わけあり乙女と純情山賊

猫又

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宴会

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 その夜、最後の宴会がニルルの谷で盛大に行われた。
 ガイツの指示でこの谷は捨てる事に決まったのだ。明日にはガイツ一家の大移動が行われる。仲間達は誰一人ケガをする事もなく、宝も無事であった事を喜んで、リリカの活躍を褒めたたえた。
「たいした女だ……リリカ」
 はしゃぐ仲間達を嬉しそうに眺めながら、ガイツがつぶやいた。
「よかったわねー。あたしもー、少しは役に立ったみたいだしー、出発する前にお世話になった恩返しくらいはしていかないとねー。きゃはは」
 リリカは珍しく酒をぐいぐいと飲んでいる。酔うと自分を見失うのが怖くて、リリカはそう深酒をする事がなかった。
「リリカ、どうしても行ってしまうのか?」
 ガイツがしょんぼりと言った。
「そうねー。だってー、あたしーとってもー大事な目的があってー。きゃははは。でも今日はいいの、お祝いなの。一つ目的が終わったからあ」
 酔いが回ってきたリリカは言葉が支離滅裂になりつつある。
「目的?」
「そうよん! ガイツのおかげで目的が一つ達成できたらー、お礼にちゅーしてあげようか!」
「え?」
 ガイツがぎょっとなる。
「わー! ガイツったら、照れちゃって、かわいいんだからあ! そうねえ、最後の夜だからあ、一緒におねんねしてあげるー」
 自分の言葉がおかしくてまたリリカはきゃははと笑った。
 笑いながら、立ち上がると、ガイツの腕を引っ張って立ち上がらせる。
 リリカは酔っ払って目の焦点があっていない。
 ぐらりと身体を崩れ落ちるのをガイツが慌てて抱きとめた。
「リリカちゃん、ご機嫌だねえ、お頭、もう眠らせた方がいいんじゃないですか?」
 ウルミラが笑いながらそう言った。
「らいじょうーぶよん」
 もう言葉もうまく言えないが、リリカは上機嫌でガイツの腕の中でへらへらと笑った。
「仕方ないな、酔っ払いが!」
 ガイツは苦笑して、リリカの身体を抱き上げると、わけの分からない事を叫んでいるリリカを自分の小屋へと連れて行った。
「おい、大丈夫か?」
 ガイツはリリカをどさっとベッドに投げ下ろした。
「うん……天井が回るー」
 リリカは息荒く言った。
 ガイツはその隣に腰をおろした。ガイツはシャイな男である。仲間の手前女嫌いで通しているが、実はただ奥手なだけである。そんな彼がリリカをどうこうできるわけもなく、ガイツはため息をついた。
「あのねえ、今日は嬉しい日なの。だから、ガイツ、あたしを抱いてもいいよん。お世話になったお礼もしなきゃね」
 リリカは起き上がるとガイツに抱きついた。
 向かい合うようにガイツの膝の上に乗る。
「リ、リリカ!」
 ガイツは真っ赤になって動揺する。
「ガイツったら、真っ赤になっちゃって。どうしたの?」
 リリカの可愛い唇がガイツの唇に重なった。
「う……」
「あたしにとって今日は記念の日なの」
「記念の日?」
 膝の上に乗っかったリリカを逞しい腕で抱きしめたガイツが聞き返した。 
「そうよん。ようやく一人殺したもの」
「それはヤルーの事か?」
 リリカはぶんぶんとうなずいた。
「そう! ヤルーの事!」
「お前の旅の目的はそれか」
「そう! どうして分かるの? きゃはは! ガイツって頭いい!」
「何故、ヤルーを?」
「ヤルーだけじゃないもん。あたしはスリーキングって奴らを皆殺しにしてやるんだもん。そうしないとー、あたし、生きていけないのー。あいつらはー、敵なの。あたしの村を襲って、あたしの大事な人達をみーんな殺したの。皆と一緒にいけずに、生き残ったあたしはー、あいつらをぶっ殺す旅に出たのー。今のあたしにはー、それだけが生きがいなの」
「そういう事か」
「そう! そういう事! あたしは、旅をしながら、弓や剣の腕を磨いてー、奴らに復讐をするのー」
 リリカの身体ががくんとなり、ガイツによりかかった。
 ガイツはまた真っ赤になり、リリカを揺さぶったがリリカはすでに寝息をたてていた。
「復讐か……」
 ガイツはリリカを寝床に横たえると、しばらく何やら考えていたが、やがて自分もリリカの隣で眠りについた。

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