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便利
エティーナと対峙した教師は冷や汗をかきながら視線を彷徨わせた。
「貴方、何をしたのかわかってる?」
「わ、私は!夫人に言われて...!!!」
「あら、そんな話を聞いてはいないのよ。教師だと言うのに、質問に正しく答えられないのかしら?そんな方が次期伯爵の指南役なんて務まるのかしら。ねぇ、どうお考えで?」
「っ............。」
「答えなさい、よ!!」
エティーナがヒールの先で教師の足を踏みつける。その瞬間、相手は床をのたうち回った。
「ぎゃああ!!!」
「あら、貴方のように面の皮だけじゃなくて全身の皮が厚い男と違って、うちの繊細なルシエルはもっと痛かったわ。それも何度も何度も叩かれたのよ?まさか一回だけで済まされるなんて、思っていないわよね?」
「ひぃぃ...!!」
完全に輩とその被害者の様子に、金髪の男はまたくすくすと笑った。そしてルシエルの横にしゃがみ込んでその現場を指差す。
「君の姉君はいつもああなのか?」
「ぇ、あ、えっと...うーん...。さいきんのねえさまは、よくしらないので...。」
「そうか。それにしてもいい姉を持ったな。弟のためにあそこまでしてくれる姉は珍しい。」
「っ!はい!」
姉が褒められて嬉しいルシエルは、その可愛らしい顔を笑顔に染めて元気に返事をした。男はその頭を乱暴に撫でながら立ち上がり、未だに教師に詰め寄るエティーナに近寄ってこえをかけた。
「令嬢、まずは弟の手当てが先だろう。そいつは俺が拘束しておくから、行ってこい。」
すると、エティーナは目を覚ましたようで、ハッと教師の胸倉を掴んでいた手を離してルシエルに駆け寄った。眉目秀麗な金髪の男には目もくれなかった。
「ルシエル!ああ、ごめんなさい。今すぐに消毒と包帯をしに行きましょう。」
そうして、廊下に向かってルルネ!準備をお願い!と叫ぶと、ルルネのはい!という返事が返ってきた。
エティーナはルシエルの背中に触れないように立たせると、やっと男を視界に入れた。
「そいつ、縛っておいてちょうだい。」
「やっと俺を見たか。了解した。」
「貴方のそれ、便利ね。」
最後にそれだけ言ってエティーナとルシエルは部屋を後にした。
男は一瞬ぽかんと口を開けてから、また爆笑する。
「ははは!!便利!?便利だと!俺のこの素晴らしい魔法をまるで使い捨てのように言うなんてな!!...ふふっ、本当に面白い。」
最後に一つ、怪しく笑った男は、冷めた目で去っていった女王様を待つために教師の体を魔法を使って縛り上げた。そしてその上にどかっと長い足を広げて腰を下ろす。
自分の膝に肘をついて頬杖をして、エティーナが去った扉を見つめた。
「彼女は、いったい何者なんだ?」
その言葉に返事をするのは、男の腰の下で呻き声をあげる教師だけだった。
▼
ルシエルの処置を終え、後はルルネに任せたエティーナは先ほどの部屋まで戻ってきていた。
しかしその部屋の中には、クソ教師と便利男に加えて一人増えていた。
「お!令嬢!帰ってきたか!見ろ!ちゃんと縛っておいたぞ!!」
まるで番犬のようにキラキラのいい笑顔で駆け寄ってくる男をスルーして、エティーナはもう一人の人間に話しかける。
「どうかされましたか、お母様。」
ルシエルの処置の間にここにやってきたらしい伯爵夫人はエティーナの顔を見て、朝のように
真っ赤になった。
「どうかされましたじゃないわよ!なんなのよこれは!!」
「この教師がルシエルに体罰を行なっていたため、処罰しますわ。」
「~っ、はぁ、あなたねぇ、急にでしゃばるようになって何かと思えば、意味のわからないことばかり...。教育に鞭を使ったからなんだと言うの?将来伯爵となって領民を率いて行くためには多少厳しさも必要でしょう?」
「...お母様は、その教師が鞭でルシエルを打っている事を知っていたのですね。」
エティーナと対峙した教師は冷や汗をかきながら視線を彷徨わせた。
「貴方、何をしたのかわかってる?」
「わ、私は!夫人に言われて...!!!」
「あら、そんな話を聞いてはいないのよ。教師だと言うのに、質問に正しく答えられないのかしら?そんな方が次期伯爵の指南役なんて務まるのかしら。ねぇ、どうお考えで?」
「っ............。」
「答えなさい、よ!!」
エティーナがヒールの先で教師の足を踏みつける。その瞬間、相手は床をのたうち回った。
「ぎゃああ!!!」
「あら、貴方のように面の皮だけじゃなくて全身の皮が厚い男と違って、うちの繊細なルシエルはもっと痛かったわ。それも何度も何度も叩かれたのよ?まさか一回だけで済まされるなんて、思っていないわよね?」
「ひぃぃ...!!」
完全に輩とその被害者の様子に、金髪の男はまたくすくすと笑った。そしてルシエルの横にしゃがみ込んでその現場を指差す。
「君の姉君はいつもああなのか?」
「ぇ、あ、えっと...うーん...。さいきんのねえさまは、よくしらないので...。」
「そうか。それにしてもいい姉を持ったな。弟のためにあそこまでしてくれる姉は珍しい。」
「っ!はい!」
姉が褒められて嬉しいルシエルは、その可愛らしい顔を笑顔に染めて元気に返事をした。男はその頭を乱暴に撫でながら立ち上がり、未だに教師に詰め寄るエティーナに近寄ってこえをかけた。
「令嬢、まずは弟の手当てが先だろう。そいつは俺が拘束しておくから、行ってこい。」
すると、エティーナは目を覚ましたようで、ハッと教師の胸倉を掴んでいた手を離してルシエルに駆け寄った。眉目秀麗な金髪の男には目もくれなかった。
「ルシエル!ああ、ごめんなさい。今すぐに消毒と包帯をしに行きましょう。」
そうして、廊下に向かってルルネ!準備をお願い!と叫ぶと、ルルネのはい!という返事が返ってきた。
エティーナはルシエルの背中に触れないように立たせると、やっと男を視界に入れた。
「そいつ、縛っておいてちょうだい。」
「やっと俺を見たか。了解した。」
「貴方のそれ、便利ね。」
最後にそれだけ言ってエティーナとルシエルは部屋を後にした。
男は一瞬ぽかんと口を開けてから、また爆笑する。
「ははは!!便利!?便利だと!俺のこの素晴らしい魔法をまるで使い捨てのように言うなんてな!!...ふふっ、本当に面白い。」
最後に一つ、怪しく笑った男は、冷めた目で去っていった女王様を待つために教師の体を魔法を使って縛り上げた。そしてその上にどかっと長い足を広げて腰を下ろす。
自分の膝に肘をついて頬杖をして、エティーナが去った扉を見つめた。
「彼女は、いったい何者なんだ?」
その言葉に返事をするのは、男の腰の下で呻き声をあげる教師だけだった。
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ルシエルの処置を終え、後はルルネに任せたエティーナは先ほどの部屋まで戻ってきていた。
しかしその部屋の中には、クソ教師と便利男に加えて一人増えていた。
「お!令嬢!帰ってきたか!見ろ!ちゃんと縛っておいたぞ!!」
まるで番犬のようにキラキラのいい笑顔で駆け寄ってくる男をスルーして、エティーナはもう一人の人間に話しかける。
「どうかされましたか、お母様。」
ルシエルの処置の間にここにやってきたらしい伯爵夫人はエティーナの顔を見て、朝のように
真っ赤になった。
「どうかされましたじゃないわよ!なんなのよこれは!!」
「この教師がルシエルに体罰を行なっていたため、処罰しますわ。」
「~っ、はぁ、あなたねぇ、急にでしゃばるようになって何かと思えば、意味のわからないことばかり...。教育に鞭を使ったからなんだと言うの?将来伯爵となって領民を率いて行くためには多少厳しさも必要でしょう?」
「...お母様は、その教師が鞭でルシエルを打っている事を知っていたのですね。」
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