のドゥがコーヒーカップを運んできてモネの前のカウンターに置いた。
「壱がいない時くらい羽を伸ばさなくちゃさ」
と言ってモネはずずっとコーヒーを啜った。
「あんた達だけにしとくと何やかすかわかんないし」
ドゥと骸は肩をすくめて小さくなった。
「ハナの具合はどう? まだ生きてるの?」
「ええ、何とか。もう人間の血を飲ませるくらいしか、食物は受け付けないんですけど」
「でしょうねえ。人間の心臓じゃ駄目だわ。ってかよく保ったほうじゃない? 人間の身で。いくらハヤテさんの角をもらってもさ。ハヤテさんもよっぽどハナに惚れてんのね」
と言ってモネが笑った。
その時、がしゃん!! と玄関の扉に何かがぶつかる音がした。
「骸、見てきな」
「へい」
骸がひょいとカウンターを乗り越え、表のドアをがらっと開いた。
「お、大丈夫か」
骸が声をかけたのは、戸のすぐ側に倒れている女だった。
「は、はい、すみません」
「ママぁ」
と小さな子供が女の側でスカートの裾を握りしめてしゃがんでいる。
「すみません、よろけてしまって」
女は子供を先に立たせてから、自分もよろよろと立ち上がった。
着ている物は上品なスカートにニットのセーター、靴も鞄もブランド品だった。
「骸ぉ、中でちょっと休憩してもらったらぁ」
とモネの声がしたので、骸はうなずいた。
「暑気あたりか? 中で涼んできなよ」
と骸が声をかけると、
「いいえ、大丈夫ですから」
と女が言った。
骸は少し慌てて、
「そう言うな。うちは薬局だ。怪しいもんじゃねえ。そうだ、黒猫もいるぞ」と言った。
骸が子供にも声をかけたので子供が黒猫の言葉に反応した。
「ママ、猫」
「そうだ。猫と遊んでいきな、なあ、お嬢ちゃん」
骸が焦ったように言ったのは、モネがこの女を客と見込んだからだ。
客を見逃すとモネにこっぴどく叱られるのは必至。
「にゃー」
とドゥが気を利かしてひょいと玄関先に顔を出した。
「猫ちゃん」
子供は嬉しそうにドゥの背中へ手を伸ばした。
「薬局なんですか?」
と女が言い、中を覗くような素振りをしたので、骸は大きく戸を開いて、
「まあ、入んなよ」
と言った。
骸が女に麦茶を出してやり、ドゥはカウンターの上に陣取り子供の相手をしてやっている。
モネの前に座った女は物珍しそうに店の中を見渡した。
「お薬屋さんなんですか、こんな近所に知りませんでした」
「あー店に用のない客は気がつかない仕組みになってるからねぇ。奥さん、あんた何か薬毒が必要なんじゃない?」
「え? 毒?」
と女はぎょっとしたような顔になった。
「薬毒さ。何か欲しい薬があるんじゃない? うちはなんでも揃う薬毒店さ」
「別に……ありません」
「そう? まずあたしがあんたに勧めるのはコレかな」
モネはカウンターの上にバサッと袋を置いた。
「身体中の痣に貼る湿布」
女はぱっとモネを見た。
モネは意地悪い顔と声になって、
「あんたの旦那、外面のいい人間じゃね? 見えない箇所ばかり殴ってさ、どうせ、お前がいたらないからとか、お前の為だとかいって、やられてるんじゃね? あんたもすっかり洗脳されて、黙って耐えてるっしょ? 馬鹿じゃないの」
と言った。
女の顔は真っ青だった。
「ど、どうしてそんな……」
「どうせ偉そうに稼いでやってるとか喰わせてやってるとかいう口でしょ? で、女は奴隷みたいに思ってる男のうちの一人で、あんたは殴られてさめざめ泣くだけなんだよね。そういうのもう何千人もみてきたから、一目で分かる」
モネはけっけっけと笑った。
「その子の為にもそんな男いる? 殺しちゃえば」
「ええ!」
と言ったのは女と骸とドゥが同時だった。
「ちょ、モネちゃん、昼間っからそんな提案……はどうかとおもうぞ」
と骸が言い、ドゥは二股に分かれた長い尻尾の先を子供の耳に突っ込んでいる。
「モネさん、子供の前で言うことじゃ……」
「そう? そうね」
皆が大きな声を上げたので、子供はびっくりしたのか両目を大きく開いている。
「この湿布、打撲にはよく効くからあげる。試してみて」
親子が帰って後、ドゥが少々呆れ声で、
「モネさん、ストレートだなぁ。いつもそんな風に売りつけてるの?」
と言った。
「売りつけるって失敬ね。必要な薬毒を必要な人間に売る、それが商売でしょうが。ま、でも、ここはハヤテさんの縄張りだしね? 試供品を配るくらいにしとくよ」
「湿布なんて扱ってたんだね」
とドゥが言った。
「うちらはなんでも扱うのよ。壱がいろいろ作って試したいタイプだから」
「じゃ、壱さんが作ったの? あの湿布……普通の湿布じゃないよね?」
「そりゃそうよ。面白いわよ、あれはね」
と言ってモネが笑った。
とモネが大きなあくびをした。
「ドゥ、茶!! 骸、肩もんで!!」
店先の座椅子に座ってモネが大声で眷属二匹に命令をした。
「はいはいよっと」
足下で寝そべっていた骸はすばやく人型になってモネの肩を揉み始めた。
ドゥはその時、意識を取り戻さないハナの側にいたが、やれやれと立ち上がった。
「モネさん、里に帰るか行商に行かなくていいんすか?」
人型のドゥがコーヒーカップを運んできてモネの前のカウンターに置いた。
「壱がいない時くらい羽を伸ばさなくちゃさ」
と言ってモネはずずっとコーヒーを啜った。
「あんた達だけにしとくと何やかすかわかんないし」
ドゥと骸は肩をすくめて小さくなった。
「ハナの具合はどう? まだ生きてるの?」
「ええ、何とか。もう人間の血を飲ませるくらいしか、食物は受け付けないんですけど」
「でしょうねえ。人間の心臓じゃ駄目だわ。ってかよく保ったほうじゃない? 人間の身で。いくらハヤテさんの角をもらってもさ。ハヤテさんもよっぽどハナに惚れてんのね」
と言ってモネが笑った。
その時、がしゃん!! と玄関の扉に何かがぶつかる音がした。
「骸、見てきな」
「へい」
骸がひょいとカウンターを乗り越え、表のドアをがらっと開いた。
「お、大丈夫か」
骸が声をかけたのは、戸のすぐ側に倒れている女だった。
「は、はい、すみません」
「ママぁ」
と小さな子供が女の側でスカートの裾を握りしめてしゃがんでいる。
「すみません、よろけてしまって」
女は子供を先に立たせてから、自分もよろよろと立ち上がった。
着ている物は上品なスカートにニットのセーター、靴も鞄もブランド品だった。
「骸ぉ、中でちょっと休憩してもらったらぁ」
とモネの声がしたので、骸はうなずいた。
「暑気あたりか? 中で涼んできなよ」
と骸が声をかけると、
「いいえ、大丈夫ですから」
と女が言った。
骸は少し慌てて、
「そう言うな。うちは薬局だ。怪しいもんじゃねえ。そうだ、黒猫もいるぞ」と言った。
骸が子供にも声をかけたので子供が黒猫の言葉に反応した。
「ママ、猫」
「そうだ。猫と遊んでいきな、なあ、お嬢ちゃん」
骸が焦ったように言ったのは、モネがこの女を客と見込んだからだ。
客を見逃すとモネにこっぴどく叱られるのは必至。
「にゃー」
とドゥが気を利かしてひょいと玄関先に顔を出した。
「猫ちゃん」
子供は嬉しそうにドゥの背中へ手を伸ばした。
「薬局なんですか?」
と女が言い、中を覗くような素振りをしたので、骸は大きく戸を開いて、
「まあ、入んなよ」
と言った。
骸が女に麦茶を出してやり、ドゥはカウンターの上に陣取り子供の相手をしてやっている。
モネの前に座った女は物珍しそうに店の中を見渡した。
「お薬屋さんなんですか、こんな近所に知りませんでした」
「あー店に用のない客は気がつかない仕組みになってるからねぇ。奥さん、あんた何か薬毒が必要なんじゃない?」
「え? 毒?」
と女はぎょっとしたような顔になった。
「薬毒さ。何か欲しい薬があるんじゃない? うちはなんでも揃う薬毒店さ」
「別に……ありません」
「そう? まずあたしがあんたに勧めるのはコレかな」
モネはカウンターの上にバサッと袋を置いた。
「身体中の痣に貼る湿布」
女はぱっとモネを見た。
モネは意地悪い顔と声になって、
「あんたの旦那、外面のいい人間じゃね? 見えない箇所ばかり殴ってさ、どうせ、お前がいたらないからとか、お前の為だとかいって、やられてるんじゃね? あんたもすっかり洗脳されて、黙って耐えてるっしょ? 馬鹿じゃないの」
と言った。
女の顔は真っ青だった。
「ど、どうしてそんな……」
「どうせ偉そうに稼いでやってるとか喰わせてやってるとかいう口でしょ? で、女は奴隷みたいに思ってる男のうちの一人で、あんたは殴られてさめざめ泣くだけなんだよね。そういうのもう何千人もみてきたから、一目で分かる」
モネはけっけっけと笑った。
「その子の為にもそんな男いる? 殺しちゃえば」
「ええ!」
と言ったのは女と骸とドゥが同時だった。
「ちょ、モネちゃん、昼間っからそんな提案……はどうかとおもうぞ」
と骸が言い、ドゥは二股に分かれた長い尻尾の先を子供の耳に突っ込んでいる。
「モネさん、子供の前で言うことじゃ……」
「そう? そうね」
皆が大きな声を上げたので、子供はびっくりしたのか両目を大きく開いている。
「この湿布、打撲にはよく効くからあげる。試してみて」
親子が帰って後、ドゥが少々呆れ声で、
「モネさん、ストレートだなぁ。いつもそんな風に売りつけてるの?」
と言った。
「売りつけるって失敬ね。必要な薬毒を必要な人間に売る、それが商売でしょうが。ま、でも、ここはハヤテさんの縄張りだしね? 試供品を配るくらいにしとくよ」
「湿布なんて扱ってたんだね」
とドゥが言った。
「うちらはなんでも扱うのよ。壱がいろいろ作って試したいタイプだから」
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