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DV男に効く湿布2
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せっかく貰った湿布なので服を脱いで貼っていると娘が側に来て「ママ、痛い?」と言った。
「痛くないよ。でも、せっかく貰ったから、貼っておくね」
と私は答えた。
娘は痛くないよ、の答えに安心したようだった。
服を脱げばあちこちに青痣が出来ている。
全て夫に殴られたり、蹴られたりした跡だ。
あの薬屋の人が言った通り、夫は今で言う、DVをする男だ。
だけど誰も知らない。
一歩外に出るともの凄くいい人だから。
ご近所でも会社でも、義実家の人間ですら夫の本当の顔を知らないだろう。
知っているのは妻である私と五歳の娘だけ。
私と娘は夫ストレスのはけ口だ。
家から出る事を許されず日用品の買い物ですら週末に夫と出かけなければならない。
買い物も夫が判断し、無駄と思われた物は一切買ってもらえず、生理用品すら夫に土下座してお願いしなければならない。
ただ夫は私や娘をみすぼらしくはしなかった。
夫の選んだ服や靴やバッグを身にまとい、よそ様には裕福で幸せな家庭を演出し続けていた。だから夫の暴力や機嫌の悪いときの恐怖をいくら訴えても誰も本気にしてくれない。
実の親兄弟でさえ、夫は優しくて高給取りで完璧な人間だと信じ込んでいる。
「冷たくていい気持ち」
貰った湿布はジワーッと肌に効いてきた。
「今日の三時頃、どこへ行ってたんだ! 電話したんだぞ!」
返事を聞く前に夫は私を殴る。
「里桜を公園に連れて行ってました」
「公園? 俺が働いてる時に親子で公園か? 暢気なもんだな」
「すみません」
なるべく逆らわないように、これ以上機嫌を損ねないように、小さくなって謝るしか私には手立てがなかった。
殴られて床に倒れた私の腕を夫の足が踏みつける。
夕べ、割り箸の先で二の腕を何度も何度もえぐられて、傷はないけれど濃い紫の酷く痛い痣になっている。わざと同じ場所を踏みつけてくる。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
私は身体をぎゅっと縮めて床の上に丸くなっているしかなかった。
「何だ? これは」
夫が私のブラウスの袖をまくり上げた。
昼間に貼った湿布が見つかってしまった。
「何だ! コレは!! 嫌味か? 怪我をしたって嫌味か? 無駄遣いしやがって!」
「ち、違うんです、これはご近所の薬屋さんに試供品で頂いたんです」
「試供品だと? お前、俺に殴られているとか近所の薬屋で話したのか!」
「いいえ、いいえ、そんな事は言ってません。あちらはご親切で湿布を配ってくれただけです」
「うるさい! 口答えするな!」
夫はますます激昂し、私を何度も踏みつけた。
じっとしていれば直におさまるのだ、私は目を瞑ってじっとしていた。
「ガブ!!」
「うわ! い、痛い、痛い、何だ?」
急に夫の体勢が崩れて転んだ。
足を押さえている。
「ど、どうしました?」
夫が手で押さえている足は、足首から先がなかった。そして血がたくさん出ている。
壁にも飛び散り、床にもたくさんの血が流れ出て、血だまりを作った。
夫はうめき声を上げながら、足を押さえている。
「あなた、大丈夫ですか」
と夫に駆け寄ると、夫はうわあああああと私の手をふりほどいて、壁の方へ後ずさった。
「ば、化け物!! 助けてくれ~~」
夫の顔が恐怖に歪んでいた。
涙をぽろぽろ流している。
「え?」
左上が重いと思った。
昼間に貼った湿布は夫に蹴られているうちにすっかりはがれてしまっている。
その左腕の濃い痣が、むっしゃむしゃと夫の足先を食べていた。
「ええ!!!?」
濃い痣がぱっくりと割れて、その中に夫の足首が見え隠れする。
ばりばりむしゃむしゃと音がするのは骨が噛み砕かれている音のようだ。
その合間に、「何だってこんな男に踏みつけられなくちゃならないんだ。馬鹿にして」という声すら聞こえてくる。
踏みつけられた腕が怒って、夫の足を食べている。
「そんな……まさか……」
頭がかーっと熱くなって、夫も家の中の様子もが遠く白くなっていった。
私はそのまま意識を失った。
「痛くないよ。でも、せっかく貰ったから、貼っておくね」
と私は答えた。
娘は痛くないよ、の答えに安心したようだった。
服を脱げばあちこちに青痣が出来ている。
全て夫に殴られたり、蹴られたりした跡だ。
あの薬屋の人が言った通り、夫は今で言う、DVをする男だ。
だけど誰も知らない。
一歩外に出るともの凄くいい人だから。
ご近所でも会社でも、義実家の人間ですら夫の本当の顔を知らないだろう。
知っているのは妻である私と五歳の娘だけ。
私と娘は夫ストレスのはけ口だ。
家から出る事を許されず日用品の買い物ですら週末に夫と出かけなければならない。
買い物も夫が判断し、無駄と思われた物は一切買ってもらえず、生理用品すら夫に土下座してお願いしなければならない。
ただ夫は私や娘をみすぼらしくはしなかった。
夫の選んだ服や靴やバッグを身にまとい、よそ様には裕福で幸せな家庭を演出し続けていた。だから夫の暴力や機嫌の悪いときの恐怖をいくら訴えても誰も本気にしてくれない。
実の親兄弟でさえ、夫は優しくて高給取りで完璧な人間だと信じ込んでいる。
「冷たくていい気持ち」
貰った湿布はジワーッと肌に効いてきた。
「今日の三時頃、どこへ行ってたんだ! 電話したんだぞ!」
返事を聞く前に夫は私を殴る。
「里桜を公園に連れて行ってました」
「公園? 俺が働いてる時に親子で公園か? 暢気なもんだな」
「すみません」
なるべく逆らわないように、これ以上機嫌を損ねないように、小さくなって謝るしか私には手立てがなかった。
殴られて床に倒れた私の腕を夫の足が踏みつける。
夕べ、割り箸の先で二の腕を何度も何度もえぐられて、傷はないけれど濃い紫の酷く痛い痣になっている。わざと同じ場所を踏みつけてくる。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
私は身体をぎゅっと縮めて床の上に丸くなっているしかなかった。
「何だ? これは」
夫が私のブラウスの袖をまくり上げた。
昼間に貼った湿布が見つかってしまった。
「何だ! コレは!! 嫌味か? 怪我をしたって嫌味か? 無駄遣いしやがって!」
「ち、違うんです、これはご近所の薬屋さんに試供品で頂いたんです」
「試供品だと? お前、俺に殴られているとか近所の薬屋で話したのか!」
「いいえ、いいえ、そんな事は言ってません。あちらはご親切で湿布を配ってくれただけです」
「うるさい! 口答えするな!」
夫はますます激昂し、私を何度も踏みつけた。
じっとしていれば直におさまるのだ、私は目を瞑ってじっとしていた。
「ガブ!!」
「うわ! い、痛い、痛い、何だ?」
急に夫の体勢が崩れて転んだ。
足を押さえている。
「ど、どうしました?」
夫が手で押さえている足は、足首から先がなかった。そして血がたくさん出ている。
壁にも飛び散り、床にもたくさんの血が流れ出て、血だまりを作った。
夫はうめき声を上げながら、足を押さえている。
「あなた、大丈夫ですか」
と夫に駆け寄ると、夫はうわあああああと私の手をふりほどいて、壁の方へ後ずさった。
「ば、化け物!! 助けてくれ~~」
夫の顔が恐怖に歪んでいた。
涙をぽろぽろ流している。
「え?」
左上が重いと思った。
昼間に貼った湿布は夫に蹴られているうちにすっかりはがれてしまっている。
その左腕の濃い痣が、むっしゃむしゃと夫の足先を食べていた。
「ええ!!!?」
濃い痣がぱっくりと割れて、その中に夫の足首が見え隠れする。
ばりばりむしゃむしゃと音がするのは骨が噛み砕かれている音のようだ。
その合間に、「何だってこんな男に踏みつけられなくちゃならないんだ。馬鹿にして」という声すら聞こえてくる。
踏みつけられた腕が怒って、夫の足を食べている。
「そんな……まさか……」
頭がかーっと熱くなって、夫も家の中の様子もが遠く白くなっていった。
私はそのまま意識を失った。
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