パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

文字の大きさ
211 / 276

第21話『女を磨くと』

しおりを挟む
「ほらね、に力がこもってたでしょ。なかなかやるわねぇ」
 リサは感心しきりだった。
 パティはおっかなびっくり前菜を口に運んだ。
「おいし……ソースが爽やか」
「どれどれ……フム、気合入ってるわぁ」
 秋野菜のほろ苦さと焦げ具合が、マンゴーソースと絶妙にマッチしている。
 それは店長の人生の豊かさ、そのものだった。
 心からのもてなしが、パティの警戒心を解いた。
 前菜をペロッと平らげた頃、メインディッシュがやってきた。
「お待たせしました。ビアンコディアマンテ特製、牛サーロインステーキ300gです」
 もうもうと吹き上がる湯気の中に、肉厚ステーキが鎮座ましましていた。
 おいしそうな匂いが辺りに立ち込める。
「うわぁ、おいしそう!」
 パティが思わず歓声を上げると、店長は満面の笑みを浮かべた。
「女性の美しさのために、どうぞ召し上がってください。肉感的な女性、とても魅力的です。どんどん食べて、セクシーになってください」
「ま、エッチ」
 リサは顔をしかめたが、店長のチャーミングな笑顔で相殺だ。
 それに鉄板の上のステーキも最高だった。ナイフで切る度に肉汁が溢れ、口に入れればほろりと消えてしまう。まさに極上の牛サーロインだった。
 完全に身贔屓なメインである。
「はぁ~っ、すごいお肉! パティのおかげで、こんな豪華なディナーになって幸せ」
「……いいのかなぁ。こんなご馳走を1000Eで」
 パティは後に響くであろう、店の会計を気にした。
「あら、お店の心配? 早くも内助の功発揮かしら」
「違います! 違いますけど……こんなこと初めてで」
 戸惑いを隠せないパティ。無理もない、このアプローチはインパクトがありすぎた。
「女を磨いた甲斐があったじゃない? 思わぬところで花開いたけど、悪い気はしないでしょ」
「それは……そうですけど」
「女なら、男に貢がれたら光栄だと思いなさい。それを思う存分浴するのも女のなせる業。——男が節を曲げるなんて、よっぽどよ。その心意気を全部受け止めなきゃ女じゃない!」
「えーっ、逃げ道ないじゃないですか!」
「私が塞いだのよ。あんたは女の武器に無自覚すぎ! 使うところを間違えなければ、こういうことはいつでも起こり得るのよ。でもって、撃たれた被害者を擁護できるかどうかが、女のステイタスの分かれ道。——ちゃんと責任取んなさい」
「そんなぁ」
 強引なリサの術中に嵌り、パティは窮地に追い込まれた。
 厨房からチラチラ顔をのぞかせて、こちらを窺う店長に、リサは首尾が上々なのを知った。

















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~

百門一新
恋愛
大妖怪の妖狐「オウカ姫」と、人間の伯爵のもとに生まれた一人娘「リリア」。頭には狐耳、ふわふわと宙を飛ぶ。性格は少々やんちゃで、まだまだ成長期の仔狐なのでくしゃみで放電するのもしばしば。そんな中、王子とのお見合い話が…嫌々ながらの初対面で、喧嘩勃発!? ゆくゆく婚約破棄で、最悪な相性なのに婚約することに。 ※「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。 ※ベリーズカフェに修正版を掲載、2021/8/31こちらの文章も修正版へと修正しました!

断罪後の気楽な隠居生活をぶち壊したのは誰です!〜ここが乙女ゲームの世界だったなんて聞いていない〜

白雲八鈴
恋愛
全ては勘違いから始まった。  私はこの国の王子の一人であるラートウィンクルム殿下の婚約者だった。だけどこれは政略的な婚約。私を大人たちが良いように使おうとして『白銀の聖女』なんて通り名まで与えられた。  けれど、所詮偽物。本物が現れた時に私は気付かされた。あれ?もしかしてこの世界は乙女ゲームの世界なのでは?  関わり合う事を避け、婚約者の王子様から「貴様との婚約は破棄だ!」というお言葉をいただきました。  竜の谷に追放された私が血だらけの鎧を拾い。未だに乙女ゲームの世界から抜け出せていないのではと内心モヤモヤと思いながら過ごして行くことから始まる物語。 『私の居場所を奪った聖女様、貴女は何がしたいの?国を滅ぼしたい?』 ❋王都スタンピード編完結。次回投稿までかなりの時間が開くため、一旦閉じます。完結表記ですが、王都編が完結したと捉えてもらえればありがたいです。 *乙女ゲーム要素は少ないです。どちらかと言うとファンタジー要素の方が強いです。 *表現が不適切なところがあるかもしれませんが、その事に対して推奨しているわけではありません。物語としての表現です。不快であればそのまま閉じてください。 *いつもどおり程々に誤字脱字はあると思います。確認はしておりますが、どうしても漏れてしまっています。 *他のサイトでは別のタイトル名で投稿しております。小説家になろう様では異世界恋愛部門で日間8位となる評価をいただきました。

『まて』をやめました【完結】

かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。 朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。 時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの? 超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌! 恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。 貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。 だから、もう縋って来ないでね。 本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます ※小説になろうさんにも、別名で載せています

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

【第一部完結】翡翠色の風に乗せて〜私はダメなんかじゃない〜

碧風瑠華
ファンタジー
「お前はダメだ」と言われつづけましたが、ダメだったのは貴方です。 「せっかく離れたのに、また関わるなんて……!」 ルクレ伯爵家の令嬢セリーヌは、第三王子アランディルの婚約者候補に選ばれてしまった。 根本的に合わないあの人との関わりに、心を痛めながらも逃れる方法を静かに模索していく。 ※第一部完結済 ※他サイトにも掲載中です。

処理中です...