パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

文字の大きさ
273 / 276

第27話『サバラス老人と孫』

しおりを挟む
 カエリウス炎樹の森、因果界のサバラス老人の小屋——。
「おじいちゃん、会いたかった!」
「おおっ、マナ、元気そうじゃな」
 孫のマナが遊びに来た。
 駆け寄って抱き合う。
 久しぶりに会った孫は香水をつけていた。
 恋をしているというのは本当らしい。
「ちょっと見ない間に大人になったなぁ」
「そ、そうかなぁ。ちっちゃいから、みんなにからかわれてばっかりなんだよ」
「化粧も様になっとる」
「……公務員だから、普段はナチュラルメイクなの。でも、お休みの時は気合いが入るんだぁ」
「デートするんじゃな」
「あ、パパかママから聞いた? そうなの、二年越しの片思いが実ったんだよ
「大したもんだな、マナ! 病気もすっかり良くなったみたいじゃないか」
「うん、それはパパとママのおかげ。あたしだけじゃどうにもならなかったと思うし。方々走り回ってベストな治療法を見つけてくれたから」
「そうか、ヨーザンもネリも苦労したんじゃな」
「おじいちゃんにも感謝してるよ」
「?」
「家の水道水……パラティヌスの北端国セライの上水道からの水にねじ替えてくれたでしょ、修法で」
「——知っとったのか」
 マナはひどいアレルギーで、肌がアトピーのように赤く腫れあがってしまう病気を患っていた。
 治療のため、カエリウスの首都マーチで暮らしたいという親子を、サバラスは引き留めなかった。
 泣く泣く別れた後、新居の水道管に遠隔操作でアクアリレーエクスチェンジという修法を施しておいた。
 もちろん、パラティヌスの上水道局も知らないことだが、万世の秘法経由で申請すると許可が下りるのだ。
 最初にそれに気づいたのはネリだった。
 余所からいただいた料理はカルキ臭があるのに、家のはまったく臭いがしない。
 ヨーザンに伝えると、万世の秘法を習い始めていた彼は、もしやと水道の元栓を見て、高度な修法が施されているのを突き止めたのだった。
「……おじいちゃん、なんにも言ってくれないけど、こうして応援してくれるんだね、ってみんなで感動したの。お水、大切に飲んだよ。お料理もおいしかったし、お風呂も気持ちよかった。病気は二年で全快したよ。お医者様も不思議がってた。「この国のアレルギー患者は年々増えていくのに、完治させるなんてまさに奇跡ですよ」って。他の方にはお気の毒だけど、私たちにはおじいちゃんがついてるから、みんなで力を合わせて生活しよう、って決めたの。私が表の修法者になったら、この国の水道水の改善に挑戦したいなと思って。どう思う? おじいちゃん」
「それは立派な心がけじゃな。苦しんどる他の人のために正しく修法を使うことは、万世の秘法の基本方針だ。大いにやりなさい、儂も応援しよう」
「ありがとう! おじいちゃん」
 腕に抱きつくマナ。近づいたその頬はピンク色だ。
「まぁまぁ、立ち話もなんじゃ。座って話そうじゃないか」
「うん」
 暖炉が赤々と燃える側で、老人と孫は熱々のミルク片手に語り合う。
「フフッ」
「どうしたの、おじいちゃん?」
 思い出し笑いをするサバラス老人に、きょとんとするマナ。
「いやな、年初めに炎樹の森に仕事に来た、NWSという連中がいてな。儂はぶっきらぼうに相対したんじゃが、その日に小屋のトイレを借りに駆け込んだ女の子がいたんじゃよ」
「へぇーっ」
 そう、それが奇跡の始まりだった。
「まさか追い出すわけにもいかんから、暖炉にあたらせて熱々のミルクを飲ませて……これがマナによく似た年恰好の女の子でな。素直で礼儀正しくてかわいらしくて、マナもこんなふうになったかなと想像しとったよ」
「そうだったの……私、会ってみたいな。その女の子に」
「おお、そう言えばヨーザンから聞いたかね。世界の大変革の後にみんなでパラティヌスに旅行に行くって話」
「もちろんよ、有休消化しないで取っておくんだ。一週間くらい連続で取ろうかと思って」
「おいおい、彼氏はどうするんじゃ」
「だって、彼氏が課長なの。あとお願いね、って言っといたわ」
「おやまぁ、そしたらなんだって?」
「仕事を山にしてお帰りをお待ちしています、ですって。あとが怖いわ」
「公私混同しない上司でよかったの」
 あははは、と心置きなく笑い合うのだった。


 





















 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【第一部完結】翡翠色の風に乗せて〜私はダメなんかじゃない〜

碧風瑠華
ファンタジー
「お前はダメだ」と言われつづけましたが、ダメだったのは貴方です。 「せっかく離れたのに、また関わるなんて……!」 ルクレ伯爵家の令嬢セリーヌは、第三王子アランディルの婚約者候補に選ばれてしまった。 根本的に合わないあの人との関わりに、心を痛めながらも逃れる方法を静かに模索していく。 ※第一部完結済 ※他サイトにも掲載中です。

生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。 2020/9/19 第一章終了 続きが書け次第また連載再開します。 2021/2/14 第二章開幕 2021/2/28 完結

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、 ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。 互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。 だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、 知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。 人の生まれは変えられない。 それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。 セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも―― キャラ設定・世界観などはこちら       ↓ https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578

姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。 式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。 今さら式を中止にするとは言えない。 そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか! 姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。 これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。 それどころか指一本触れてこない。 「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」 ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。 2022/4/8 番外編完結

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

処理中です...