魔境放眼は地獄へ行く

木mori

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第三章

第六話・頭が切れる

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「楡浬。必ず助けてやるからにゃ。自分をしっかり持って前を向くんだじょ。きっとその先には虹が見えるはずだかりゃ。」


「・・・・・う、うん。」


 うつろな楡浬の瞳に涙が溢れそうになるショタイゴちゃんだったが、自分が泣いたら楡浬のことを諦めたことを認めたことになると思い、首を二度三度と廻して、涙を飛ばした。


 ショタイゴちゃんが白弦にボディスラムを連発してようやく家を出ることができた大悟。『幼女DVD、幼女DVD、幼女DVD』と連呼しながら抗議する白弦。幼女マニアならロケットダッシュで白弦のところにやってきて、DVD購入を迫るシチュエーションであった。


 自殺マンションの前に着いたふたり。中に入ることができないのは昨日と同じ。
ショタイゴちゃんはマンションの真ん中にある玄関から10メートル離れた地点に立った。寝覚めの太陽が暖かい光でマンションにお早うの挨拶をする。


「ちょっと寒いけど、実にきれいじゃのう。これから成長していく期待の星の幼女のようじゃ。」


「今は朝だ。期待の星は見えないじょ。」


「ものの例えじゃ。風流のふの字もないヤツじゃ。」


「よし、思った通りだじょ。このマンションの窓でひときわ光っている部屋がターゲットだじょ。」


「最上階のいちばん端の部屋がそれか。どうしてそんなことがわかるのじゃ?」


「人間が住んでいる以上、その部屋の湿度は住んでいない部屋よりも高い。寒くなれば結露を起こしゅ。光が乱反射しているのは、結露があるからだじょ。だから、あの部屋に娘はいるってことだじょ。」


「なるほど。そちはショタイゴちゃんになってから、脳が小さくなってシワの数が増えたらしいのう。」


「つるぺたまでが脳シワの話をするきゃ?とにかく急いでインターホンで呼び出しだじょ。」


 こうして、ショタイゴちゃんと白弦はマンションの自動ドア前に来た。
 インターホンを鳴らすショタイゴちゃん。10回鳴らしてもう出ないかと思った矢先に、返事はなかったが、反応があった。


「おい、その部屋に住んでるんだにゃ。返事をしてくりぇ。」


「・・・。」


「インターホンに出たということは、こちらとコミュニケーションを取ろうという気持ちがあるんだよにゃ。そ。・・・。」


「返事をくれたじょ。」


「・・お、お前は子供か?」


「子供じゃないじょ!白い冬を嘔吐する高校生だじょ。」


「そんな奇妙な表現をするところをみると、たしかに高校生か。子供にはそんな言い方はできないし。この部屋に私がいることがどうしてわかったの?」


 ショタイゴちゃんはその理由を説明した。


「なるほど。あなたはなかなか頭が切れるようね。でもそれだけ。それじゃあこれで。ゴホゴホ。」
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