悪役令嬢に転生したら、婚約者が浮気男だった。今世は自由に生きますよ。

日照り

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3.日記

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日記



「“二度と俺に近づくな”...か。」

鏡台の前の椅子に座って痛みのおさまった頭を撫でながら、イベルクの言葉を反芻する。

人一人分の記憶が脳に入り込んだことで若干混乱はしているが、これで大体が理解できた。


「エティーナは、我儘だけどちゃんと周りが見れる子だった。まぁ、イベルクの為にと思ってやった事が全部裏目に出てた訳だけど。...でも、頑張ってたんだよね。エティーナ。」

手元にはとある日記帳があった。
それは、エティーナの物だ。

きっちりした性格なのか、整った字で毎日1ページを必ず埋めている。
それを読みながら、記憶では辿りきれなかったエティーナの事を理解していく。


【イベルク様の顔色が悪い。どうかしたのかと聞いたら、手を跳ね除けられてしまった。】

【イベルク様はどうやら剣術に伸び悩んでいるらしいわ。わたくしに出来ることは何かしら。】

【お茶会でイベルク様のお話をしたら、それが帝国騎士団の方に届いたらしいわ。ドラゴン討伐の為に特別訓練を始めたそうだから、参加させて下さるようお願いしてみようと思うの。】

【最近、イベルク様の笑顔が減ったわ。】

【顔を合わせてもらえなかったわ。】

【騎士団の誘いは断ったらしいわ。イベルク様にも考えがあるはずよね。なら、隣国から優秀な剣士を連れてくるのはどうかしら。話してみましょう。】

【今日は入学式。伯爵家を代表し、そしてイベルク様の婚約者として恥じない人間になるのよ。】

【イベルク様は転入生と仲が良さそう。それと、最近寝ていなくて日中倒れてしまったの。イベルク様に迷惑をかけたわ。でも、やっと少しだけお話ができた。】

【睡眠薬のおかげで眠れるようになったわ。イベルク様にお礼を言いに行こうと思ったらまた転入生と話していた。...少し注意しましょう。】

【あの子は皆に好かれるみたい。少し羨ましい。私の顔は怖いみたい。】

【こんなやり方でいいのかしら。...でも、最近イベルク様が平民に手を出しているという噂が回っているらしいわ。このままではイベルク様が公爵家から勘当される可能性もある。私がどうにかするのよ。】

【だめ、また失敗。】

【またダメ。お薬を増やしてもらった。】

【イベルク様に睨まれてしまったわ。】

【......疲れたわね。少しだけ。】

【イベルク様。まだ私を好きでいてくれてるかしら。ほんの少しでも。最近薬の影響で痩せすぎてしまったわ。これでは嫌われてしまうわね。】

【だって、あの子がイベルク様を苦しめないでと言うんだもの。...私はどうすれば良かったの。】

【近づくなですって。...最近は近寄らせてすら貰えなかったのに。】

【停学を言い渡されたわ。私が悪者ね。悪女だという声が聞こえたわ。】

【どうすればいいのかしら。】

【...眠れない。イベルク様に会いたいわ。】

【食べ物が喉を通らないの。】


【おばあ様が、亡くなった。とても、顔は見せられなかったわ。ずっと私の幸せを願ってくれたおばあさまに、こんな、見窄らしい顔.。】

【おばあ様は故郷へ帰ったわ。私も、行きたい。】

【もう嫌よ。だれか助けて。】

【イベルク様が、あの子を連れてパーティーに現れたらしいわ。私はなんのために頑張っていたのかしら。】

【どうすればいいの。】



【私が間違っていたわ。私がイベルク様を追い詰めて、笑顔を奪って、苦しめたのよ。

お父様、お祖母様、ルシエル。ごめんなさい。



弱い私で、ごめんなさい。】







「弱い私で、ごめんなさい。」



それは、私が前世で海に身を投げる瞬間にも思ったことだった。
だから、今この瞬間私は夏菜子であり、エティーナだった。

星は違えど、世界は違えど、私たちはきっと似ている。



根源的な孤独から、盲目的に人を好きになり、深く考えずに関係を持って。
そして、全てが空回って、気づいた時には選択肢が一つしか無くなっている。


そんな、愚かで哀れなところがそっくりだ。








「でも、二度は同じ過ちを繰り返さないわ。

...エティーナ。あなたの人生を、少しの間借りるわね。

もう、弱い私達は居ないのよ。強く、私達らしく、私達のために生きるの。だからどうか見守っててね。エティーナ・スカレット。」




その瞬間、目の前に置かれていた日記が光の粒となって消えた。






















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