わけあり乙女と純情山賊

猫又

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大団円かな

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「お頭はまたリリカにふられたのかい?」
 シンが赤ん坊をあやしながら、小声でライカに聞いた。
「さあ……リリカは敵討ちの報告にしに故郷に帰ったんでしょ? もう戻ってはこないのかしらねえ」
「あれから、一カ月だからねえ……」
 ウルミラとライカが夕食の準備に追われている。
 大馬車を襲撃し、ガイツ一家は裕福であったので、この所狩りには出ていかなかった。
 皆が暇そうに隠れ家でごろごろとしたり、家族単位で都まででかけて行ったりと休暇を楽しんでいた。
 ガイツはあれから放心状態で自分の岩屋にこもりっきりだった。
「まあだ、しくしく泣いてるのかねえ。でっかい図体してさ」
 ウルミラが呆れ顔で言い、
「しょうがないわよ。女嫌いの頭が初めてまじで惚れた女なんだからさ」
 ライカが答えた。
「リリカちゃんも罪な女だよね」
 ウルミラのつぶやきにライカが笑った。
「そうねえ。ま、頭にはいい勉強になったでしょうよ。一度経験すると、これからは悪い女には騙されないでしょ」
「悪い女って誰?」
 声がしてライカがふっと振り返った。
「リ、リリカ!」
 ライカの手から米の入った器がどさっと落ちた。
「わわ、ライカさん、もったいない!」
 ウルミラとシンも動きが止まっている。リリカの後ろでは仲間達がにやにやとしている。「あんた……」
 相変わらずに真っ赤な髪の毛、革の服に革のパンツ、革のブーツ、腰に大きな剣を下げ、じゃらじゃらとアクセサリーをつけていた。
「リリカちゃん、あんた、戻って来たのかい?」
 ウルミラが笑いながら言った。
「うん、仇討ちの報告もすんだし、ガイツ、元気?」
 リリカの問いにライカはぷいっと横を向いた。
「自分で見てくれば? 岩屋でコケが生えてるかもしれないわよ」
「コケ?」
「そう、あんたに二度もふられて、お頭、壊れちゃったのよ。あんたのせいよ。辛気臭いったらないんだから! どうにかしてよ」
「分かった、見てくる」
 リリカはそう言うとガイツの岩屋まで上って行った。
「ガイツー。いる?」
 うんともすんとも返事がない。
 リリカはそっと岩屋の扉を開いた。
 ガイツはベッドに横たわっている。眠っているのか、返事をしない。
「ガイツってば!」
 リリカはガイツの身体を揺さぶった。
「うるっせえな! 何だ! 俺の事はそっとしておいてくれって何度言やあ……」
 振り返ったガイツは、リリカの顔を見て首をかしげた。
「何だ……夢か? とうとうリリカの幻覚まで見るようになったのか? 俺はいかれちまったのか?」
「ガイツってば、寝ぼけてるの? ただいま」
「リ、リリカか?」
 ガイツはがばっと飛び起きた。
「戻ってきたのか……?」
「ただいま。お土産あるよ」
「何で戻ってきたんだ?」
「え? 駄目だった?」
「い、いや……駄目じゃねえ……けど……戻ってきたって事は俺の都合のいい方に考えるぞ? いいのか?」
「うん、墓参りも終わったしね。それに……生娘だったあたしをガイツが手ごめにしたんだから、責任取ってもらおうと思ってさ」
「て、手ごめって、あれはお前から……」
「何よー」
 リリカがぷうっと頬を膨らました。
「リリカ、お前、許婚がいたんじゃないのか?」
「うん、でも、ガイツの方が好きだから、ちゃんと謝って断ってきた」
 リリカの殺し文句にガイツが真っ赤になった。
「一生だぞ……俺はお前を絶対に離さないぞ? いいのか? もう二度どこにも行かせないんだからな!」
 ガイツががばっとリリカを抱きしめた。
「うん、嬉しい。ふつつか者ですがどうぞよろしく」 
 と言ってリリカは嬉しそうに笑った。
          
                                        了
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